重症低血糖発作を合併するインスリン依存性糖尿病に対する脳死および心停止ドナーからの膵島移植

文献情報

文献番号
201309045A
報告書区分
総括
研究課題名
重症低血糖発作を合併するインスリン依存性糖尿病に対する脳死および心停止ドナーからの膵島移植
課題番号
H24-被災地域-指定-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 満一(公立大学法人 福島県立医科大学 臓器再生外科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 穴澤 貴行(公立大学法人 福島県立医科大学 臓器再生外科学講座)
  • 後藤 昌史(東北大学未来科学技術共同研究センター )
  • 圷 尚武(国立病院機構千葉東病院・臨床研究センター)
  • 上本 伸二(京都大学大学院医学研究科 外科)
  • 伊藤 壽記(大阪大学大学院医学系研究科 生体機能補完講座)
  • 安波 洋一(福岡大学 再生移植医学)
  • 剣持 敬(藤田保健衛生大学医学部 臓器移植科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
35,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、脳死または心停止後に提供された膵臓から分離された膵島組織をインスリン依存状態糖尿病患者に移植する膵島移植療法において、移植片に対する免疫反応を制御する新規免疫抑制療法の臨床効果及び安全性を評価する臨床試験の実施を目的とする。
インスリン依存状態糖尿病患者の日常生活に著しい障害を来す血糖不安定性からの解放を目指し、血糖感受性にインスリン分泌を可能にする治療として、膵臓移植と膵島移植という移植医療が位置づけられている。臓器移植である膵臓移植は、1型糖尿病の治療の一選択肢としてすでに確立しているが、血管吻合を伴う難易度の高い開腹手術を必要とし、移植手術そのものに起因する合併症も少なくない。一方、組織移植に分類される膵島移植は、提供された膵臓から分離された膵島組織を、点滴の要領で門脈内に輸注する先進的な低侵襲治療である。しかし、これまでのプロトコールでは長期成績の改善が必要とされ、新たな免疫抑制プロトコールが探索が必要とされている。
研究方法
血糖不安定性を持つ重症インスリン依存状態糖尿病に対して、新規免疫抑制療法による膵島移植を複数回(3 回まで)実施する。初回移植では導入時に抗胸腺細胞グロブリン(二回目以降はバシリキシマブ)、維持にタクロリムス(またはグラセプター)あるいはネオーラル、およびミコフェノール酸モフェチルを用いる。各回導入時には抗TNFα抗体も投与する。また、腎移植後の膵島移植例では維持療法は変更せず、導入療法のみを追加する。多施設共同臨床試験として先進医療Bの承認のもとに実施し、登録期間(移植実施期間)は4年、治療期間は初回膵島移植時から2年3ヶ月間、予定試験期間は計6 年3 ヶ月間となり、平成29年4月末に試験が終了する予定としている。
結果と考察
臨床試験の実施においては、薬事法の承認等が得られていない医薬品の使用を伴うため、詳細なレシピエント選択条件、厳格な登録基準、高いクオリティのデータ管理を可能とする実施体制を整備・維持している。平成25年3月1日に、脳死ドナーを含めた膵島移植も先進医療Bとして承認されたことにより、本年度は膵島分離・移植症例数の増加が期待された。その結果、膵島分離・移植に適したドナー情報の提供件数が増加し、平成25年度には、5件の膵島分離を実施し、うち4件で本臨床試験としての膵島移植を実施することができた。5件の提供のうち、4件は脳死ドナーからの膵提供であり、脳死下提供による膵島移植は本邦では初のケースであった。
また、膵島移植はドナーから臓器を提供いただき、組織である膵島をレシピエントに移植するという特殊性を有しており、その実施にあたっては、膵島移植実施施設だけでなく、提供に関係する日本臓器移植ネットワーク、日本移植学会、日本組織移植学会、組織移植ネットワーク、臓器移植対策室等との協力体制の構築が必要である。連携会議の開催を通じて、各機関とともに膵島移植実施にあたっての問題点を抽出し解決に努めた結果、これまでの心停止下の膵島提供だけでなく、脳死下からの提供にも対応が可能な体制が確立され、実際に円滑に運用された。
結論
現在臨床試験実施途中の段階であるが、先進医療制度のもとで、科学的に評価可能なデータを収集することで、本プロトコールに含まれる免疫抑制剤の安全性及び臨床効果が評価され、将来的な膵島移植における薬事承認申請に繋がることが期待され、膵β細胞不全であるインスリン依存状態糖尿病に対する根治的かつ低侵襲な治療法が確立されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201309045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
43,150,000円
(2)補助金確定額
42,864,000円
差引額 [(1)-(2)]
286,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,884,124円
人件費・謝金 3,043,090円
旅費 2,821,965円
その他 9,465,234円
間接経費 7,650,000円
合計 42,864,413円

備考

備考
1,000円未満の端数を切り捨てたため差額が生じました。
差異413円は自己資金にて充当しております。

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-