一般利用者の視点に基づく臨床試験コンテンツ作成とポータルサイト構築に関する研究

文献情報

文献番号
201309031A
報告書区分
総括
研究課題名
一般利用者の視点に基づく臨床試験コンテンツ作成とポータルサイト構築に関する研究
課題番号
H24-臨研基-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
有田 悦子(北里大学 薬学部・医療心理学)
研究分担者(所属機関)
  • 氏原 淳(北里大学北里研究所病院・バイオメディカルリサーチセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,048,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は「臨床研究・治験活性化5か年計画2012アクションプラン」(文科省・厚労省)において国民・患者への普及啓発として挙げられた“国民と患者をそれぞれ対象にしたニーズ調査や意識調査を実施し、その結果を踏まえて国民・患者にとって利用しやすいポータルサイトを構築する。”という課題を遂行するため平成24年度~25年度にわたって実施した。本研究では、平成24年度の一般国民を対象とした臨床研究・治験情報に対する調査による要件定義を踏まえ、一般利用者の視点に立ったより利便性の高い臨床試験ポータルサイトのプロトタイプ構築を目指した。また、臨床研究・治験関連のコンテンツを作成し、今後の一般国民への臨床研究・治験情報の普及啓発の一助とすることを目的にした。
研究方法
平成24年度の関連調査の結果を踏まえたサイトの基本設計を行い、プロトタイプを構築した。公開フォーラム等により、一般参加者からの意見集約を行った。また研究成果発表や情報交換のため、WHOや国内外の学会へ参加、発表を行った。臨床試験ポータルサイトのプロトタイプ構築にあたり、元の臨床試験情報は各関連機関の所有物であり当研究班ではデータを直接利用することができなかったため、データは模擬的にコピーしたものを研究班の評価に限定して利用させていただいた。
更に、一般国民だけでなく臨床試験関係者も視野にいれた教育コンテンツの作成を試みた。
結果と考察
平成24年度の関連調査結果から得られた下記の要件を踏まえポータルサイトのプロトタイプ構築を試みた。
①アクセスしやすさ
本ポータルサイトは非公開のため実証はできなかったが、情報を必要としている一般利用者がサイトにたどり着けなければ意味がない。今後の検討課題として、一般国民が容易にポータルサイトにアクセスできるように企業並みのSEOを行うことを提案する。
②検索機能の多様性・利便性
一般利用者が情報検索を行う際には、まず「病名」や「治療法」を入力して検索を開始することが明らかになっている。その際に入力される用語はさまざま(乳がん,乳癌,乳ガン・・)であるので、ポータルサイトには多様な入力に対応するシソーラスを組み込む必要がある。また現在の登録データベースでは、疾患名を入れて検索した場合「除外基準」に書かれていても抽出されてしまうため、今後、登録データの二次利用を見据え、データベース上の対象疾患名をコード化するなどの構造整理が必要である。
③地域別・疾患名別の入力
一般利用者が情報を検索する際、自分の居住地の「地域」と罹患している「疾患名」でAND検索できる検索システムが望ましいことから、調べた情報が記録として残せるようなシステムを開発した。模擬データにて検証を行ったところ、都道府県情報は元データに項目が存在しない、またはあっても入力されていないことが明らかになった。また、実施中の臨床試験のみを抽出したい場合も「実施中」「募集中」、「選択基準/除外基準」「対象基準」など入力項目や用語が統一されておらず、元のデータベース側の不統一を改善してく必要性が示唆された。
④信頼性根拠を明示
構築したプロトタイプやリンク先のサイトについてインターネット上の医療情報評価の一手法であるHONcodeを用いて評価を試みた。一方でサイトの評価は臨床者の満足度を保証するものではなく、扱われる情報の質も含めて評価できる仕組みを検討することも必要である。
⑤言葉の解説・知識を深められる情報
一般の方に臨床試験の意義を理解していただくためのコンテンツは既に医療機関や公共機関、製薬会社などで多数公開されている。そこで本研究班では適切な臨床試験情報への入り口として、ここに来れば情報が集約されているポータルサイト作りを提言する。
⑥連絡先表示
実施医療機関の連絡先や代表相談窓口の表記を義務付けることなど一般国民が安心してサイトを利用できるようなフォローアップ体制づくりも重要である。
教育コンテンツとしては、臨床試験参加に治療への一縷の望みをかけた拡張型心筋症患者をモデルとした『未来の患者さんへの治療』という教育用ビデオを作成し”臨床研究と日常診療の違い“を考える題材とした。
結論
平成24年度調査から明らかになった要件に従ってサイトのプロトタイプ構築を試みたところ、一般利用者にとって利便性の高いポータルサイトを構築するためには元となるデータベースに臨床試験情報を登録する段階で、二次利用を踏まえた登録ルールの統一が必要であることが示唆された。今後、これらの課題が解消され、情報を必要とする者、提供する者すべてにとって、心の拠り所となる様な「臨床試験情報ポータルサイト」が構築されることを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201309031B
報告書区分
総合
研究課題名
一般利用者の視点に基づく臨床試験コンテンツ作成とポータルサイト構築に関する研究
課題番号
H24-臨研基-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
有田 悦子(北里大学 薬学部・医療心理学)
研究分担者(所属機関)
  • 氏原 淳(北里大学北里研究所病院・バイオメディカルリサーチセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012アクションプラン」(文科省・厚労省)において国民・患者への普及啓発として挙げられた“国民と患者をそれぞれ対象にしたニーズ調査や意識調査を実施し、その結果を踏まえて国民・患者にとって利用しやすいポータルサイトを構築する。”という課題を遂行するため平成24年度~25年度にわたって研究を実施した。本研究では、一般利用者の目線にたった臨床試験・治験ポータルサイトの構築およびその教育的活用について検討することを目的とした。
研究方法
1年目(平成24年度)は、国内外の臨床研究ポータルサイトの汎用度等について調査を行ったほか、既存のポータルサイトについて一般利用者による使用性調査を実施した。また一般国民を対象として、臨床試験の認識や情報希求度、臨床試験情報検索ポータルサイトへの要望などの意識調査を実施した。関連調査結果を踏まえ、一般利用者にとって利便性の高いポータルサイトの要件定義を行うと共に、臨床試験の理解に役立つコンテンツ等の試作を開始した。海外における臨床研究・治験関連サイトや国民への啓発活動についても、海外の臨床研究・治験関連サイトおよび関連機関やその配信内容に関する情報を収集し、調査および現地視察を行った。また、研究成果発表を通して国民への啓発活動を行った。
2年目(平成25年度)は、平成24年度の関連調査の結果を反映したサイトの基本設計を行い、プロトタイプを構築した。プロトタイプ構築にあたり、元の臨床試験情報は各関連機関の所有物であるため当研究班ではデータを直接利用することができなかったため、データは模擬的にコピーしたものを研究班の評価に限定して利用させていただいた。構築したプロトタイプに関して一般国民や患者などを対象とした公開イベントを開催し、国内外の学会へも参加し普及啓発に努めた。また、一般国民だけでなく臨床試験関係者も視野にいれた教育コンテンツの作成を試みた。
結果と考察
1年目(平成24年度)の国民・患者が求める臨床試験ポータルサイトに関する調査から①アクセスしやすさ、②検索機能の多様性・利便性、フリーワード検索に対応、シソーラス機能、③地域別・疾患名別の入力、④信頼性根拠を明示、⑤言葉の解説・知識を深められる情報、⑥連絡先表示、などの項目があがった。このことから、一般利用者は自分の身近な地域で、自分や家族の病気の治療法としての臨床試験を探して情報検索をする傾向がみられ、入手した情報の信頼度やわかりやすさ、相談窓口などを求めていることが明らかとなった。
そこで2年目(平成25年度)は平成24年度の関連調査の結果を踏まえたサイトの基本設計を行い試作したポータルサイトについて研究班員および有識者による評価を実施し、修正作業を実施しサイトのプロトタイプを構築した。本プロトタイプには、一般利用者の操作形態にあわせ漢字、カタカナ、ひらがな入力を意識しなくともフリーワード検索が可能となるような「検索システム」を装備したが、「検索システム」の検討を通して前提となるデータ登録の段階で元のデータベースの項目が統一されていないなどの課題が明らかになった。またこれに付随する「シソーラス」についても検討を行った。
構築したプロトタイプに関する説明の機会をもつため全国で一般国民や患者などを対象とした公開イベントを開催し、臨床試験に関する普及啓発を行う他、国立保健医療科学院の臨床研究(試験)ポータルサイトの広報も行った。更に、WHOの担当者との情報交換や研究成果発表や情報交換のため国内外にて学会発表を行った。
 一般国民だけでなく臨床試験関係者も視野にいれた教育コンテンツとして、「未来の患者さんへの治療~日常診療とは異なる臨床研究を理解する~」を作成した。
結論
本研究班がイメージする一般利用者のための臨床試験ポータルサイトは、新しい医療の情報を「必要とする側」と「提供する側」の双方向コミュニケーションの場として存在するサイトである。一方で、真に国民・患者の役に立つポータルサイトを構築するためには元の登録データ入力の段階での抜本的な見直しが必要なことも明らかになった。これらの課題を解決するためには以下の様な取り組みが必要である。
 1.SEO(Search Engine Optimization)による検索エンジンでの上位表示
2.各レジストリの項目を情報提供を見据えたものとする再整備・入力ルールの統一 
 3.一般国民への臨床試験情報提供を見据え、3つのプライマリレジストリの再構築や統合
今後、これらの課題が解消され、関係者すべてにとって心の拠り所となるサイトが構築されてゆくことを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201309031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一般国民が求める臨床試験ポータルサイトの要件として①アクセスしやすさ、②検索機能の多様性・利便性、フリーワード検索に対応、シソーラス機能、③地域別・疾患名別の入力、④信頼性根拠を明示、⑤言葉の解説・知識を深められる情報、⑥連絡先表示などがあがり、要件を踏まえたポータルサイトプロトタイプを構築した。本プロトタイプには漢字、カタカナ、ひらがな入力を意識しなくともフリーワード検索が可能となるシステムを装備したが、前提となるデータ登録の段階で元となる項目が統一されていないなどの課題が明らかになった。
臨床的観点からの成果
本研究成果の「検索システム」では、漢字、カタカナ、ひらがな入力を意識しなくともフリーワード検索が可能となった。また、ユーザーが知りたい疾患の検索語に合わせて疾患情報を表示し、そこからその疾患領域に付随する臨床試験情報へ誘導する構成とし、より一般ユーザーのニーズに沿った検索の流れが構築できた。さらに、患者・一般国民向けだけでなく、医療者・研究者向けとして、治療を期待して臨床試験情報にたどり着いた難治性疾患患者の心理や臨床研究と日常診療の違いなどを理解するための教育コンテンツを作成した。
ガイドライン等の開発
一般国民が求める臨床試験ポータルサイトは①アクセスしやすさ、②検索機能の多様性・利便性、フリーワード検索に対応、シソーラス機能、③地域別・疾患名別の入力、④信頼性根拠を明示、⑤言葉の解説・知識を深められる情報、⑥連絡先表示、などだった。これらを実現するためには「各レジストリの項目を情報提供を見据えたものとする再整備・入力ルールの統一」、「一般国民への臨床試験情報提供を見据え3つのプライマリレジストリの再構築や統合」などの取り組みが必要である。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果に関しては、平成26年7月31日に予定されている第11回臨床研究・治験活性化に関する検討会において発表予定である。
その他のインパクト
平成24年度の成果報告会として平成25年2月11日に公開フォーラムを開催した。平成25年度は構築したプロトタイプに関する説明の機会をもつため平成26年1月12日に東京にて公開フォーラムを行った他、沖縄、福岡、神戸など全国各地で一般国民や患者などを対象とした成果報告会を開催し、本研究や臨床試験に関する普及啓発を行った。また、オランダの患者会、製薬協、大学関係者、厚労省担当者やWHOのICTRP担当者との情報交換を行ったほか、国内外の学会にて成果発表を行った。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
11件
一般市民や医療系学生を対象とした教育 臨床試験関係者を対象とした研修会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
星佳芳、有田悦子、丁元鎮 他
臨床研究登録ポータルサイトのリンク集にて公開されている保健医療情報ウェップサイトにおける信頼性の認証評価状況についての調査結果
ヘルスサイエンス・ケア , 13 (2) , 76-81  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2018-06-04

収支報告書

文献番号
201309031Z