新しく開発された超高感度内視鏡(従来の強力光源が不要)の脳神経外科領域への臨床応用とその実用化に向けた医師主導治験の実施

文献情報

文献番号
201309026A
報告書区分
総括
研究課題名
新しく開発された超高感度内視鏡(従来の強力光源が不要)の脳神経外科領域への臨床応用とその実用化に向けた医師主導治験の実施
課題番号
H24-被災地域-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
本郷 一博(信州大学 医学部脳神経外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 敏雄(国立成育医療研究センター 社会・臨床研究センター)
  • 鎮西 清行(産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門)
  • 藤森 敬也(福島県立医科大学 胎児・新生児医学/産婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は近年開発された超高感度カメラ搭載の新しい硬性内視鏡(以下,超高感度内視鏡)を脳神経外科領域(脳室鏡下操作等)および一般の腹腔鏡手術(例えば産婦人科分野)における診断と治療の双方に導入するため,医師主導治験を施行してその薬事申請・承認,それに続く事業化・市場化を促進し,同時に,超高感度内視鏡の短期間での最適化を実現させる.本超高感度内視鏡は,従来の強力な光源を用いない超低照度環境下(例えば単一LEDのみ)でも十分な視野観察を既に可能とし,その完成度も(光学的性能試験・動物実験等を介して)目標の約90%に達している.その最終的完成のために、内視鏡カメラの小型軽量化と色調の高精細化を達成する.
研究方法
H25年度には,国立成育医療研究センターを中心に臨床応用に耐えうる超高感度内視鏡カメラおよび周辺機器の開発を進め、これと並行して,信州大学では脳神経外科分野での要求仕様を,福島県立医科大学では産婦人科分野での要求仕様を調査するため,既存の細径立体内視鏡を導入し,臨床評価を行なうことで,従来の照明環境下(強力なキセノン光源使用)における課題を抽出し,開発にフィードバックさせる.また,産業技術総合研究所では,超高感度内視鏡の有効性安全性の評価方法の基礎的検討と,超高感度内視鏡の産業競争力強化のための基礎的検討に取り組み,脳神経外科領域で臨床応用するための内視鏡として薬事承認を目指す.
結果と考察
平成25年度には,超高感度内視鏡として,CMOS撮像素子を用いた超高感度内視鏡カメラを最終製品とし,初年度に製作したプロトタイプを臨床現場で使用できる仕様(滅菌対応や防水性など)に向上させた.また,並行して内視鏡画像処理機能を拡張するソフトウェアの開発も進め,特にフルハイビジョン(200万画素)に達していない現状の内視鏡カメラの解像度(147万画素)を,疑似的に向上させ,よりシャープな内視鏡画像を得るためのソフトウェアも追加した.これにより,細径の2眼1カメラ方式の3D内視鏡として用いた場合であっても,画質を低下させることなく表示することが可能となった.超高感度内視鏡の評価としては,従来のキセノンランプを用いた強力光源と比較し,LEDの省電力低照度の光源であっても明るい内視鏡画像が得られることを確認した.また,CMOS撮像素子の近赤外光の波長帯域の感度特性を活かし,インドシアニングリーンを用いた蛍光観察(845nm)も,可視光領域とアダプタで切り替えながら,細径の内視鏡でも十分に観察可能であることを確認した.臨床研究に関しては,主に超高感度内視鏡が効力を発揮すると予想される細径の3D硬性鏡を用いて,信州大学脳神経外科では28例(下垂体腺腫や神経鞘腫など)を,福島県立医科大学産婦人科では15例(卵巣嚢腫や子宮筋腫など)を行い,また,CMOS撮像素子を用いた超高感度内視鏡の評価も開始した.抽出された課題としては,解像度向上,レンズ洗浄装置の装着(洗浄ポートの設置)への対応,裸眼での3D観察への対応,奥行きを客観的に把握できるスケール表示機能の搭載,ズーム機能の搭載,装置の軽量化と無線化による操作性の向上,ICG蛍光表示への対応,眼精疲労のない自然な明るい画像作り等が挙げられたが,最終年度には製品化に直結する課題から重点的に取り組む.なお,平成25年12月20日に行ったPMDAとの個別面談にて,「超高感度内視鏡の脳神経外科領域への使用に関しては,仕様を備える必要がなく,既承認品との同等性が示せれば,”神経内視鏡に関する承認基準(平成21年11月20 日薬食発1120第10号通知)”に沿って承認申請可能であり,臨床試験は要さないとのコメントを得たため,治験ではなく臨床評価の実施で十分との判断がされた.
結論
H25年度には,CMOS撮像素子を用いた超高感度内視鏡カメラの開発を進め,内視鏡画像処理機能を拡張するソフトウェアの拡充を行った.LED照明を用いた可視光観察実験,および蛍光観察実験を行い,従来の内視鏡と比較して明るい画像を得られることを確認した.薬事申請に関しては,「内視鏡用ビデオカメラ」としてクラスⅠでの届出を行い,承認を得た.さらにクラスⅣの硬性神経内視鏡としては臨床試験は必要とされないことが明らかになった.薬事申請を行う際のまた,臨床評価については,主に超高感度内視鏡が効力を発揮すると予想される細径の3D硬性鏡を用いて,信州大学および福島県立医科大学にて2D硬性鏡との比較を行い,超高感度内視鏡とその周辺機器が備えるべき性能に関して,課題を抽出した.最終年度には,洗浄・滅菌等臨床使用に耐えうる改良を施した超高感度内視鏡を用いて,脳神経外科領域でのICG蛍光観察や,産婦人科領域でのLED照明使用などの臨床評価を開始する.

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201309026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
78,000,000円
(2)補助金確定額
78,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 33,184,985円
人件費・謝金 22,133,341円
旅費 2,337,881円
その他 2,344,004円
間接経費 18,000,000円
合計 78,000,211円

備考

備考
自己資金211円

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-