PAI-1阻害に基づく新規放射線障害治療薬の臨床開発

文献情報

文献番号
201309023A
報告書区分
総括
研究課題名
PAI-1阻害に基づく新規放射線障害治療薬の臨床開発
課題番号
H24-被災地域-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 敏男(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 段 孝(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 市村 敦彦(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 安藤 潔(東海大学 医学部・血液内科学)
  • 八幡 崇(東海大学 医学部再生医療科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
放射線障害は重篤な組織障害をもたらし、震災後の社会的喫緊の課題であるが、有効な治療薬は未だ無い。放射線治療における正常組織障害を防止する観点、東日本大震災を契機とした原発事故や防除作業に伴う障害治療や予防の観点から、治療薬が世界的に切望されている。本研究では、PAI-1阻害薬の放射線障害治療薬としての有効性を臨床試験で証明する。このアカデミア発の創薬は、震災地域の課題を震災地域のシーズで解決するものであり、「日本再生・被災地復興」のシンボルとなりうる。
放射線照射では、正常細胞・組織では、造血幹細胞が最も感受性が高く、次に皮膚や粘膜、消化管等の上皮細胞が影響を受けやすい。申請者らは、血栓や組織線維化に関わるPAI-1経口阻害薬TM5509(あるいは後継化合物)が、①マクロファージ遊走阻害、②放射線照射による骨髄抑制後の幹細胞移植で造血再生促進、③薬剤誘発ROS依存性の腸炎や肺炎モデルで効果、④虚血に伴う血管修復を促進などの知見を見出し、PAI-1阻害薬が放射線照射による組織障害を防御、治癒する画期的な医薬品になる可能性を一連の動物試験で実証した。
TM5509は申請者らが開発した化合物であり、ヒトPAI-1のX線構造解析を元にデザインした新規400化合物から、有効性、安全性、薬物動態で評価選択し、ヒト血漿での作用を確認している。
本研究では、H24年度(2012年度)に第I相試験の準備を完了し、H25、26年度(2013,14年度)には第I相試験での安全性確認を行い、H27、28年度(2015,16年度)には、第II相試験でTM5509の「全身照射前処置幹細胞移植に対する効果」でPOC(治療効果の証明)を取得する(全て医師主導治験)。
TM5509の臨床開発が成功した暁にも別適応での開発が考えられる。本研究後には企業に導出し、共同開発で承認までつなげる。
研究方法
平成25年度計画の達成目標は、臨床第I相試験の開始である。そのために以下の検討を進めた。
1. 第I相単回投与試験(低用量):
2. サル4週間反復経口投与毒性試験(広用量)
3. 14C-TM5509のサルにおける胆汁排泄代謝試験
4. PMDA相談と治験届の提出
結果と考察
1.第I相単回投与試験(低用量):
PMDA戦略相談の結果、第I相単回投与試験は30 mg投与までを行い、その結果から次ステップを判断することになった。結果は、治験期間を通じて重篤な有害事象は認められず、治験薬との関連が否定できない有害事象は、10mg群2例各1件(下痢、熱感)であった。そのことから、健康成人男子にTM5509を1~30mgを単回経口投与したときの安全性には問題なく、忍容性が確認された。薬物動態では、CmaxおよびAUCは30mg投与まで用量に依存して上昇し、線形性(用量依存性)が観察された。サルデータの比較から240mgまでの単回投与試験が必要と考えられた。
2.サル4週間反復経口投与毒性試験(広用量):
先に実施したTM5509のカニクイザルを用いた4週間反復経口投与毒性試験(20、80及び300 mg/kg)において、300 mg/kg群で胆管系障害に起因する感染症(肝膿瘍)と考えられる死亡が認められたことから、PMDAより重篤なリスク予知のためのバイオマーカーの同定と、TKでの線形性の確認が求められた。そこで、2、6、20、80及び300 mg/kg/日の用量で詳細な検討を行った。結果は、20 mg/kg以上での再現性が得られ、投与初期のビリルビンの上昇及び便性状の変化が毒性発現の指標となること、20 mg/kg以上でTM5509の血中濃度に飽和現象が見られることと代謝酵素の誘導がある可能性を明らかにした。
3.14C-TM5509のサルにおける胆汁排泄代謝試験:
PMDAとの相談により実施した。本薬剤の消化菅吸収率は概ね投与量の80%前後と推察された。また、投与後48時間までの体外排泄の約8割が胆汁中への排泄であり、本薬物は胆汁排泄型と考えられた。
胆汁中および肝臓中の代謝物の測定では、未変化体TM5509が主成分であり、代謝物としては、4’-sulfooxy TM5509やグルクロン酸抱合体が観察された。
4.PMDA相談と治験届の提出
上記の結果を踏まえて、PMDAと相談した結果、PMDA医薬品戦略相談における事前面談や対面助言の必要はなく、次ステップとして第Ⅰ相試験における240 mgまでの単回投与が可能となった。
結論
以上から、平成25年度の達成目標は100%達成した。さらに、第I相単回投与試験(高用量)の治験計画届を行ない、医師主導治験を開始した(UMIN登録ID:000012853)。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201309023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
91,000,000円
(2)補助金確定額
91,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,785,591円
人件費・謝金 7,038,119円
旅費 50,540円
その他 61,125,750円
間接経費 21,000,000円
合計 91,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
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