読書が可能な人工視覚システム(脈絡膜上―経網膜電気刺激(STS)法)の実用化

文献情報

文献番号
201308010A
報告書区分
総括
研究課題名
読書が可能な人工視覚システム(脈絡膜上―経網膜電気刺激(STS)法)の実用化
課題番号
H24-医療機器-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
不二門 尚(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 北澤 茂(大阪大学 医学系研究科)
  • 瓶井 資弘(大阪大学 医学系研究科)
  • 西田 幸二(大阪大学 医学系研究科)
  • 大路 正人(滋賀医科大学 眼科学)
  • 林 篤志(富山大学 医学部)
  • 平形 明人(杏林大学 医学部)
  • 貴島 晴彦(大阪大学 医学系研究科)
  • 太田 淳(奈良先端科学技術大学院大学)
  • 小澤 素生(株式会社 ニデック)
  • 梅垣 昌士(大阪大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
28,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、確立した有効な治療法がない、本邦の視覚障害原因3位の網膜色素変性(RP)に対して、本邦独自に開発した、脈絡膜上経網膜電気刺激(STS)法による人工視覚システムを実用化して、失明したRPの患者に対して、読書が可能な視力を取り戻すことである。われわれは、2010年に、STS法による、9チャンネル(Ch)の慢性埋め込み型システムを2名のRPの患者に対して1ヶ月間埋植し、箸箱を認識して把持することが可能であることを示した。本研究は、電極数を9Chから 49Chに増加させ、読書可能な人工網膜を実用化することを目的とする。平成24年度は、49Chの慢性埋め込み型システムのパーツ(協力企業(株)Nidek製作)の安全性・有効性試験(家兎,ネコ)を行った後49Chのトータルシステムの安全性試験(イヌ)を行う。最適な刺激パラメータを、網膜機能画像を用いた動物実験等により検討する。人工網膜の適応を決定するための低視力者の視力評価法、および適応基準を確立し、患者のリクルートを行う。また、本システムによる人工視覚の評価法、視覚リハビリテーション法を検討し、実用的な視覚を早期に得られる方法を探索する。
研究方法
I.  49Ch人工網膜システムの安全性、有効性試験    
 1) 49Ch電極システムのパーツごとの安全性、有効性試験 (家兎)    
 2) 49Ch-STSトータルシステムの安全性試験 (イヌ)
II. 49Ch-STSトータルシステムの術式の安全性確立 (献体)
III. 人工網膜の適応患者の選択基準の確立   
IV. STS人工網膜システムによる人工視覚の評価法、リハビリテーション法の確立
V.  臨床研究のデザインの検討
結果と考察
1. 49Ch-STSトータルシステムの電極の安全性試験(イヌへの長期埋植):
ビーグル犬に6か月トータルシステムを埋植し、生体への安全性を検討した。眼底写真、蛍光眼底造影で、埋植眼に出血や萎縮などの変化がないことを確認し、ERGで左右差がなかったことから埋植は機能的にも網膜に影響しないことが示された(n=3, 達成度100%)。また、システムの有効性を、電極を電気刺激した場合の角膜電極の反応で検討したところ、1例目では、デバイスの固定の不安定性があり、1か月目に断線が生じたが、再手術を行ったところ、6か月目まで安定した反応が見られた。他の2匹に関しては6か月間問題がなく、システムの長期の有効性が確認された(n=3,100%)。
2. 人工網膜の適応患者のリクルート:
大阪大学では多くの症例を検討し、OCTの厚みが手術適応の参考データとなることが示された。その結果も踏まえ、選択基準を決めリクルートを行ったところ、平成25年度末に行った49Ch STSシステム埋植手術予定の患者1名のリクルートが得られた。他の3施設では、適応患者が必ずしも多くなく、引き続き適応患者の選定を続ける予定である。
3. STS人工網膜埋植後の視覚リハビリテーション法の検討:
液晶パネルで視野の一部に光を与えた場合に知覚した位置を指でタッチさせ、その位置を定量的にコンピューターで計測し、音声でフィードバックするシステムを完成した。正常者に対して擬似的盲の状態をつくり試験を行った結果、音声フィードバックの有効性が示された。
4. 最適の刺激パラメータの検討:
CCDでとらえた画像に対して、対象物をハイライトするソフトウェアの開発を行った。その結果、このソフトウエアを用いると対象物を認識しやすいという結果が得られた。
5. 49Ch-STS 人工視覚システムによる中期臨床試験:
PMDAの対面助言を受け、治験の前段階としての臨床研究において、デバイスおよびプロトコール作成に関して、多くのアドバイスを得た。これを受けて大阪大学医学部倫理委員会への臨床研究の申請を行い、承認が得られた。現在、1名の患者に対して49Ch-STS 人工視覚システム埋植手術を行い、経過観察中である。
結論
平成25年度の第1例目の臨床研究で術式の安全性、デバイスの安全性、ベースラインの視機能の向上が確認された。これら成果をもとに、平成26年度はさらにデバイスの改良、術式の改良を行って、臨床研究をさらに2名に対して実施することを計画している。また、49Ch-STS人工視覚システムを装着した1例目の患者に対して、開発した視機能評価装置で視機能の変化を検討するとともに、開発した視覚リハビリテーション法を応用して、患者のQOLの改善がどの程度得られるか検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201308010Z