カーボンナノチューブとPEEK材を複合する技術を活用した脊椎手術のための高機能インプラントの開発 

文献情報

文献番号
201308009A
報告書区分
総括
研究課題名
カーボンナノチューブとPEEK材を複合する技術を活用した脊椎手術のための高機能インプラントの開発 
課題番号
H24-医療機器-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 直人 (信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 博之(信州大学 医学部)
  • 薄井 雄企(信州大学 工学部)
  • 羽二生 久夫(信州大学 医学部)
  • 伊東 清志(信州大学 医学部附属病院)
  • 青木 薫(信州大学 医学部附属病院)
  • 高梨 誠司(信州大学 医学部附属病院)
  • 岡本 正則(信州大学 医学部附属病院)
  • 小林 伸輔(信州大学 医学部附属病院)
  • 野村 博紀(信州大学 医学部附属病院)
  • 森山 茂章(福岡大学 工学部)
  • 西村 直之(ナカシマメディカル株式会社 開発部)
  • 湯谷 知世(ナカシマメディカル株式会社 開発部)
  • 赤木 雅道(ナカシマメディカル株式会社 薬事品証部)
  • 奥山 真紀子(ナカシマメディカル株式会社 薬事品証部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の脊椎疾患を有する患者数は、高齢化の影響を受けて急速に増加しており、いわば国民的疾患の様相を呈している。多くの脊椎手術で行われる脊椎固定では、脊椎椎体スペーサー(ケージを含む)と骨移植が用いられる。しかし、以前より脊椎椎体スペーサーに使用されているチタン金属は、骨に比べて硬すぎるために母床の脊椎椎体が圧潰することがある。これにより、複数回手術が必要になる、機能障害が発生するなどの問題が多数生じている。このため近年は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材が頻用されるようになった。PEEK単体または炭素繊維強化PEEK(CFR/PEEK)を脊椎椎体スペーサーに使用すると、金属材料に比して弾性率が低いため、椎体が圧潰することが少ない。しかしPEEKは骨親和性が低いため、骨移植を併用した場合でも骨癒合しにくく、不安定性が生じるという大きな欠点がある。このように、現在の脊椎椎体スペーサーによる脊椎固定には多くの問題があるが、今後も脊椎手術が増加し続けることは確実である。このような状況において、日本で発見されたカーボンナノチューブ(CNT)はナノテクノロジー材料の代表であり、近年急速に生体材料への応用研究が活発になっている。本研究では、独自に開発したCNT複合技術をシーズとしてPEEK材に適用し、新しいCNTとPEEKの複合材料(CNT/PEEK)を開発する。目的とする製品は、強度が高いが弾性率が骨に近似し、骨親和性の高い理想的なCNT/PEEK脊椎椎体スペーサーである。この開発に成功すれば、手術を必要とする多くの重症脊椎患者に有用な、日本発の革新的医療機器になることが期待できる。独自に開発したCNT複合技術をシーズとしてPEEK材に適用し、新しいCNTとPEEKの複合材料(CNT/PEEK)を開発する。目的とする製品は、強度が高いが弾性率が骨に近似し、骨親和性の高い理想的なCNT/PEEK脊椎椎体スペーサーである。この開発に成功すれば、手術を必要とする多くの重症脊椎患者に有用な、日本発の革新的医療機器になることが期待できる。
研究方法
1. CNT/PEEK材料開発:
(1)素材料設計、生体親和性構造設計
(2)試験片製造
(3)機械的特性評価
(4)脊椎椎体スペーサー(インプラント)のコンセプトデザイン設計
2. CNT/PEEKの生体安全性評価、骨親和性評価:
(1)短期~長期の皮下埋め込み試験
(2)細胞毒性試験、遺伝毒性試験
(3)表面にCNTを付着させたPEEK材の骨埋め込み試験(本研究機関前に開始した予備実験)の評価
(4)短期~長期の骨埋め込み試験
3. インプラントの機械特性試験、生物学的試験
4. 安全性試験
結果と考察
1. CNT/PEEK材料開発
素材料設計、生体親和性構造設計、試験片製造、機械的特性評価を実施し、CNTを7%複合した場合に最適であることが明らかになった。さらに、脊椎椎体スペーサーのコンセプトデザイン設計において、頸椎と腰椎で個別のデザインを設計し、それぞれのコンセプトを定めた。
2. CNT/PEEKの生体安全性評価、骨親和性評価
短期~長期の生体安全性評価のため、CNT/PEEKの試験片を皮下に埋め込んだ。また、CNT/PEEKの試験片を用いて、細胞毒性試験と遺伝毒性試験を行った。CNTを含まないPEEKと比較し毒性を生じないことが明らかになった。一方、表面にCNTを付着させたPEEK材の骨埋め込み試験の評価は、固定性が強いためにねじ山が切れてしまい、機械的試験を行うことができなかった。しかし、同じ目的でさらに精度の高い実験を実施しているため、研究に支障はない。さらに、短期~長期の骨親和性評価のため、CNT/PEEKの試験片を骨に埋め込んだ。
3. インプラントの機械特性試験、生物学的試験
機械的特性試験および生物学的試験を実施するために、脊椎椎体スペーサーのモデル試験片を作成した。本モデルを作製するためのプロセス技術に関する論文を、2編投稿した。
4. 安全性試験
外部GLP試験対応機関において、GLP規格に基づいた9項目中7項目の試験を実施した。また、PMDA薬事相談のための準備を行った。
結論
H24年度およびH25年度に行ったPEEK材料開発研究およびCNT/PEEKの生体安全性評価・親和性評価の結果を活用して作成したモデル試験片を用いて、H26年度はインプラントの機械特性試験および生物学的試験を行う。また、H25年度から継続して安全性試験として、外部GLP試験対応機関において、GLP規格に基づいた残りの試験項目を実施する。これらの結果を踏まえて、PMDA薬事戦略相談、開発前相談等を行う。さらに製品製造工程整備の準備、治験準備へ進めていく。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201308009Z