能登半島における国産麻黄生産拠点の構築

文献情報

文献番号
201307039A
報告書区分
総括
研究課題名
能登半島における国産麻黄生産拠点の構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-創薬-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
御影 雅幸(金沢大学 薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(昭和薬科大学 薬学部)
  • 佐々木 陽平(金沢大学 薬学系)
  • 三宅 克典(金沢大学 薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関変更 御影雅幸 平成26年4月1日から 東京農業大学農学部 教授

研究報告書(概要版)

研究目的
 マオウ属植物Ephedra spp. は重要な漢方生薬「麻黄」の原植物である.日本には自生せず,全量を中国から輸入している.近年,中国は資源保護と砂漠化防止を理由に麻黄の輸出を規制し,その供給が脅かされており,日本での生産研究が必要である.本課題では能登半島を中心として麻黄の栽培適地の選定・栽培,栽培条件等の研究拠点の形成,苗の供給拠点の構築を行なうことを目的とする.
 麻黄は日本薬局方ではアルカロイドを0.7%以上含むことを規定しているが,現時点では基準を満たす栽培法が確立されておらず,また国内では苗の増産が難しいという問題点があり,国産化にはこれらの問題点を解決する必要がある.多様な地形を有する一方で,耕作放棄地など栽培研究に利用可能な圃場が各地に点在している能登半島を中心として,種苗の確保,栽培条件などを多角的に検討し,3年後に国産化の手法や方向性を示す.
研究方法
(1)栽培種の選択:中国新疆及び内蒙古自治区のマオウ栽培地を訪問調査した。(2)種苗生産法に関する研究:多数の挿し穂が得られる草質茎を用いた挿し木法を検討した。また交配実験を行なった。(3)栽培適地の選定:能登半島を始めとする石川県下において,山砂地,砂地,畑地など,異なる土壌環境にマオウ苗を植え付けた。(4)栽培条件の研究:アルカロイド含量を高くするための栽培条件を検討した。(5)栽培拠点の構築:主として能登半島において栽培拠点となる地域を探索した。(6)有効成分その他含有成分の解明研究を行なった。(7)分子生物学的研究:DNA配列の種間差並びにアルカロイド成分との関連を調査した。
結果と考察
(1)Ephedra sinica Stapfが中国各地で栽培され,栽培適種であることが明らかになった。一方,見学した中国新疆の栽培地ではE. sinicaと共にE. equisetina Bungeが植えられている畑があり,アルカロイド含量は後者の方が有意に高かったことから,今後,本種の栽培を検討する必要もあると判断した。
(2)現在中国では全て種子からの発芽苗を利用している。本研究により,乾燥した条件下で種子生産が可能であることが明らかになったので,今後は新たに設置した設備のもとで大量の種子生産が可能になろう。交配実験では,同種間のほか他種間との交配も可能であった。一方,優良品種が選抜できた際には,株分け,挿し木等の方法によるクローン株の生産も重要となろう。人工気象器を利用するなどして多量に得られる草質茎による挿し木法に目処がつき,また地下茎による株分け法が好成績であった。
(3)石川県羽咋郡志賀町及び金沢市大野町の山砂地,砂地,畑地などにE. sinicaの主として3年生苗約270株を植え付けし,継続的に観察中である。今後さらに異なる環境で試験栽培する必要がある。
(4)アルカロイド含量を確保するには,日照が多い方が良いことが明らかになった。今後は平坦地のみならず南斜面に植える等の検討も必要であろう。
(5)能登半島各地に休耕地(栽培放棄地)やタバコ栽培の跡地などがあり,利用可能な土地は多いが,働き手が少ないことが問題点として浮かび上がった。また,麻黄は栽培開始から5年を経過しないと商業ベースでの収穫が見込めない(中国での調査結果)ことから,高齢化した地域では初期投資が困難なことも解決すべき問題点である。
(6)麻黄の含有化学成分に関して,近年はエフェドリン以外の成分の有効性も期待されている。アルカロイドのほか,フラボノイド,タンニン成分などを解析中で,徐々に解明しつつある。
(7)同種間では,アルカロイド含有量の多寡に遺伝的要因は関連しないと判断されたが,各アルカロイド組成の含有比率は遺伝的に支配されていることが明らかになった。
結論
 本研究により,種苗の生産確保については種子生産,株分け,挿し木法などによりほぼ解決できたと考えており,交配による優良品種改良も可能であることを明らかにできた。現時点において,麻黄の国産化において解決すべき最大の問題点は,収穫物のアルカロイド含量が日局規定の0.7%を超えることである。従来,この点に関する研究は代表者らの報告以外にはなく,今後もアルカロイド含量が高くなる栽培方法を探索していく必要があるが,同時に他の有効成分の探索も欠かせない。また,品種選抜の方向性としては,各アルカロイドの含有比率を指標とすることが有効である。一方,栽培者にとっては換金作物としての魅力がない場合には栽培を手がけることが困難である。全国的に農業従事者の高齢化や過疎化が進んでいること,また収穫までに数年を要する麻黄栽培においては,働き手の確保などの対策も必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201307039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
39,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 22,798,305円
人件費・謝金 3,299,099円
旅費 1,861,050円
その他 2,041,546円
間接経費 9,000,000円
合計 39,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-