地域における墓地埋葬行政をめぐる課題と地域と調和した対応に関する研究

文献情報

文献番号
201305006A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における墓地埋葬行政をめぐる課題と地域と調和した対応に関する研究
課題番号
H25-特別-指定-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
浦川 道太郎(公益社団法人全日本墓園協会 調査・研究・事業部 )
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
墓地埋葬行政については、都市化や家族形態の変化、少子高齢化の進展等によって社会環境が変化している。こうした中で、墓地に対する国民意識も変化し、いわゆる樹木葬や散骨等への関心が高まるなどの多様化がみられる。平成24年4月からは地方分権によって墓地経営等の権限がすべての市区に委譲され、住民にとってはより身近な行政主体によって運営されることとなった。地方公共団体は、地域の実情にさらにきめ細かに対応した行政を進めていくことが求められるが、様々な住民の意識、宗教的な感情や私権と、公衆衛生等の公共の福祉との調和を図っていくことが求められる。
本研究においては、各地方公共団体が、墓地埋葬行政をめぐり直面する課題と対応を集約し、これらを①住民意識や宗教的感情、私権と、②公衆衛生等の公共の福祉との調和はもとより、さらに密接に関連する③環境や都市計画まちづくり等との関係をどのように調和させていくかという観点も含め、これらを基軸として、整理、分析することによって、地方公共団体における地域の実情に応じた墓地埋葬行政の運用に資することを目的としている。
研究方法
[墓地埋葬行政における課題と対応に関する情報収集・調査]-地方公共団体が直面する墓地埋葬行政をめぐる課題(散骨、墓地不足問題等)と対応(条例や規則、要綱、ガイドライン等の制度的対応)について、我が国における各地方公共団体への照会、各種文献や各地方公共団体がホームページ等で公開している情報等の収集や基礎的調査をし、内容の検討・分析を行った。対応の参考事例を有する自治体に対し、制度的な対応の内容や背景(地域の実情)、検討の経過、調整や住民等への説明の過程、課題と課題克服のポイント、環境や都市計画行政、まちづくり等との関係、対応後の住民反応等も含めたヒアリング調査を行った。
[墓地埋葬等に関する住民の意識調査]-墓地埋葬や散骨等の住民意識の把握を目的としたアンケート調査(40歳以上の男女を対象に30問程度の1500サンプルを対象)の実施。
結果と考察
上記の墓地埋葬行政に関する情報収集や調査、住民の意識調査の結果等を踏まえ、地方公共団体が地域で直面するこれらの種々の課題と対応について、集約、整理、分析を行い、地方公共団体が運用上参照できる基本的な視座や知見、事例をとりまとめた。本研究は、地方公共団体が地域で直面する種々の課題と対応について、集約、整理、分析を行い、地方公共団体が運用上参照できる基本的な視座や知見、事例をとりまとめたものであり、本研究の成果を各地方公共団体に周知する。
結論
1.墓地等の経営許可に関する規範について:条例ではなく、「施行細則」「事務処理要領」「事務取扱要綱」により制定している地方公共団体も多いことが窺われた。墓地埋葬行政の公正性・公平性を担保する見地からは、地方議会の関与のもと、各方面の意見を集約した「条例」の形式で制定されることが望ましいと考えられる。2.墓地等の経営許可権者である地方公共団体は、近隣住民等との円滑な合意の形成や墓地等の運営と地域との調和をどのように図っていくのかという課題に直面していることが窺われた。この状況に対し、墓地等の経営許可申請の前段階で近隣住民との調整手続を設けたり、緑地や駐車場等の施設の設置を義務付けるなどにしていることが認められた。3.住民に対する墓地埋葬等に関する意識調査の結果、墓地の形態、墓参の頻度、墓地の選択基準等について、住民の意識が多様化し、価格や自宅からの距離を重視するなど意識が大きく変化している様相が明らかになった。4.住民の意識調査の結果、散骨に対する住民の考え方も様々であることがうかがわれた。こうした中で、散骨をめぐり幾つかの地域でトラブルが発生し、地方公共団体の中には、(その形態も様々であるが、)地域の実情を踏まえながら、散骨に関する条例を制定するなどの措置が講じていることが認められ、条例等の内容に関して整理を行った。5.墓地埋葬等をめぐる状況は地域によって異なるが、特に大都市圏を中心として墓地の需要に応えるのに十分な公営墓地の供給が必ずしも進んでおらず、周辺地域における墓地設置に対する住民の意識からしても、墓地の新設は近隣住民との関係でも容易でなく、今後も慢性的な墓地不足が続くものと推測されることから、地域の墓地ニーズを把握の上で対応を考えていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201305006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、各地方公共団体が、墓地埋葬行政をめぐり直面する課題と対応を集約し、これらを①住民意識や宗教的感情、私権と、②公衆衛生等の公共の福祉との調和はもとより、さらに密接に関連する③環境や都市計画まちづくり等との関係をどのように調和させていくかという観点も含め、これらを基軸として、整理、分析することによって、地方公共団体における地域の実情に応じた墓地埋葬行政の運用に資することを目的として行った。[墓地埋葬行政における課題と対応に関する情報収集・調査][墓地埋葬等に関する住民の意識調査]である。
臨床的観点からの成果
地方公共団体が直面する墓地埋葬行政をめぐる課題(散骨、墓地不足問題等)と対応(条例や規則、要綱、ガイドライン等の制度的対応)に関し、各地方公共団体への照会、各種文献やインターネットによる情報等の収集や基礎的調査を行い、内容の検討・分析を行った。対応事例を有する自治体に対して、制度的な対応内容及び背景(地域の実情)、検討の経過、調整や住民等への説明の過程、課題と課題克服のポイント、他行政(環境や都市計画行政、まちづくり等)との関係、対応後の住民の反応等のヒアリング調査をし一定の成果をあげた。
ガイドライン等の開発
本研究を踏まえて、今後、各地方公共団体が、墓地埋葬行政をめぐり直面する課題と対応を集約するにあたり、これらを①住民意識や宗教的感情、私権と、②公衆衛生等の公共の福祉との調和はもとより、さらに密接に関連する③環境や都市計画まちづくり等との関係をどのように調和させていくかという観点も含め、これらを基軸として、整理、分析する素地となり、今後、各地方公共団体における地域の実情に応じた墓地埋葬行政の運用に反映、もしくはこれを踏まえた発展的研究がなされる。
その他行政的観点からの成果
墓地等の経営許可に関する規範について:「条例」ではなく、「施行細則」「事務処理要領」「事務取扱要綱」により制定している地方公共団体も多いことが窺われた。墓地埋葬行政の公正さと公平性を担保する見地からは、墓地埋葬法施行の規範は、地方議会の関与のもと、各方面の意見を集約し、「条例」の形式で制定されることが望ましいと考えられる。地方公共団体では、墓地等の経営許可申請の前の段階で近隣住民との調整のための手続を設けたり、墓地等の設置基準として緑地や駐車場等の施設の設置を義務付けるなどの対応が認められた。
その他のインパクト
・(2018.6)月刊地方自治「職員研修」:研究分担者(横田睦)による「多死社会に行政-地方自治体は、どう向き合うのか」が掲載された
・月刊「石材」(2015.6):研究報告書「地域における墓地埋葬行政をめぐる課題と地域と調和した対応に関する研究」の特集(株式会社 石文社 発行)
・平成25年度の研究成果を踏まえ、平成26年度研究へとつなげた。・新訂「逐条解説 墓地、埋葬等に関する法律」生活衛生法規研究会監修(2017、第一法規)に平成25年度研究から「墓地埋葬等に関する住民の意識調査」(抄録)P.368-380が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
新訂「逐条解説 墓地、埋葬等に関する法律」生活衛生法規研究会監修(2017、第一法規)に平成25年度研究から「墓地埋葬等に関する住民の意識調査」(抄録)P.368-380が掲載された。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-09
更新日
2023-06-09

収支報告書

文献番号
201305006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,060,000円
(2)補助金確定額
3,060,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 13,140円
人件費・謝金 468,930円
旅費 68,580円
その他 2,349,350円
間接経費 160,000円
合計 3,060,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-06-19
更新日
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