先進国高齢者パネル調査の国際比較研究を通じた高齢化対応政策の提案

文献情報

文献番号
201303003A
報告書区分
総括
研究課題名
先進国高齢者パネル調査の国際比較研究を通じた高齢化対応政策の提案
課題番号
H24-地球規模-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 英樹(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 野口 晴子(早稲田大学政治経済学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,910,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業は2年計画で、わが国を含む先進諸国・中興国で実施されている国際高齢者パネル調査を利用して、異なる制度における高齢者の医療・介護保障や健康づくり対策の効果を検証し、高齢社会における医療保健政策ならびに社会経済政策に求められる要件を明らかにするとともに、高齢化が進むわが国における高齢者対応政策の特徴を浮き彫りにし、国際的な政策議論の中でわが国のプレゼンスを高めることを目的とした。日本の中高齢者パネルデータとデータ互換性の高い海外研究パネルデータを利用することで上記目的を果たす。最終年度となる平成25年度は、中高齢社会で注目される医療と就労、ならびにメンタルヘルスに着目し、日本の中高齢者パネルデータ(「暮らしと健康調査」Japanese Study of Ageing and Retirement; JSTAR)と欧州のデータ(Survey of Health Ageing and Retirement in Europe)を用いた比較分析を実施した。
研究方法
2007、2009に実施された日本データ(JSTAR)の2回のパネルデータを主に用いた。一方SHAREはMunich center for the Economics of Ageing (MEA)ならびにMax-Planck-Institute for Social Law and Social Policyなどが中心となり、2004年のwave 1では北欧・大陸ヨーロッパなどを含む11か国で開始され、www.share-project.org のサイトを通じて、2013年11月現在、wave1から4までの個票データを公開している。データ利用登録・申請を実施することで、NetherlandsにあるTilburg University内にあるデータ管理センターからアクセスIDが発行され、誰でも利用が可能なように整備されている。今回はwave 1&2のRelease 2.6.0ならびに、imputationなども一部施したeasySHAREなどの加工データを用いて分析用データを作成した。
結果と考察
医療サービスの水平的アクセス公平性については、欧州ならびに日本において特に65歳以上の高齢層で高度に達成されている一方、65歳未満については、受療回数において我が国では高所得層に有利な不平等が見られた。費用を理由とする医療受療の控えについては、我が国では欧州各国に比較して発生頻度は低く、特に65歳以上高齢者では軽減自己負担率・歯科サービスの公定カバーなどが機能していることが示唆された。50-65歳層での引退率は先行研究の示すとおり、欧州ではすでに7割以上が引退していたのに対し、日本では25%程度にとどまっていた。追跡2年間の間に新たに引退したものについて認知機能への影響を見たところ、日本の男性と欧州の女性で有意な認知機能の低下が認められた。またJSTARの第4回追跡調査の一部を実施した。
結論
本研究事業が目的と掲げた、中高齢者パネルデータの国内外比較分析を通じて、我が国の中高齢者に対する、医療・健康づくり・就労などの政策について、その特徴の一部が浮き彫りとなった。我が国の施策が高度に達成している部分、欧州に比較して再検討が必要な部分などが抽出される一方、社会・文化・制度が複雑に絡む現象の存在も明らかとなった。今後こうした比較分析をより広く展開することで、世界をリードする高齢者対策を我が国から発信していくことが継続的に必要である。そのうえで、比較可能性の高い中高齢者パネルデータの構築・維持と、タイムリーな分析体制の確立が重要となることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-03-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201303003B
報告書区分
総合
研究課題名
先進国高齢者パネル調査の国際比較研究を通じた高齢化対応政策の提案
課題番号
H24-地球規模-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 英樹(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 野口 晴子(早稲田大学政治経済学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業は2年計画で、わが国を含む先進諸国で実施されている国際高齢者パネル調査を利用して、異なる制度における高齢者の医療・介護保障や健康づくり対策の効果を検証し、高齢社会における医療保健政策ならびに社会経済政策に求められる要件を明らかにするとともに、高齢化が進むわが国における高齢者対応政策の特徴を浮き彫りにし、国際的な政策議論の中でわが国のプレゼンスを高めることを目的とした。初年度は日本のデータ(「くらしと健康調査」 Japanese Study of Ageing and Retirement; JSTAR)データを用いて、引退による健康影響と社会参加への影響の記述分析を実施した。2年目となる最終年度は、JSTARを用いた先行研究を再分析しつつ、同様の分析を実施するために欧州のSurvey of Health Ageing and Retirement in Europe (SHARE)の公開データを入手・整備し、医療・メンタルヘルス・就労による健康影響に着目した比較分析を実施し、我が国の中高齢者の厚生労働政策の特徴を抽出することを試みた。
研究方法
2007、2009に実施された日本データ(JSTAR)の2回のパネルデータを主に用いた。SHAREデータはwww.share-project.org のサイトを通じて、データ利用登録・申請を実施し今回はwave 1&2のRelease 2.6.0ならびに、imputationなども一部施したeasySHAREなどの加工データを用いて分析用データを作成した。以上のデータセットを用いて、これまでJSTARを用いて実施してきた先行研究に基づき、医療サービスのアクセス公平性と医療受療の控えに関する分析を再検討・比較した。また中高齢者のメンタルヘルスに関する影響要因の抽出を行った。さらに引退による健康影響の推計を実施した。各分担分析に詳細を譲る。なお上記の比較データ分析と並行し、平成25年度実施のJSTAR第4回追跡調査にあたり、健康・栄養関連調査項目を追加し、一部地点(佐賀県鳥栖市)において追跡調査を実施した。
結果と考察
平成24年度事業ではJSTARのパネルデータを用いて、paid workからの離脱を引退とした分析を実施したところ、Paid workからの「引退」はメンタルヘルスに男性では負の効果が見られたが、女性では0ないし正の影響が見られ、引退のpropensityによる重みづけした結果では、さらにその傾向が顕著だった。平成25年度事業では医療サービスの水平的アクセス公平性については、欧州ならびに日本において特に65歳以上の高齢層で高度に達成されている一方、65歳未満については、受療回数において我が国では高所得層に有利な不平等が見られた。費用を理由とする医療受療の控えについては、我が国では欧州各国に比較して発生頻度は低く、特に65歳以上高齢者では軽減自己負担率・歯科サービスの公定カバーなどが機能していることが示唆された。50-65歳層での引退率は先行研究の示すとおり、欧州ではすでに7割以上が引退していたのに対し、日本では25%程度にとどまっていた。追跡2年間の間に新たに引退したものについて認知機能への影響を見たところ、日本の男性と欧州の女性で有意な認知機能の低下が認められた。またJSTARの第4回追跡調査の一部を実施した。
結論
2年間にわたる本研究事業の結果、本研究事業が目的と掲げた、中高齢者パネルデータの国内外比較分析を通じて、我が国の中高齢者に対する、医療・健康づくり・就労などの政策について、その特徴の一部が浮き彫りとなった。我が国の施策が高度に達成している部分、欧州に比較して再検討が必要な部分などが抽出される一方、社会・文化・制度が複雑に絡む現象の存在も明らかとなった。今後こうした比較分析をより広く展開することで、世界をリードする高齢者対策を我が国から発信していくことが継続的に必要である。そのうえで、比較可能性の高い中高齢者パネルデータの構築・維持と、タイムリーな分析体制の確立が重要となることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-03-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201303003C

収支報告書

文献番号
201303003Z