グローバルエイジングへの国境なき挑戦―経験の共有と尊重を支える日本発学際ネットワークによる提言に関する研究

文献情報

文献番号
201303002A
報告書区分
総括
研究課題名
グローバルエイジングへの国境なき挑戦―経験の共有と尊重を支える日本発学際ネットワークによる提言に関する研究
課題番号
H24-地球規模-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
研究分担者(所属機関)
  • 本澤 巳代子(筑波大学人文社会系)
  • 山本 秀樹(帝京大学大学院公衆衛生学研究科)
  • 野口 晴子(早稲田大学政治経済学術院)
  • 増田 研(長崎大学文化社会学部)
  • 上杉 礼美 (陳 礼美)(関西学院大学人間福祉学部)
  • 柏木 聖代(横浜市立大学医学部看護学科)
  • 高橋 秀人(福島県立医科大学医学部)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本、欧米の介護先進国、今後高齢化を迎える各国の現状と課題について、学際的に分析を行い、その成果を追随する国に示すべく、国境を越えて経験を共有し互いを尊重できる国際的な学際ネットワークを形成することを目的としている。
研究方法
世界的視点から経験の共有と尊重を支えることを重視し1.日本の現状および介護保険制度の評価と課題2.高齢化を迎えている諸外国の実態と課題3.今後高齢化が進行する途上国における研究4.国際的学際ネットワークの整備の4つを柱に学際的研究を実施した。特に本年度はこれらのセクションの研究を進める一方、アプローチ方法としての〝グローバルエイジング″について検討した。
結果と考察
1.日本の現状および介護保険制度の評価と課題
海外ニーズに応じた日本の介護保険分析研究(チリ政府研究者と田宮の共著)をTrends and Factors in Japan's Long-Term Care Insurance System: Japan's 10-year Experience(springer社)を刊行(1-1章)。日本老年医学会の「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン」の英語版を完成(1-2章)。健康寿命の過去からの推移の詳細な分析研究を実施(1-3章)。地域の中年者の希望療養場所に関する要因を分析(1-4章)。介護政策研究をグローバルに進めるにあたっての論点を整理し、高齢化政策における福祉多元主義の発展について政策議論をし(1-5章)、介護福祉の実証研究はまだ緒に就いたばかりで、医学系の研究のような研究倫理に関する基盤・ルールが未整備のため、研究倫理の記載の実例を示し分析した(1-6章)。
2.高齢化を迎えている諸外国の実態と課題
介護保険を先に実施しているドイツでは日本と比し給付範囲が狭い現状から、新しい要介護概念及び家族支援の議論が2013年から開始しており、この実態を報告(2-1章)。米国で、筑波大学と協定したユタ大学、グローバルエイジング研究教育の先駆のマイアミ大学を訪問、現地専門家、研究者らと情報を交換した(2-2章)。
3.今後高齢化が進行する途上国における研究
アフリカを2回訪問し、同地域の1) 社会保障政策研究、2) 地域社会研究(人類学的手法の活用)を実施。実証データ分析とし、ケニアのデータベース分析にむけ、直接現地スタッフと調整。現地倫理規定の問題を処理し、具体的なプロポーザルを提出(3-1章)。また、WHOが中心となるStudy on Global AGEing and Adult Health (SAGE)のデータが整い、Ghanaのデータが公開された。来年度から分析予定。エチオピアの現状について、高齢者の数・将来推計、生活、 医療や介護の文化的側面を含めた実態、家族・地域の共助の実態、などの把握を、経済学的視点で行った論文を発表(国際保健医療学会誌)。 アジアについて、フィリピンの高齢者の主観的健康感に関連する分析を進め、学会発表、論文化(投稿中)。家族介護者の実態把握および支援をテーマに、アジアの家族介護の状況調査を開始(3-2章)。SAGEデータから、インドネシアの高齢者関連のデータ入手、インドネシアの介護者のうつとの関連要因を調査(3-3章)。南米について、チリ国の国レベルの公開データを政府から入手。家族介護者の実態-とくに鬱状態に焦点をあてた分析を行い論文化した(3-4章)。
4.国際的学際ネットワークの整備
2年度より、筑波大学内の拠点づくりの中でつくばグローバルエイジングセンター(Center for Global Aging Tsukuba:CGAT) 開設準備室をたちあげた(4章)。米国でエイジングセンターとの連携体制を図った(3-2章)。第28回日本国際保健医療学会学術集会にて、市民公開講座「沖縄から世界の健康長寿社会を考える:日本の高齢化と幸福 日本の公的介護保険政策からの教訓 そして沖縄では?」及び自由集会を開催し、UNFPA所長、社会保障人口問題研究所部長などを招聘、参加者と活発な議論を展開、ネットワークを拡大した。
結論
高齢者ケアには、各国の異なる社会経済背景などに即した制度や政策の整備が必要であることは勿論であるが、家族介護や地域のインフォーマルケアが重要な役割を担っていることが洗い出された。これを各国の政策や制度にどう取り組むかが今後のテーマになる。介護保険制度または何らかの介護システム、サービスを導入しようと検討している国々に対し、日本の介護保険制度導入、制度改革の経緯、教訓、成果の共有化は、高齢化先進国としての責務である。同時に、続く国に学ぶことも多く、データ整備はむしろ進んでいる点もある。日本の研究をシステム整備も含め推進しつつ、国境を越えた成果を目指したい。

公開日・更新日

公開日
2015-03-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201303002Z