医療給付制度への応用のための医療経済評価における技術的課題に関する研究

文献情報

文献番号
201301028A
報告書区分
総括
研究課題名
医療給付制度への応用のための医療経済評価における技術的課題に関する研究
課題番号
H25-政策-指定-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 下妻 晃二郎(立命館大学 生命科学部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部)
  • 坂巻 弘之(名城大学 薬学部)
  • 能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
  • 五十嵐 中(東京大学 大学院薬学系研究科)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
  • 田倉 智之(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 赤沢 学(明治薬科大学 薬学部)
  • 齋藤 信也(岡山大学 大学院保健学研究科)
  • 石田 博(山口大学 医学部附属病院)
  • 福田 治久(九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
諸外国においては、医療技術評価の一環として効率性の評価を行い、それを公的な医療保障制度に応用している事例が多く見られるようになってきた。我が国では平成24年度に中央社会保険医療協議会の下に「費用対効果評価専門部会」が設置され、経済評価の手法や活用方法等についての議論が始まったところである。経済評価研究の結果を政策に応用するためには、結果が信頼でき、比較検討が可能となるように、経済評価の方法を統一する必要がある。そこで本研究では、諸外国における医療経済評価を政策に応用する際の評価方法および国内でこれまでに検討された医療経済評価の手法に関する議論をもとに、日本版医療経済評価ガイドライン案を開発し、これを実施するための具体的な実施マニュアルを作成することを目的とする。さらに、ガイドライン案に沿った評価を実践していくために、標準的に用いる効果測定ツールの開発および標準的な費用データソースの確立に向けたしくみの開発を行う。
研究方法
(1)平成24年度研究で作成された医療経済評価研究ガイドラインをもとに、具体的な評価にむけた実践マニュアルの開発を行う。開発の際には、諸外国の経済評価ガイドライン、ガイドライン上の各項目に関する理論的・実践的な研究のレビュー、日本での経済評価研究の実施方法に関するレビューを参考とする。(2)経済評価を実施するための標準的な効果指標の開発として質調整生存年(QALY)の算出に用いることが可能なQOL評価ツールの日本語版開発と、一般住民を対象とした調査により、日本での評価値算出のアルゴリズム開発を行う。また、国内で実施されているQOL評価値の測定結果を利用可能な形式でまとめる。(3)標準的な費用データソースとして、レセプトデータの活用にむけたしくみを確立するために、具体的な疾患を取り上げレセプトデータを用いた集計を行い、費用算出にあたって留意すべき点等をまとめる。(4)諸外国における医療技術の経済評価の分析方法や活用方法を調査する。
結果と考察
(1)医療経済評価ガイドラインの精緻化と実践マニュアルの開発
 平成24年度研究で開発された医療経済評価研究ガイドラインに沿った経済評価研究を実施するために、各項目の考え方や具体的な評価を行う際に疑問になると考えられる点について、これに回答する形式での実践マニュアルの開発を行った。特に費用の範囲と測定方法、有効性・安全性の間接比較、QOL値の測定方法、モデルによる分析や感度分析の方法について、重点的にマニュアルの素案作成を行った。主たる論点については議論できたものの、研究者間でコンセンサスを得るためにはさらに検討が必要であると考えられた。
(2)経済評価を実施するための標準的な効果指標の開発
 QALY算出のために世界的に広く用いられているEQ-5Dについて、5項目版(EQ-5D-5L)日本語版を用いた重み付けアルゴリズムを開発するために、一般住民を対象とした健康状態の選好に関する調査を実施した。また、これまでに日本で行われたQOL評価値に関する調査・研究をまとめた。これにより医療経済評価研究におけるQALY算出のためのQOL評価の標準的な手法が確立されていくことに貢献すると思われる。
(3)標準的な費用データソースとして、レセプトデータの活用にむけたしくみの確立
 標準的な費用データのソースとしてレセプトデータを活用するしくみの確立に向けて、レセプトデータベースから「乳癌」「糖尿病」のレセプトを抽出し分析を行うことにより、レセプトを用いた分析の際の留意点について議論した。レセプトを用いる際の課題として、病名の扱いや他疾患での治療による費用の扱い等が挙げられた。これらにより、費用分析に関する標準的な手法が確立されていくことに貢献すると思われる。
(4)諸外国における医療経済評価の活用方法に関する調査
 これまで日本では情報が少なかった国として、ニュージーランドおよび東欧諸国(ハンガリー、ポーランド、チェコ)における医療経済評価の活用方法について調査した。各国では医薬品を中心に経済評価の活用を行っていたが、特にニュージーランドでは、経済評価を基に公的医療保障制度での給付の優先順位をつける方式での活用が行われていた。
結論
 医療経済評価の標準的な方法としての経済評価ガイドラインとその実践マニュアルの論点の整理ができた。また、実践マニュアルでも課題として挙げているQOL評価や標準的な費用データについても、具体的なツールやレセプトデータを用いた検討を実施し、日本での利用可能性や留意点を示した。今後、医療経済評価を政策に応用するためには、手法の標準化は必須であり、本研究において作成されたガイドラインおよびマニュアルはその基礎となるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201301028C

収支報告書

文献番号
201301028Z