文献情報
文献番号
201301027A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の医療資源の必要量の定量とその適正な配分から見た医療評価のあり方に関する研究
課題番号
H25-政策-指定-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学分野)
研究分担者(所属機関)
- 石川 ベンジャミン光一(国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部がん医療費調査室)
- 今中 雄一(京都大学医学研究科)
- 阿南 誠(国立病院機構九州医療センター医療情報管理センター)
- 康永 秀生(東京大学医学部附属病院医療経営政策学講座)
- 藤森 研司(東北大学大学院医学系研究科医学部医療管理学分野)
- 池田 俊也(国際医療福祉大学薬学部薬学科)
- 松田 晋哉(産業医科大学医学部公衆衛生学)
- 堀口 裕正(国立病院機構本部総合研究センター診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療資源の必要量を定量化する試みとして、定額支払制度(DPC/PDPS)において、実施された医療行為をデータベース化し、診断群分類ごとに分析を行っている。そこで本研究の目的を、①外来を含めた急性期医療における医療機能評価手法の開発、②DPCデータの医療現場での利活用を促進する方法を明かとすることとした。
研究方法
収集されたDPCデータを用いて、平成24年度から設定された新たな病院評価係数、基礎係数の妥当性を検証するとともに、重症度を考慮した評価手法(CCP、Comorbidity Complication Procedure、マトリックス)の適用と検証を行った。併せて、適正なコーディングのあり方の検討、医療の質に関するプロセス指標、アウトカム指標の開発と検証、地域における急性期・亜急性期機能の把握手法の開発を行った。
結果と考察
在院日数および包括範囲医療費の医療資源必要度を指標とした多変量解析等により、手術等のない症例の重症度をより精緻に評価できる可能性が示された。特に心不全、弁膜症、不整脈の相互に関係性の深い疾患群を一群と捉えて、主たる手術および様々な処置と重症度指標を用いた解析により、説明力を上げ(決定係数0.368→0.381)、分類数を3分の1とできる可能性が示された。その他慢性関節リウマチ等でも説明力を維持したまま分類を集約できる可能性が示された。これらの結果は手術・処置等の視点を優先させた分類構築の有用性を示すものと考えられた。
DPC診断群分類は、手術・処置等に対して傷病名分類を上位に位置づける分類体系を持ち、我が国の実地臨床への親和性の高さやDPC分類の様々な医療評価への応用可能性を特徴としている。一方、医療資源必要度への影響は、実際に提供された手術・処置等が大きい。したがって、CCPマトリックスの最も重要な目的は、妥当な分類数を維持しつつ、傷病名分類優位のDPC分類体系において手術・処置優位の支払手法を導入することであるといえる。
CCPマトリックスの基本的な手法は、DPC分類を一定のルールによって集約することであり、言い換えれば、DPC分類と支払分類の多対1の対応表を作成することに他ならない。慢性関節リウマチ等の分析結果は、手術・処置等1以下の階層で対応表を適用できる可能性を示し、心不全等の分析結果は、傷病名分類を含めた全階層でこの対応表を適用する意義を示すものといえる。この考え方を軸に、脳卒中、ニューロパチー、肺炎、COPD、虚血性心疾患、糖尿病、前立腺疾患、妊娠・分娩、先天奇形、悪性腫瘍治療等で検討を進めた。
がん化学療法等高額薬剤の評価については、体系的な化学療法ポートフォリオを作成し、我が国の化学療法の実態とそれらの包括評価のあり方を示す総覧的な資料を作成した。また、入院初日に高額診療報酬を一括して支払う「一入院包括支払」方式について、その適用が可能な分類をがんの化学療法、検査、定型的な治療等の中から選出し、診療報酬改定の資料を作成した。
機能評価係数の見直しに関しては、病院指標の作成と公開方法について引き続いて検討し、実際の分析結果のホームページへの提示方法などとその課題を示した。
医療の質の評価手法の開発では、DPCデータの臨床疫学研究への応用手法を開発し、複数の専門雑誌に成果を発表した。
地域における病院機能の評価に関して、患者住所地情報を用いて地理情報システム(GIS)を利用して詳細な検討を行った。個別病院の診療圏の可視化、地域内の病院の空間配置の可視化などを明らかとした。
診療報酬支払制度の適正な運用に必要なDPC情報の質の確保に関して、医療資源病名、副傷病等の適正な選択、記録方法を明らかとするためにDPC傷病名コーディングテキストを作成し、平成26年に公表することとなった。
DPCデータの研究目的での利活用の方法に関しては、試行的なDPCデータ申請利用に基づいて検討を行った。個票データと集計データそれぞれを用いた分析手法の課題、DPCデータの情報量の多さに起因するデータの匿名化の課題、データの研究利用の手法などについて検討した。特に匿名性に関しては、稀少傷病、稀少手術、個別医療機関情報等からの個人特定の可能性を完全に排除することが困難で有り、個票データの利用には一定の制限が必要であると考えられた。一方、臨床疫学研究等においては、匿名化された個票データを安全かつ効率的に分析することが可能な環境として、研究用データ分析センター等を整備する必要があると考えられた。
DPC診断群分類は、手術・処置等に対して傷病名分類を上位に位置づける分類体系を持ち、我が国の実地臨床への親和性の高さやDPC分類の様々な医療評価への応用可能性を特徴としている。一方、医療資源必要度への影響は、実際に提供された手術・処置等が大きい。したがって、CCPマトリックスの最も重要な目的は、妥当な分類数を維持しつつ、傷病名分類優位のDPC分類体系において手術・処置優位の支払手法を導入することであるといえる。
CCPマトリックスの基本的な手法は、DPC分類を一定のルールによって集約することであり、言い換えれば、DPC分類と支払分類の多対1の対応表を作成することに他ならない。慢性関節リウマチ等の分析結果は、手術・処置等1以下の階層で対応表を適用できる可能性を示し、心不全等の分析結果は、傷病名分類を含めた全階層でこの対応表を適用する意義を示すものといえる。この考え方を軸に、脳卒中、ニューロパチー、肺炎、COPD、虚血性心疾患、糖尿病、前立腺疾患、妊娠・分娩、先天奇形、悪性腫瘍治療等で検討を進めた。
がん化学療法等高額薬剤の評価については、体系的な化学療法ポートフォリオを作成し、我が国の化学療法の実態とそれらの包括評価のあり方を示す総覧的な資料を作成した。また、入院初日に高額診療報酬を一括して支払う「一入院包括支払」方式について、その適用が可能な分類をがんの化学療法、検査、定型的な治療等の中から選出し、診療報酬改定の資料を作成した。
機能評価係数の見直しに関しては、病院指標の作成と公開方法について引き続いて検討し、実際の分析結果のホームページへの提示方法などとその課題を示した。
医療の質の評価手法の開発では、DPCデータの臨床疫学研究への応用手法を開発し、複数の専門雑誌に成果を発表した。
地域における病院機能の評価に関して、患者住所地情報を用いて地理情報システム(GIS)を利用して詳細な検討を行った。個別病院の診療圏の可視化、地域内の病院の空間配置の可視化などを明らかとした。
診療報酬支払制度の適正な運用に必要なDPC情報の質の確保に関して、医療資源病名、副傷病等の適正な選択、記録方法を明らかとするためにDPC傷病名コーディングテキストを作成し、平成26年に公表することとなった。
DPCデータの研究目的での利活用の方法に関しては、試行的なDPCデータ申請利用に基づいて検討を行った。個票データと集計データそれぞれを用いた分析手法の課題、DPCデータの情報量の多さに起因するデータの匿名化の課題、データの研究利用の手法などについて検討した。特に匿名性に関しては、稀少傷病、稀少手術、個別医療機関情報等からの個人特定の可能性を完全に排除することが困難で有り、個票データの利用には一定の制限が必要であると考えられた。一方、臨床疫学研究等においては、匿名化された個票データを安全かつ効率的に分析することが可能な環境として、研究用データ分析センター等を整備する必要があると考えられた。
結論
本研究は、医療環境の変化に対応するDPC診断群分類の今後の維持・整備手法を明らかとし、次期以降の改訂手法の基盤を提供すると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2014-08-27
更新日
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