難治性がんに対するがん幹細胞標的ペプチドワクチン療法の開発

文献情報

文献番号
201239007A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性がんに対するがん幹細胞標的ペプチドワクチン療法の開発
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 昇志(札幌医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥越 俊彦(札幌医科大学 医学部)
  • 平田 公一(札幌医科大学 医学部)
  • 水口 徹(札幌医科大学 医学部)
  • 今井 浩三(東京大学 医科学研究所)
  • 釣田 義一郎(東京大学 医科学研究所)
  • 瀬谷 司(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 松本 美佐子(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 田村 保明(札幌医科大学 医学部)
  • 廣橋 良彦(札幌医科大学 医学部)
  • 杉田 修(北海道大学 探索医療教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
133,334,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、がん患者体内にがん幹細胞障害性T細胞を誘導し、難治性固形がんの縮小および無増悪生存期間の延長が期待できる新規がん治療ペプチドワクチンの製剤化を目的とする。具体的には、がん幹細胞に発現するHLA-A24拘束性の2種類の抗原ペプチドSVN-2BとOR7C1-A24それぞれに関して、進行膵臓がん(SVN-2B)と進行大腸がん(OR7C1-A24)の患者を対象に第1相および前期第2相臨床試験を実施し、製薬企業主導の治験につなげることを目指す。
研究方法
 本研究組織では次に挙げる(1)~(4)の課題に対し分担研究組織で取り組む。
1. SVN-2Bペプチドワクチンの医師主導治験準備と実施
 SVN-2B第1相試験の治験概要
 (1)治験課題名:有効な治療法のない進行消化器がん患者に対するSVN-2B単独投与の第Ⅰ相臨床試験
 (2)主要評価項目:安全性
 ①有害事象
 ②臨床検査値、バイタルサイン、ほか
 (3)副次評価項目:
 ①免疫学的効果:テトラマー, ELISPOT
 ②腫瘍縮小効果:RECISTによる
 (4)治験薬投与方法
 SVN-2BをアジュバントMontanideエマルジョンとして病巣近傍の皮下に投与。1回投与量は、登録後にランダム割付け。
 ①0.3mg群、②1.0mg群、③3.0mg群、各群とも2週間間隔で4回投与。
 (5)試験方法
 単施設非盲検無作為化比較試験
 (6)対象患者と目標症例数
 HLA-A*2402を有する進行消化器がん、胆肝膵臓がん患者
 安全性かつ免疫学的評価可能例数として計15例(1群5例、計3群)
 (7)症例登録期間
 H24.8.30よりH25.9.30
2. OR7C1ペプチドワクチンの臨床試験準備
 H23年度に引き続き、臨床試験の準備を実施する。
3. ペプチドワクチンのサロゲートマーカーおよび効果予測マーカー探索解析
4. ペプチドワクチンのアジュバント開発
結果と考察
(1) SVN-2Bペプチドワクチンの医師主導治験準備と実施
1. PMDA治験前対面助言(6/26)
2. 札幌医大IRB審査(7/18)
3. 治験届け提出(7/20)
4. 第1相試験開始(8/30)
 H24.8.30より患者登録を開始。H25.4.24現在、20例が登録され、原病悪化による中止例5例、終了11例、試験継続中4例。
①安全性評価(H25.4.25時点)
 登録20例中、本薬剤と因果関係を示すGrade 3以上の重篤な有害事象は1例も認めず、Grade 2以下の有害事象(発熱、投与局所硬結)を3例に認めるにとどまる。
②有効性評価(H25.4.25時点)
 11例中、腫瘍マーカーは2例で半減し、RECISTによる画像評価ではPR 1例、SD 5例、PD 5例であった。テトラマー解析では8例にCTLの誘導が認められた。
 H25.5.30に最終症例(15症例目,#138)の評価を終え、本治験を完遂できる見込みである。
5. 製薬企業との連携会議(10/31, 12/4)
 後期第2相試験以後は製薬会社による企業治験に移行すべく、国内製薬メーカーとの連携会議を実施。第2相試験に向けてプロトコル案を策定した。
6. PMDA薬事戦略事前相談(12/12)
第2相試験に向けて事前相談を実施。
7. 効果安全性評価委員会(3/25)
(2) OR7C1-A24ペプチドワクチンの臨床研究準備と実施
1. 薬理薬効試験
 OR7C1-A24ペプチドを用いて、大腸がん患者末梢血リンパ球からがん幹細胞傷害性ペプチド特異的CTLを誘導した。
2. 安全性(毒性)試験
 OR7C1-A24ペプチドをマウスに皮下投与し、反復毒性試験と局所刺激性試験を実施。毒性が認められないことを確認した。
3. 抗原発現評価系の確立
 抗OR7C1抗体を用いて大腸がん組織を免疫染色し、抗原蛋白の発現を検出することに成功。抗原発現評価系を確立した。
(3) ペプチドワクチンのサロゲートマーカーおよび効果予測マーカー探索解析
 ホルマリン固定組織のHLA class I発現を染色する標準キットおよび染色プロトコルを作成。染色結果の評価方法の標準化を実施した。
(4) ペプチドワクチンのアジュバント開発
 炎症を惹起することなく最も効果的にType Iインターフェロンを誘導できる分子構造を同定し、動物モデルを用いて安全性の評価を実施した。
結論
 本年度、着実に医師主導治験(第1相試験)を遂行し、5月末には完了見込みとなった。H25年度には可及的速やかに第2相試験を開始する予定である。第1相試験の結果をふまえ、効果的な第2相試験のデザインを考える必要がある。また、企業主導治験に橋渡しをするためにも、製薬企業との連携が今後ますます重要となる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201239007Z