文献情報
文献番号
201237006A
報告書区分
総括
研究課題名
水道における水質リスク評価および管理に関する総合研究
課題番号
H22-健危-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 秋葉 道宏(国立保健医療科学院)
- 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 伊藤 禎彦(京都大学 大学院地球環境学堂)
- 伊藤 雅喜(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 片山 浩之(東京大学 大学院工学系研究科)
- 杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
- 西村 哲治(帝京平成大学 薬学部薬学科)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
- 平田 睦子(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
- 松下 拓(北海道大学 大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
38,096,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
水道水質基準の逐次見直し等に資すべき化学物質や消毒副生成物,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,暴露評価とリスク評価に関する研究を行い,水道水質基準の逐次改正等に資するとともに,水源から給水栓に至るまでの水質リスク管理のあり方に関して提言を行う.
研究方法
無機物質,一般的な有機物,微生物,消毒副生成物,農薬,寄与率,リスク評価の7課題群-研究分科会を構築し,研究分担者11名の他に41もの水道事業体や研究機関などから76名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
クリプトスポリジウムの遺伝子検出法の検証を新たな事業体で行い適用性を確認した.また,ヒト感染の可能性のあるジアルジアの遺伝子型の存在を確認した.養豚業におけるオーシストの主排出源は育成豚舎であると思われた.顕鏡検査における低退色性の蛍光抗体色素の有効性を確認した.従属栄養細菌の活用例を示した.凝集MF処理では4-Log以上のノロウイルスの除去率が得られることをimmuno-PCRを用いたVLP実験で示した.RNase処理RT-PCR法により,塩素消毒後の大腸菌ファージQβの生残数を定量した.耐塩素性病原微生物の濃縮ろ過における汚染を回避する方法として粉体吸引ろ過方式の実用性を示した.
高塩基度PAC等の残留アルミニウム対策の効果と課題を整理した.一部の給水装置からの200μg/L以上の濃度のニッケルの浸出が認められ,めっきの回り込みに関する製品毎のばらつきが原因と考察された.懸濁質によってセシウムの吸着には差があることが明らかとなった.
アニリン,1,2,3-トリクロロベンゼン,ニトリロ三酢酸の分析法を設定し,目標値と比べ非常に低濃度の存在実態を明らかにした.医薬品類は水道原水から~百数十ng/L,浄水ではヨウ素系X線造影剤のみが~数十ng/Lで検出された.タミフルとその活性代謝物であるOCは通常の浄水処理では除去しきれないことが示された.
ヘキサメチレンテトラミンはオゾン処理で分解され,後塩素処理によるホルムアルデヒド生成能もほぼ失われることを示した.メチルアミノ基を有する3級アミンは塩素処理によるホルムアルデヒド生成率が量論的関係に基づいた推測値と一致する物質群と,推測値よりも低いグループに分かれること,また,3級以外のアミン類からの生成能は低いことを確認した.淀川水系の浄水中NDMA濃度は冬季には高い傾向にあるが,過去数年間は減少傾向にある.LC/MSによるハロ酢酸分析の有効性を確認した.浄水中からジクロロヨードメタン等を最大数100 ng/Lの濃度範囲で検出した.
水道統計を元にした解析では,全対象1554水道事業の内,約半数が農薬を測定していたが,1回/年,102農薬全てを測定している場合が最も多かった.農薬分類見直しに関する昨年の成果に実態調査結果等を考慮して,新分類として対象農薬リスト掲載農薬類120,要検討農薬16,除外農薬14が抽出された.対象農薬リスト掲載農薬類への追加が予定されている農薬類の一部には純度が低いまたは確認できない等の課題があることが分かった.
曝露経路による体内吸収率の違いを補正した経口換算のクロロホルムの総曝露量の分布を算定した.分布の95%値=TDIの条件では飲料水割当率が38 %と算定された.確率分布関数を適用し,ハロ酢酸類の飲用寄与率の推奨値を計算し,同時に不確実性が大きいことを示した.水道水由来の摂水量は,平均値で夏1159 mL, 冬1124 mL,95%では夏2400, 冬2200 mLであった.アンケート調査で,水質基準超が数日程度あれば生活用水確保のために断水を望まない傾向と,基準を満たさないことが健康影響に直結するのではという不安などが示唆された.
化学物質の複合暴露に関する情報をまとめた.パーフルオロカルボン酸/スルホン酸類の毒性に関しては,perfluorooctanoic acid及びperfluorooctanesulfonic acid以外の,特に炭素数が12を超える物質の情報が不足していた.パーフルオロカルボン酸類の毒性強度の炭素鎖長依存性の要因を明らかにすることを目的として分析法を開発し,perfluorooctadecanoic acid (PFOcDA)を投与したラットの保存血清中からPFOcDA以外のパーフルオロ化合物 (PFCs)と分岐鎖PFCsを検出した.
高塩基度PAC等の残留アルミニウム対策の効果と課題を整理した.一部の給水装置からの200μg/L以上の濃度のニッケルの浸出が認められ,めっきの回り込みに関する製品毎のばらつきが原因と考察された.懸濁質によってセシウムの吸着には差があることが明らかとなった.
アニリン,1,2,3-トリクロロベンゼン,ニトリロ三酢酸の分析法を設定し,目標値と比べ非常に低濃度の存在実態を明らかにした.医薬品類は水道原水から~百数十ng/L,浄水ではヨウ素系X線造影剤のみが~数十ng/Lで検出された.タミフルとその活性代謝物であるOCは通常の浄水処理では除去しきれないことが示された.
ヘキサメチレンテトラミンはオゾン処理で分解され,後塩素処理によるホルムアルデヒド生成能もほぼ失われることを示した.メチルアミノ基を有する3級アミンは塩素処理によるホルムアルデヒド生成率が量論的関係に基づいた推測値と一致する物質群と,推測値よりも低いグループに分かれること,また,3級以外のアミン類からの生成能は低いことを確認した.淀川水系の浄水中NDMA濃度は冬季には高い傾向にあるが,過去数年間は減少傾向にある.LC/MSによるハロ酢酸分析の有効性を確認した.浄水中からジクロロヨードメタン等を最大数100 ng/Lの濃度範囲で検出した.
水道統計を元にした解析では,全対象1554水道事業の内,約半数が農薬を測定していたが,1回/年,102農薬全てを測定している場合が最も多かった.農薬分類見直しに関する昨年の成果に実態調査結果等を考慮して,新分類として対象農薬リスト掲載農薬類120,要検討農薬16,除外農薬14が抽出された.対象農薬リスト掲載農薬類への追加が予定されている農薬類の一部には純度が低いまたは確認できない等の課題があることが分かった.
曝露経路による体内吸収率の違いを補正した経口換算のクロロホルムの総曝露量の分布を算定した.分布の95%値=TDIの条件では飲料水割当率が38 %と算定された.確率分布関数を適用し,ハロ酢酸類の飲用寄与率の推奨値を計算し,同時に不確実性が大きいことを示した.水道水由来の摂水量は,平均値で夏1159 mL, 冬1124 mL,95%では夏2400, 冬2200 mLであった.アンケート調査で,水質基準超が数日程度あれば生活用水確保のために断水を望まない傾向と,基準を満たさないことが健康影響に直結するのではという不安などが示唆された.
化学物質の複合暴露に関する情報をまとめた.パーフルオロカルボン酸/スルホン酸類の毒性に関しては,perfluorooctanoic acid及びperfluorooctanesulfonic acid以外の,特に炭素数が12を超える物質の情報が不足していた.パーフルオロカルボン酸類の毒性強度の炭素鎖長依存性の要因を明らかにすることを目的として分析法を開発し,perfluorooctadecanoic acid (PFOcDA)を投与したラットの保存血清中からPFOcDA以外のパーフルオロ化合物 (PFCs)と分岐鎖PFCsを検出した.
結論
水道原水の状況,水道水に含まれる物質の検出方法,浄水過程における低減化法,毒性情報,暴露量への寄与など水道水質基準の基礎となる多数の知見が得られた。主要な知見は「結果と考察」のとおりである.
公開日・更新日
公開日
2013-05-28
更新日
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