化学物質の安全性と発がん性リスク評価のための短・中期バイオアッセイ系の開発

文献情報

文献番号
201236015A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の安全性と発がん性リスク評価のための短・中期バイオアッセイ系の開発
課題番号
H23-化学-指定-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉見 直己(琉球大学 大学院医学研究科・腫瘍病理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 智(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 塚本 徹哉(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 久野 壽也(岐阜大学 大学院医学研究科)
  • 魏 民(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 横平 政直(香川大学 医学研究院 )
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 戸塚 ゆ加里(国立がん研究センター研究所 発がんシステム研究分野)
  • 伊吹 裕子(静岡県立大学 環境科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、短・中期発がん予測バイオアッセイ系を開発し、発がん試験ガイドライン設定の方向性への提唱が目的である。既にヨーロッパ・ユーロ圏の諸国での研究施設では、法律により動物実験系ができないため、代替実験法の開発が急がれるが、ヒトに対する発がん影響を反映できる代替法は現在のところないため、動物モデルでの評価法は未だに必要不可欠であり、動物試験に対する3R(代替法活用、使用数削減、苦痛軽減)の原則を考慮した短・中期での各臓器別の発がん試験の開発が望まれる。すなわち、従来の判定である肉眼的な腫瘍形成に関わらず、腫瘍形成を判定し得る病理組織学的な評価での試験法の開発を目指す。また、多施設での試験動物の共有化のシステム構築による動物数の削減化に関しても検討する。
研究方法
主に臓器別に中・短期バイオアッセイ系の確立のために、胃、大腸、肝臓、肺臓、膀胱および前立腺に対する特異的な発がん物質を利用して、早期に病理形態的に観察される病変を誘導させ、その特徴を検討する。各分担者により、モデル系は異なるため、ここではその誘導方法の詳細は省略するが、20週までの短期での動物実験計画での遂行での発がん性試験を実施する。また、in vitro発がん性予測試験として網羅的なDNA付加体解析法とヒストン修飾を指標とした解析法を利用した新規検索マーカーの検討を行う。
結果と考察
大腸・肺臓に関しては20週間以内での早期の病変を組織学的に確認することで、発がん予測が可能と思われる。実際、大腸では、従前から指摘されている前がん病変と考えられているACFやMDFは、早期腫瘍性病変として病理組織診断が可能であると考えられた。特に10週のMDFの判定では、腫瘍性と診断される一致率が90%を越えており、発がん性試験として利用できると思われた。また、肺臓では、ラットの過形成性病変における Napsin A の高発現は将来の腫瘍化を示唆することが明らかになった。早期肺病変としての可逆性過形成と腫瘍性過形成の鑑別が可能であり、肺動物モデル試験系において有用なマーカーと考えられた。こうした早期病変の試験方法の確立により、動物数の数と実験期間の減少が可能となり、動物実験の代替法として活用できると思われる。肝臓に関しては、gpt delta ラットを用いた中期肝発がん性試験法は化学物質の肝発がん性とin vivo変異原性を包括的に検出できる発がんリスク評価法として有用であることが考えられた。また、本年度、社会的な要請もあり、1,2-ジクロロプロパンの肝胆道系に及ぼす影響の検討を行ったが、強い肝毒性が認められたものの、明確な胆管上皮傷害は認められなかった。他臓器に関しては、検索バイオマーカーの新規発見のために、DNA付加体検索とヒストン修飾酵素を指標にその変動の有無を調べており、その結果を踏まえて、特に、2重鎖切断のマーカーであるγ-H2AXを膀胱及び前立腺で検討している。
結論
動物を供する発がん試験における代替法の確立は化学物質のヒトへの安全性に対して重要である。しかし、動物実験に対する3R(代替法活用、使用数削減、苦痛軽減)の原則は決して動物を使用しないということではないため、今回の研究目標はその精神に基づいてヒトとしての生体に近い動物での発がんすなわち、腫瘍形成の有無を推測できるシステムの構築の確立を目指すものと位置づけることができ、その観点で、その可能性を示唆できるものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201236015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,576,000円
(2)補助金確定額
21,576,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,805,263円
人件費・謝金 261,771円
旅費 1,472,719円
その他 2,060,370円
間接経費 4,976,000円
合計 21,576,123円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-08-12
更新日
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