99mTc製剤の実践的な放射化学的純度測定法の検討

文献情報

文献番号
201235063A
報告書区分
総括
研究課題名
99mTc製剤の実践的な放射化学的純度測定法の検討
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-医薬-若手-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
横塚 記代(国際医療福祉大学 保健医療学部放射線・情報科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 冨沢 比呂之(国際医療福祉大学 保健医療学部放射線・情報科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の対象とした99mTc-tetrofosminの放射化学的純度(Radio Chemical Purity; RCP)測定はJRIA資料によると2種類のクロマトグラフィを行う必要があり、他の99mTc製剤に比べて手間がかかる。さらに、検査での使用頻度も比較的多いことから、簡便かつ迅速なRCP測定法が必要となる。そのため、99mTc-tetrofosminを対象に迅速かつ誰でも簡便に実施できるRCP測定法をすることを目的とした。
研究方法
2種類のクロマトグラフィを方法1と方法2とし、それぞれに用いる材料で実施時間が最も短く、従来よりも精度が下がらない組合せを検証した。検討した材料はろ紙や薄層板および展開溶媒であり、種類や配分量などを変えてクロマトグラフィを行った。さらに、試料のスポット量と分離時間(展開時間)の関係を調べ、実用的なスポット量と展開時間を明らかにした。
分離した化合物の放射線量測定の工程では、NaI(Tl)シンチレーションカメラによる撮像条件として、マトリックス数と収集時間の関係を調べ、RCP測定に適する条件を検討した。RCP値の算出は、日本アイソトープ協会発行の参考資料の算出式を基に3種類のRCP値を算出した。
結果と考察
クロマトグラフィの方法1では、材料に支持体がガラスのシリカゲル薄層板とジクロロメタン:アセトン=1:1の混合液の組合せを用いた方法が最も早く、スポット量が2μℓの時は3分で展開が可能であった。展開溶媒はアセトンの配分量が少なく、ジクロロメタンの配分量が多いほど標識化合物および99mTcO4-の移動率が短くなることが分かった。ジクロロメタンの配分量が多い従来の展開溶媒では、標識化合物がスポットした位置(原点)からあまり移動しないために原点付近の関心領域の設定が困難であった。そのため、関心領域の設定に問題がなく、標識化合物と99mTcO4-のスポットが十分な距離で分離する、1:1の配分が適していると考えられる。
クロマトグラフィの方法2では、材料に支持体がアルミニウムのセルロース薄層板と80%アセトニトリル水溶液の組合せを用いた方法が最も早く、スポット量が2μℓの時は5分で展開が可能であった。従来法のろ紙を用いるよりも支持体のある薄層板を用いた方が、支持体の効果で展開溶媒の滑りが良くなり、迅速な展開が可能になったと考えられる。また、溶媒の水分量を減らしたことも短時間化をもたらした要因であると考える。
 マトリックス数が64×64の画像ではピクセルサイズが大きすぎて、精度よく関心領域を設定できるほどの分解能がなかった。標識化合物スポットROI内の平均カウント数が100counts/pixel以上となる条件は、マトリックス数が128×128、収集時間が方法1で3分以上、方法2で2分以上であった。方法1と方法2を同時に収集する場合には、3分以上の収集時間に設定すればよいことが確認できた。本法と従来の法でRCPを算出した結果およびT検定にて両者の有意差を調べた結果、算出した3種類のRCP値のうち1種類を除いた2種類は有意差がなかった。有意差ありとなったRCP値は、上記で問題を示した原点付近の放射線量を含む計算式であったため、従来の方法のRCP値が低値となった。撮像画面で確認しても本法の展開溶媒の方が分離に優れ、放射線量測定に影響をきたさないことが新たに分かった。
結論
本法で見出したクロマトグラフィ材料の組合せにより、従来の方法よりも方法①で約1/5、方法②で約1/24の時間に短縮することができた。さらに、分離に優れた溶媒を見出したことにより、放射能測定の簡便性や精度の向上が期待できる。放射線量測定の工程では、NaI(Tl)シンチレーションカメラでの収集時間とマトリックス数の指標を示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2014-06-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201235063C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来の方法は精度を重視して作成されたため、専門知識や経験、時間や手間を要する方法であった。本研究によって、99mTc-tetrofosminの放射化学的純度(Radio Chemical Purity; RCP)を迅速かつ簡便に測定できる方法を見出すことができた。特に、展開溶媒の検討により、従来よりも精度を増す分離が可能になった。
臨床的観点からの成果
臨床現場で実施することを想定し、核医学検査設備を有する施設の全てが保有しているNaI(Tl)シンチレーションカメラで放射線量を測定するために適したクロマトグラフィおよび収集の条件を検討した。精度と迅速性を増したことで、現状の設備で測定できる実用性に優れた方法を提案できたといえる。
ガイドライン等の開発
材料の保存状況の影響などの今年度の研究で不足している検討を進め、平成23年度に作成したマニュアルに当該年度の方法も追加する予定である。その他の主要な製剤においても同様の研究を進める予定である。現在、「放射性医薬品取り扱いガイドライン」で推奨されているRCP測定の方法は従来の方法であるため、本法が推奨されるように更なる検討を進めていく。
その他行政的観点からの成果
99mTc製剤の調製や品質管理の施行者は、PET製剤のように職種の特定がなされていない。本邦の現状では、医師、薬剤師、診療放射線技師の3つの職種が携わる場合が多い。職種に関係なく、また患者投与前に、臨床現場での放射性医薬品の品質管理を推進していくためには、実用性に優れた本法が適応しやすいと考えられる。
その他のインパクト
2012年7月に投稿された論文で「論文奨励賞」を受賞した。
放射性同位元素を体内に投与する核医学検査においては、放射性医薬品の調製に不具合が生じた場合、検査精度の低下ばかりではなく、再検査による無用な被曝を与えてしまう可能性がある。本研究の成果を学会や論文で発表することで、放射性医薬品の品質管理の重要性と必要性を認識させる効果があると思われる。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
横塚 記代、冨沢 比呂之、佐々木 博
99mTc標識放射性医薬品の迅速かつ簡便な放射化学的純度測定法に関する検討
RADIOISOTOPES , 61 (7) , 353-364  (2012)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235063Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,950,000円
(2)補助金確定額
1,950,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,469,020円
人件費・謝金 0円
旅費 20,980円
その他 10,000円
間接経費 450,000円
合計 1,950,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2014-06-10
更新日
-