行動科学に基づく対象者別リスクコミュニケーションの手法の開発と評価

文献情報

文献番号
201234027A
報告書区分
総括
研究課題名
行動科学に基づく対象者別リスクコミュニケーションの手法の開発と評価
課題番号
H23-食品-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 肇子(慶應義塾大学 商学部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹村 和久(早稲田大学 文学学術院)
  • 楠見 孝(京都大学 教育学研究科)
  • 花尾 由香里(東京富士大学 経営学部 )
  • 杉谷 陽子(上智大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,022,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般国民を対象として、行動科学に基づき、リスクコミュニケーションが促進される手法の開発を行い、実施した上で手法の評価を行う。開発にあたっては、国民の年代や性別、価値観、ライフスタイルなどの要因を考慮してセグメント化を行い、それぞれの対象別に重要な食品安全に関する情報の検討も行う。成果として、教育ツールと、それを活用可能な実施マニュアルを併せて提出する。
研究方法
本研究の主たる成果物である手法の開発のために以下の6つの課題を行う。
(1)リスクコミュニケーションの手法と理論の整理
(2)対象者の調査
(3)提供情報の検討
(4)リスクコミニケーションツールの作成
(5)WEB上での情報提供の検討
(6)手法の効果の測定
結果と考察
(1)消費者の特性によって,リスク認知の程度や参加意識が異なることが明らかになった。具体的には3つのクラスターに分けられた。クラスター1(高感度層)は、全体の約44%であり、クラスター2(中感度層)は、43.4%であった。クラスター3(低感度層)は、12.6%であった。
(2) 牛肉の生食についてのリスク認知が、保健所からの異なるタイプの広報資料によって、いかに変化するかを実験的に検討した。その結果、参加者の食品リスクに関する専門的知識がリスク認知を高めること、広報資料はリスク認知と高めること、3タイプの広報資料は、詳しさとわかりやすさに対応した効果を持つことが明らかになった。
(3)食品のリスク(魚毒)についての教材を作成した。また、23年度に作成した説明会用のパワーポイント資料を地方自治体の関係部局に提供した上で、改良を進めた。
(4)オンライン・ディスカッションを通じて、食品リスク認知がどのように変化したかについて、パイロットスタディを実施した。具体的には、1週間および1時間のオンライン・ディスカッションが、食品リスク認知にどう影響を与えるのかを検討した。牛肉の生食については、食中毒事件が世間を騒がせたこともあり、多くの消費者が関心を持って新聞記事を読んだり、ディスカッションに参加していた様子が観察された。興味深いのは、1時間のディスカッションでは牛肉の生食意向が上昇するのに対し、1時間のディスカッションでは、牛肉の生食に対する抵抗感が増していたという点である。ディスカッションで他者の意見に触れることで、牛の生食がより身近に感じられることで、食べてもよいという感覚が上昇したという予測ができる。一方で、1週間時間をかけて吟味すると、問題が身近になっただけではなく、様々な情報を吟味する余裕があったので、結果として慎重な結論に達するというようなプロセスが生じたのかもしれない。
(5)アイカメラを用いた研究では、一方は食品安全に関してリスクがあるが致命的なリスクは無い選択肢と、もう一方は致命的なリスクがある選択肢の二つのうちどちらかを選択しなければならない状況におかれた場合、人々がどのような意思決定をするのかを明らかにすることを検討した。結果から、実験参加者は、致命的なリスクを負わない食品Aよりも致命的なリスクを負う食品Bを選択した者は、特に「中国産」という情報をより注視していたことがわかった。食品ごとに、よりリスクの低い決定ができた者とできなかった者の注視回数の差がある程度認められたということは、食品安全リスクに関する情報の提示の仕方によって、安全な選択が促進可能なことを示唆していると考えられた。
結論
当初の計画通り研究が進行した。来年度は、本年度の研究結果を基に、対象者別の効果的な手法について、教材や手法の評価をさらに進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201234027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
6,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 166,475円
人件費・謝金 760,950円
旅費 911,590円
その他 3,183,679円
間接経費 1,478,000円
合計 6,500,694円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
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