被災地における地域医療情報連携体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号

201232057A

報告書区分

総括

研究課題名

被災地における地域医療情報連携体制のあり方に関する研究

課題番号

H24-医療-指定-050

研究年度

平成24(2012)年度

研究代表者(所属機関)

田中　博(東京医科歯科大学　難治疾患研究所生命情報学)

研究分担者(所属機関)

大江　和彦(東京大学医学部附属病院企画情報運営部医療情報学)
冨永　悌二(東北大学脳神経外科)
八重樫　伸生(東北大学産婦人科)
武藤　真祐(医療法人社団　鉄祐会　祐ホームクリニック)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金健康安全確保総合研究地域医療基盤開発推進研究

研究開始年度

平成24(2012)年度

研究終了予定年度

平成25(2013)年度

研究費

7,000,000円

研究者交替、所属機関変更

-

研究報告書（概要版）

研究目的

被災地における地域医療情報システムはどうあるべきか。本研究では、「災害に強い地域医療情報システム」について、その必要な条件や具体的形態を現実の被災地で進行する「地域医療の情報連携基盤」構築事業を対象として、各種指標による評価および将来展開への支援を通して、その規範となるあり方を究明する。
本研究は行政と密接に連携し、行政課題を担っている。厚生労働省は平成23年度3次補正で被災３県に対し地域医療再生基金への追加予算措置を行なったが、本研究グループは、この厚生労働省３次補正予算に盛り込まれている「医療機関相互の情報連携基盤」を整備する事業について、有効に基金が使用され、災害に強靭な地域医療情報連携が構築されつつあるか、各種の指標に基いた評価によってその進行状況を検証すると共に、将来に向けて助言・支援する。また、他省庁予算による同様の事業についても、諸省庁の情報連携基盤構築の事業を俯瞰し、「横串を通す」役割を担う。

研究方法

厚生労働省の３次補正で地域医療再生基金に盛り込まれた「医療機関相互の情報連携基盤構築」事業と総務省の「東北地域医療情報連携基盤構築」事業の一環で構築する宮城県の各医療圏の情報連携基盤の開発支援を行う。さらに、本事業の進行状況を評価して今後の開発に反映させる。
また、構築システムの客観的アウトカム評価項目を作成するとともに、医療関係者・患者等への実感アンケート調査を行い、システム構築後の評価の基礎資料とする。

結果と考察

申請者は、医療IT化に関するこれまでの厚生労働科学研究の成果に基づいて「地域医療福祉情報連携協議会」を平成23年１月に設立し、被災地とくに宮城県に対して県庁関係者や、県医師会を中心とする「みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会」と、「復興後のあるべき地域医療情報基盤」について数回に亙る討議を行ってきた。
その結果、（1）安全な地域での診療情報のクラウド的な保存、（2）診療情報のSS－MIX標準化と医療施設間相互閲覧、（3）診療所へのASP型電子カルテの導入、（4）日常生活圏包括ケアなどの4条件より成る「災害に強い地域医療連携体制」構想に関して共通理解に達した。
そこで、この共通理解の上に立って、どの省庁の事業においても基幹的役割を果たす県医師会、大学病院関係者、被災地病院・診療所、介護関係者の代表者を集めて、上に記した情報連携基盤の事業評価・連携・支援を通して「災害に強靭な地域医療連携」を研究するグループを組織した。
研究は2年に亙り、平成24年度は準備段階が整った宮城県の石巻・気仙沼医療圏での災害強靭型地域医療情報連携システムの構築を指導し、4条件を満たし、かつ地域の特性を反映させた情報連携基盤の構築の進捗を調査し、構築前の各種調査を行なって第2年目の基礎資料とした。
現在石巻気仙沼医療圏のシステム構築は、本科学研究事業の協働のもとに平成25年７月に完了を目指して順調に進展している。また、本システム構築の進捗を評価し、次年度予定している仙台医療圏の情報連携基盤構築の開発に反映させる予定である。
さらに、本研究班でシステム構築後のアウトカム評価指標項目を選定した。次年度以降、本指標により構築システムを実証的に評価していく予定である。

結論

石巻・気仙沼医療圏の情報連携基盤構築について、本研究班で圏域階層（三層）的情報連携基盤の仕様を策定し、既にシステム構築に着手し、現在成功裏に進行している。また、本システム構築の進捗を評価し、次年度予定している仙台医療圏の情報連携基盤構築の開発に反映させる予定である。
さらに、本研究班でシステム構築後のアウトカム評価指標項目を選定した。次年度以降、本指標により構築システムを実証的に評価していく予定である。