慢性疼痛患者に対する統合医療的セルフケアプログラムの構築

文献情報

文献番号
201232033A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性疼痛患者に対する統合医療的セルフケアプログラムの構築
課題番号
H24-医療-一般-026
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 和憲(明治国際医療大学 鍼灸学部 鍼灸学科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 福太郎(九州看護福祉大学 看護福祉学部 鍼灸スポーツ学科)
  • 皆川 陽一(帝京平成大学 ヒューマンケア学部 鍼灸学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 慢性的な痛みを訴えている患者の割合はとても多く、国民の愁訴の上位も痛みに関連した疾患である。その一方で、同じような原因でも早期に回復することもあれば、慢性化することで社会復帰できず、線維筋痛症やCRPSなどの慢性疼痛に移行することもあり、社会問題となっている。このように、痛みは単純に障害の大きさだけで判断することはできず、痛みが慢性化する患者の背景には、心的ストレスや破局的思考の存在などの共通点(イエローフラッグ)があると言われている。そのため、慢性痛の治療では、治療者だけでなく、患者が家庭での積極的に治療を行う患者中心の医療でなくてはならない。
そこで、本研究の目的は、「慢性痛患者、特に線維筋痛症患者に対して、痛みのケアに有効な統合医療的セルフケアを指導するで、症状やQOLの改善が認められるのか」を検討することにあり、①セルフケアに関するガイドライン作成と啓蒙活動、さらには②セルフケアの有効性に関するRCT臨床試験の実施の2点に絞り研究を行うこととし、その前段階として、今年度は予備調査を行うこととする。
研究方法
 本年度は①線維筋痛症患者におけるセルフケアの現状調査のための予備調査、②線維筋痛症に有効なセルフケアの文献調査、③線維筋痛症に対するセルフケアの実施における安全性と有効性の検討の3つに分けて研究を行った。
 ①に関しては、セルフケアの現状を把握するために、過去に患者を対象に行われたアンケート調査参考に、アンケートの原案を作成し、その原案を元に用語や選択肢の妥当性を小規模の患者や被験者で検証した。②に関しては、「線維筋痛症・セルフケア」をキーワードに、国内外のRCT臨床試験93編の中から解析可能であった28編を抽出し、その方法や効果について詳細に解析を行った。また、統合医療の中でセルフケアとして行えそう治療法をピックアップし、それらの論文を調査した。また、③に関しては、①・②の結果を踏まえて、患者が興味を持っていて、尚かつ効果的で安全なセルフケアとして森林浴・運動(ストレッチ・筋トレ)・ヨーガ、ツボケアの4つを抽出し、それらが安全に実施可能であるのか、また効果的であるのかに関して検証を行った。
結果と考察
 ①に関しては、20回以上の改変を経て、アンケートを作成し、予備調査を行った。その結果、セルフケアを実施しているものは多いが、その多くは体調管理として行っており、やり方も様々であった。また、セルフケアを行っているものほど体調に満足しているものが多く、セルフケアが症状のコントロールに有効である可能性が示唆された。
 ②に関しては、論文調査では特に認知行動療法などの患者教育や運動(有酸素運動)に関する報告が多く、その有用性が検証されていた。また、セルフケアとして利用可能な他の方法に関して、統合医療という視点から再度論文検索を行ったところ、ストレッチやツボケア、ヨーガなどのセルフケアが抽出され、論文数は少ないもののRCTなどでその有用性が検証されているものもあった。
 ③に関しては、検証したヨーガ、森林浴、運動、ツボケアに関して、健康上に問題なく、実施することが可能であった。一方、効果に関しては実施した患者では、実施しなかった患者と比べて、痛みやQOLに介入3ヶ月後に改善が認められた。

 
結論
 今回は線維筋痛症患者を対象にセルフケアの現状を把握し、有効なセルフケアは何かを検証したが、実際に患者が実施しているセルフケアと文献などで痛みの軽減に有効性が認められているセルフケアには若干の違いがあった。これは、セルフケアを健康増進や体調管理として行っていることが殆どで、痛みの予防や治療(コントロール)という視点で活用されていないことに他ならない。そのため、本研究の調査で明らかとなった痛みに有効なセルフケアを患者のニーズを考慮した上でマニュアル化し、それがどのような症状や患者(重症度など)に効果的であるかを大規模な臨床試験により検証することで、痛みの予防や治療のためのセルフケアガイドラインを作成する必要があると考えられた。
 また、セルフケアのガイドラインを国民や医療関係者に幅広く啓蒙し、痛みの予防や治療にセルフケアを活用してもらうために、本成果を出版物やインターネットなどを通じて幅広く閲覧可能にすると共に、市民や医療従事者向けのセルフケア講習会を開催することで、セルフケアの認識を高めていくことが大切であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232033Z