消化管を主座とする好酸球性炎症症候群の診断治療法開発、疫学、病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
201231145A
報告書区分
総括
研究課題名
消化管を主座とする好酸球性炎症症候群の診断治療法開発、疫学、病態解明に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-044
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
野村 伊知郎(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー研究部および、生体防御系内科部アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 芳一(島根大学医学部 内科学講座 第二)
  • 千葉 勉(京都大学医学研究科内科学消化器内科学講座)
  • 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器・消化器病学)
  • 山田 佳之(群馬県立小児医療センター アレルギー感染免疫)
  • 大塚 宜一(順天堂大医 小児科学講座)
  • 藤原 武男(国立成育医療研究センター 成育社会医学研究部 )
  • 新井 勝大(国立成育医療研究センター 消化器科)
  • 松本 健治(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化管を主座とする好酸球性炎症症候群(EGID)は、新生児-乳児における食物蛋白誘発胃腸炎(N-FPIES)、幼児-成人における好酸球性食道炎 (EoE)、好酸球性胃腸炎 (EGE) の総称である。EGIDは、各年齢で急激に増加していると考えられている。診断法、治療法が確立していないことから、多くの患者が苦しんでいる。有効な手立てを打てない場合、消化管症状は一生続くと考えられており、QOLの低下は著しい。10%の患者は、重大な合併症を引き起こす。この問題を解決するために、最も有効と考えられる次の6つの課題について研究を行なっている。

1.日本に特有の病型と考えられるN-FPIES, EGEの疾患概念確立
2.医学情報公開により患者を救う;有用な診断治療指針を作成し、インターネットホームページで医学情報を患者、医療者にむけ一般公開することにより、有力な医学情報基盤を作り上げる。
3.精度の高い診断法を開発する;血液、消化管組織、便を使用して診断に寄与する検査法を確立する。
4.治療法を開発する
5.GWASにより遺伝的背景を探索する
6.国際比較研究、システマティックレビュー作成
以下、1-6の課題について述べる。
研究方法
1.これまでのデータベースの解析を進めるとともに、新規オンライン登録システムを作成した。
2.既に診断治療指針はN-FPIES, EoE, EGEそれぞれに公開、全国で使用されている。これを改良するため、班会議において議論を行い、刷新を試みた。
3. 精度の高い診断検査開発;血液を使用して、ケモカインアレイ測定を行った。同じく血液のリンパ球刺激試験による原因食物への反応を見た。増殖反応とともに培養上清サイトカインを測定した。消化管組織については、3万のmRNAを同時に測定するマイクロアレイを行い、新規の分子や疾患特異的発現パターンを特定することを目指している。また、便を使用し、好酸球由来物質の測定を行った。
4.EGEについて、欧米のEoEで有効性が証明されつつある、6-food elimination dietを難治重症患者で行った。
5.GWASについて、疾患コントロールや、健康コントロールとの比較を行うための研究計画を作成した。
6.システマティックレビューによる国際比較;EGIDの症例報告で、病理所見が明確に記載されているものを選定し、レビューを行った。
結果と考察
1.N-FPIESについて欧米との違いをレビューし、4つのクラスターごとの診断治療法を述べた (Nomura et al. Curr Asthma Allergy Rep 2012) 。昨年の報告 (Nomura et al. J Allergy Clin immunol 2011)とあわせて、N-FPIESの初期の疾患概念確立に成功したと考えている 。またEoE, EGEにつき、日本における現時点でベストと言える疾患概念を報告した(Kinoshita et al. J Gastroenterol 2012)。全年齢を同じ形式で登録するためのオンラインシステム設計を完成した。
2.ホームページを通じて全国に診断治療法を発信し続け、同時に様々な質問に答えて患者を救うための援助を行った。全年齢を対象とした診断治療指針改良版も略完成、公開予定である。
3.ケモカインアレイの検査項目を30種類に決定、患者とコントロール血清で測定しデータが蓄積されつつある。リンパ球刺激試験を全国から200検体受け付けて診断治療を助けてきた。リンパ球刺激試験の上清サイトカインを測定し、Th2サイトカインの上昇が確かめられた(Morita et al. J Allergy Clin Immunol 2013)。消化管組織についてはRNA抽出方法の予備検討を行い、各種疾患の消化管組織検体の収集を行った。便EDNの有用性を証明したため、2013年度中に論文執筆を行い、保険収載を求める。
4.治療困難例の多いN-FPIESのクラスター3について、40名の治療を成功させた。EGE治療困難例4名で6種抗原除去が行われ、3名で劇的な改善を得た。
5.十分な匿名化を行いつつ全国の医療機関から検体を収集しGWAS解析を行うシステムの整備を行い、これにもとづいて研究を行う計画を完成させた。
6.600の世界からの報告を調査し、100の適格論文を選出、レビューを行っている。
結論
診断治療が難しいEGIDの本邦での増加に対応して、疾患概念構築、診断治療指針作成、各種検査、治療法開発を行ってきたが、ある程度満足すべきシステムが構築されつつある。しかし、いまだ問題は山積しており、全国で適切な診断治療が行えるよう、早急に6つの目的を実現させたいと願っている。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231145Z