小児希少難病の患者家族会ネットワークを活用した患者臨床情報バンクの構築とその創薬等への活用

文献情報

文献番号
201231118A
報告書区分
総括
研究課題名
小児希少難病の患者家族会ネットワークを活用した患者臨床情報バンクの構築とその創薬等への活用
課題番号
H24-難治等(難)-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 虎之(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 博幸(東京慈恵会医科大学 小児科)
  • 遠藤 文夫(熊本大学大学院生命科学研究部 小児科)
  • 酒井 規夫(大阪大学大学院医学系研究科 小児科)
  • 清水 教一(東邦大学医療センター大橋病院 小児科)
  • 高柳 正樹(千葉県こども病院 小児科)
  • 土田  尚(独立行政法人国立成育医療研究センタ ー総合診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、小児希少難病の治療薬の開発が進んでいる。しかし、日本の患者が新薬の国際共同治験に参加できずに深刻なドラッグラグ問題が生じていた。我々は「日本ムコ多糖症親の会」の患者リストをもとに日本人患者の現状を調査し、酵素製剤を開発する米国企業と交渉したことにより国際共同治験参加に成功した。これは患者家族会が積極的に臨床情報を収集することで新薬の早期承認などに貢献できる可能性を示している。本研究事業は、日本先天代謝異常学会と相互協力関係にある患者家族会のネットワークが主体となり、患者登録と臨床情報収集を行い、『先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank/Inherited Metabolic Disease Clinical Information Bank)』に集め、治療薬開発研究等に役立てることを目的とする。
研究方法
1.先天代謝異常症臨床情報バンクの構築
患者から得られた情報を総合的に管理し、新規治療薬や早期診断法に関わる研究に有効活用するため、『先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)』を構築する。
2.先天代謝異常症患者家族会ネットワークの構想 & 国際連携
先天代謝異常症患者の臨床情報登録という共通の目的のため、日本先天代謝異常学会のバックアップのもと、各患者家族会が連携する「先天代謝異常症患者家族会ネットワーク」を構築する。さらに、本研究を通じて築いた先天代謝異常症患者家族会のネットワークは、将来的には患者家族会の国際的交流への発展を目指す。現在、本研究に研究協力者として参加している患者家族会は19団体であり、今後さらに増える見込みである。
3.疾患登録シートの作成と内容
疾患登録シートは各患者会の代表と専門医(研究者)の共同で作成する。対象疾患は18疾患(ムコ多糖症、Pompe病、Fabry病、副腎白質ジストロフィー、尿素サイクル異常症、有機酸血症、Krabbe病、異染性白質ジストロフィー、Niemann-Pick病C型、グルコーストランスポーターI欠損症、Wilson病、Gaucher病、フェニルケトン尿症、小児神経伝達物質病、シトリン欠損症、脂肪酸代謝異常症、GM1/ GM2‐ガングリオシドーシス、ミトコンドリア病)であり、共通項目と疾患別項目に分けて作成する。なお、疾患登録シートは、経年的な変化を観察できるよう必要に応じて定期的に同一患者に配布できるものとする。
4.登録の実践
疾患登録シートは、各患者会から患者に郵送または直接配布し、事務局が一括で回収する。患者から収集した情報は、専用データ入力・管理システムを用い、『先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)』にて一括管理、保管する。
5.登録情報の研究利用と情報還元
各専門医、研究者、製薬会社等により患者の情報を用いた研究の申請がある場合は、本研究班の委員会による審査後、連結不可能匿名化した患者の情報を開示する。なお、先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)の情報をもとに行われた研究(新規治療薬、早期診断法に関する研究など)の成果は、患者家族が参加できる関連学会、セミナー、先天代謝異常症患者会フォーラム等を通じて患者にフィードバックする。
結果と考察
本研究の成果の一つである先天代謝異常症患者会フォーラムを開催は、専門医および医療従事者と患者家族の間に、患者登録とフォローアップシステムの重要性について共通の認識を高める良い機会となった(平成24年8月5日、医療従事者、企業、患者家族会15団体など、総勢120名が参加)。また、先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)を立ち上げ、患者家族会中心で疾患登録シートを作成し、18疾患の登録シートが完成した。このように、患者家族会主導で登録を行うことは、登録患者数が劇的に増加することが期待され、わが国における個々の疾患の全体像の把握が今まで以上に容易になると思われる。さらに、医療サイドだけでなく、患者家族の視点からみた疾患の自然歴や治療の効果と限界が明らかになることにより、患者が本当に求めている医療や福祉の在り方が明らかになると期待できる。患者のニーズがより鮮明になることによって、治療法や療育法(リハビリテーションを含む)など、患者家族に必要とされている研究の方向性が明確になると思われる。
結論
本研究事業は2年間であり、先天代謝異常症臨床情報バンク(MC-Bank)が運用できるシステム構築を重点的に行う。患者家族自らの登録によりMC-Bankに集められた患者臨床情報は、新薬開発、早期診断法など、近い将来患者家族に役に立つ研究等に活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231118Z