プリオン病に対する低分子シャペロン治療薬の開発

文献情報

文献番号
201231105A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病に対する低分子シャペロン治療薬の開発
課題番号
H24-難治等(難)-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
桑田 一夫(国立大学法人岐阜大学 大学院連合創薬医療情報研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 水澤 英洋(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
164,456,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、最適化を行った新規抗プリオン化合物(P092)に対し、有機合成(治験薬GMP施設)、及び非臨床安全性試験(GLP)を実施すると共に、医師主導治験プロトコールを作成することにより、薬事法に基づく承認申請を目指すものである。プリオン病の治療候補物質探索が行われているが、既発表の化合物の効果は低く、脳内に移行しにくい、という共通の問題点があり、現時点においてプリオン病の確立された治療法はない。一方、我々が開発したGN8類縁体の構造最適化を進めた結果、最終的に得られたP092の抗プリオン効果は現時点において世界で最も強く、脳内にも確実に移行することがPETイメージングにより確認された。本研究の独創性は、プリオンの立体構造を直接制御することにより、従来の酵素阻害剤よりも遥かに副作用の少ない低分子化合物(低分子シャペロン)であるP092をプリオン病治療薬として実用化するため、非臨床安全性試験(GLP)を本格的に行い、医師主導治験を実施するための基盤を築くところにある。
研究方法
プリオン異常化反応を抑制する低分子化合物P092 の有機合成(治験GMP施設内)、薬物動態試験(TK)、非臨床安全性試験(GLP)、ADME試験を実施し、医師主導治験のプロトコールを作成する。ヒト初回投与試験の安全性を確保し(薬食審査発0402第1号)、第1相臨床試験の安全を確保するために必要な項目を実施する。これらの非臨床試験結果を踏まえ、医師主導治験プロトコールを作成する。希少疾患であることから、オールジャパン体制で治験体制を整えるとともに、海外の医療機関とも連携する。また当該研究は、アカデミックにおいてFirst in Human において医師主導治験を行う、貴重な試金石となり得る。このため、GMPに準拠した有機合成、GLPに準拠した非臨床試験、GCPに準拠した医師主導治験に精通した、次代の創薬を担える若手研究者を育成することが重要である。非臨床試験、及びオールジャパンの治験体制を整える中で、若手研究者を結集し、レギュラトリーサイエンスのノウハウを集積できる組織作りを行う。
結果と考察
PMDAとのやり取りの中で、非臨床試験スケジュールの一部に変更があった。平成24年12月5日、PMDAにおける薬事戦略相談(事前面談)を行った結果、本年12月までに東京化成に3回の有機合成を委託したが、その各ロットにおいて不純物プロフィールと結晶性の差異を検証し、同等とみなしてよいかどうかを確認する必要が生じたため、その時点で未実施の非臨床試験の実施を一時的に停止した。非臨床試験に関しては、P092において純度(99%以上)が確保されているため、溶解したP092を用いたin vitroの非臨床試験(Ames試験)、及びサル経口投与における脳内移行を確認するため、サル単回投与、及びサル2週間反復投与を本年度中に実施した。非臨床試験では一部、計画通りに実施できなかった項目があったものの、PMDAの意見を取り入れた結果、より信頼性の高い実施が可能となり、2年後の治験相談に向けて着実にスタートをすることが出来た、と考えている。JACOP の構築により、治験に応用可能な自然歴調査のプロトコールの作成ができ、さらに調査体制、試料保存体制も整備でき、自然歴調査による患者登録を開始することができた。今後、治験開始準備と平行して、登録患者を増やし、定期的な追跡調査を行ってゆく予定である。
結論
現時点において、計画に挙げた目標・目的は順調に達成できている。今後の見通しとしては、PMDAと連携しつつ、非臨床試験を行う体制が出来ており、目標の達成は十分可能であると考えられる。また、JACOPには「プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班」及び「プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班」が全面的に協力しており、患者さんとその家族の協力さえ得られれば十分、目標である治験体制の構築は達成できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-09-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231105Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
198,806,000円
(2)補助金確定額
198,806,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 68,887,659円
人件費・謝金 5,806,455円
旅費 571,860円
その他 89,190,026円
間接経費 34,350,000円
合計 198,806,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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