文献情報
文献番号
201231088A
報告書区分
総括
研究課題名
過剰運動<hypermobility>症候群類縁疾患における病態解明
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-難治-一般-110
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 淳(日本医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 島田 隆(日本医科大学 医学部)
- 古庄 知己(信州大学 医学部)
- 松本 健一(島根大学 総合科学センター)
- 松本 直通(横浜市立大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
過剰運動(hypermobility)症候群(ICD-9 分類728.5 ICD-10 分類M35.7)は、全身での複数の関節過可動を来す症候群である。本症候群は、複数の関節過可動から関節脱臼を来す。他の結合組織疾患であるEhlers-Danlos 症候群などと類似性も高く、結合組織に関わる複数の原因による遺伝性疾患と考えられる。症状は改善する良性から疼痛管理が難しい例まで様々である。本研究は、平成22 年度に行った過剰運動症候群の実態調査(患者数、診療状況)研究に引き続き、本症候群の「臨床像・自然歴の解明」、「原因の解明」、「診療へのアプローチ」を3つの研究の柱とする。
研究方法
3つの研究柱に対してそれぞれのアプローチを行った。1.<臨床像・自然歴解明>では、罹患者が集積する病院(日本医科大学、信州大学)の各科診療情報を中心に経過を精査し、本症候群の臨床像・自然歴を明確にする。2.<原因遺伝子の解明> では、平成22-24年度に集積した患者さんの臨床症状とゲノムDNAを用いて、原因・関連遺伝子解析を候補遺伝子、探索遺伝子の2つのアプローチを行った。 1)候補遺伝子アプローチでは、23年度同定したテネイシン変異を踏まえ、テネイシンを欠損・減少している罹患者を中心に、症状、減少程度との相関を検討した。2)探索遺伝子アプローチでは、疾患遺伝子の単離を目指し、疾患情報や家族情報が得られているゲノムDNAを用いて、家系内の罹患者・非罹患者リンケージ解析や次世代シークエンサーを用いたExome解析を行った。 3.診療へのアプローチ-研究と統括するシステムの構築 では、日本において本症候群の周知はなく、整形外科・リハビリテーション領域において診断基準を関連学会等と連携し公開していく。本年度は本症候群の関連疾患であるエーラスダンロス症候群の第一回国際シンポジウムが開催され、本症候群もテーマの一つに取り上げあげられている。本研究の成果報告ならびに情報交換を踏まえた海外の研究動向を踏まえ、診療指針(合併症のスクリーニング方法、予防法、治療法、遺伝カウンセリング)の確立を目指した。
結果と考察
<臨床像・自然歴解明>では、過剰運動<hypermobility>症候群罹患者が集積する病院(日本医科大学、信州大学)の各科診療情報を中心にここ数年間の経過を精査し、本症候群の臨床像・自然歴を明確になりつつあり、作成した診断基準を再確認した。欧米と同様女性に集積し、10代-20代に全身の関節、過可動から脱臼を来たすが患者間での症状の幅が強く、本症候群の中の異質性、すなわち複数の原因の可能性が考えられた。またhandbook of hypermobility syndromeの日本語版の翻訳や第1回エーラスダンロス症候群国際シンポジウムへの日本の成果の報告、交流や日本の患者会、整形外科学会等関連学会への報告により国内外の研究者や患者会との連携が可能となり、日本において本疾患を臨床現場への周知に努めた。「原因の解明」では、罹患者ならびに家族由来のゲノムDNAを用いた、ゲノム・遺伝子解析を複数のアプローチから取り組んだ。特に、臨床症状から本症候群と診断された典型例27症例にエキソーム解析を行い、現在のところ原因遺伝子同定には至っていないが、4症例以上に共通する優先順位の高い38遺伝子の各バリアントに対して病原性を予測し、病原性が低いものを除外したところ27遺伝子が候補として残った。血清テネイシンスクリーニングにより、日本における初めてのテネイシン欠損症を発見した昨年度に引き続き変異同定を成功し、細胞内でのタンパクを網羅的に解析し変動するタンパクを同定した。<診療へのアプローチ>では、テネイシン欠損症に対して血清テネイシンスクリーニングの質の向上を進め、それに引き続く、遺伝子変異解析システムを確立した。
結論
日本において過剰運動(hypermobility)症候群の存在を明らかにし、研究班を構築することで欧米研究者との連携ができるようになった。研究期間内での臨床像・自然歴の変化は経時的に追うことができるようになり、臨床像の異なる患者群があることが判明した。本邦第一例のテネイシン欠損例を発見した。原因同定までは至っていないが、絞り込みはできており、複数の原因も考慮すると引き続いた検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
2013-05-30
更新日
-