文献情報
文献番号
201231080A
報告書区分
総括
研究課題名
MODY1-6 の病態調査と識別的診断基準の策定
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-難治-一般-101
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純(岐阜大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 堀川 幸男(岐阜大学 医学部附属病院)
- 山本 眞由美(岐阜大学 保健管理センター)
- 山縣 和也(熊本大学 大学院生命科学研究部)
- 今川 彰久(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
インスリン分泌不全を若年発症する単一遺伝子病 (MODY;maturity-onset diabetes of the young) があるが、MODY判定が困難な理由として、1)核家族と少子化により遺伝様式が不明な場合が多い、2)一般の2型糖尿病が低年齢化してMODYとの識別が困難になっている、3)原因遺伝子のde novo変異が少なくない可能性がある、4)修飾因子のために表現型が多様になる、5)新しく存在が判明したコピー数多型(CNV)が日本人で検討されていない、6)煩雑なDNAシーケンス法が唯一の診断法である、7)検査費用と検査施設が充分に得られないので全MODY遺伝子が検査されていない、こと等が挙げられる。本研究ではMODY1-6について実態調査を行い、臨床所見の解析から病型の特徴的症候と識別基準を明確にすると共に、DNAシーケンスの適応基準を設定する。
研究方法
〈MODY臨床像と判定基準の策定〉
MODY変異の再スクリーニングを先ず遂行する。MODY1-6は類似した臨床像を呈するが、原因遺伝子の発現組織の違いに応じた特徴が存在する。肥満の有無、治療とその有効性、合併症、検査所見、変異保有者の予後などを調査する。これらは、一次調査でMODYを経験したと回答した施設を対象とする(二次調査として予定)。MODY変異の再スクリーニングで集積された臨床情報、アンケート調査結果に加えて、学会発表・文献検索や日本糖尿病学会の遺伝子診断支援事業の情報などを統合して判定基準を検討する。
〈新規MODYの同定の試み〉
提供された未知MODY家系(3世代を満たさない小家系群)を用いて、常染色体優性モデルとしてSNP連鎖解析により、日本人のメジャーMODY遺伝子座をゲノム上にマップする。全エクソンシークエンス(エクソーム)並びに全ゲノムコピー数多型探索を併用する。また稀ではあるが、連鎖解析が可能な大人数家系サンプルの収集も続ける、
<MODY標的の同定による亜型の病態の多様性に対する理解の試み>
MODY遺伝子のコード蛋白は基本的に転写因子であることから、病態の特徴は転写下流の標的遺伝子の生理機能に依るところが多い。この標的群が不明であることから臨床病態の実態が明らかとならない背景がある。そこで、最も上位の上位転写因子であるHNF4に着目し、β細胞特異的HNF4ノックアウトマウス膵島とコントロールマウス膵島を用いて糖尿病標的遺伝子を同定する。
MODY変異の再スクリーニングを先ず遂行する。MODY1-6は類似した臨床像を呈するが、原因遺伝子の発現組織の違いに応じた特徴が存在する。肥満の有無、治療とその有効性、合併症、検査所見、変異保有者の予後などを調査する。これらは、一次調査でMODYを経験したと回答した施設を対象とする(二次調査として予定)。MODY変異の再スクリーニングで集積された臨床情報、アンケート調査結果に加えて、学会発表・文献検索や日本糖尿病学会の遺伝子診断支援事業の情報などを統合して判定基準を検討する。
〈新規MODYの同定の試み〉
提供された未知MODY家系(3世代を満たさない小家系群)を用いて、常染色体優性モデルとしてSNP連鎖解析により、日本人のメジャーMODY遺伝子座をゲノム上にマップする。全エクソンシークエンス(エクソーム)並びに全ゲノムコピー数多型探索を併用する。また稀ではあるが、連鎖解析が可能な大人数家系サンプルの収集も続ける、
<MODY標的の同定による亜型の病態の多様性に対する理解の試み>
MODY遺伝子のコード蛋白は基本的に転写因子であることから、病態の特徴は転写下流の標的遺伝子の生理機能に依るところが多い。この標的群が不明であることから臨床病態の実態が明らかとならない背景がある。そこで、最も上位の上位転写因子であるHNF4に着目し、β細胞特異的HNF4ノックアウトマウス膵島とコントロールマウス膵島を用いて糖尿病標的遺伝子を同定する。
結果と考察
欧米との成績の比較では、欧米ではMODY2とMODY3が全MODYの約8割を占め、一方、未知MODYが逆に8割を占める我が国とは全く事情が異なっていることが挙げられるが、本調査研究でも8割以上のMODY様患者の原因遺伝子が依然未知であることが再認識された。全ゲノムでの欠失型CNV領域の同定と全エクソンシークエンスとの効率的な併用によって従来の連鎖解析の壁を突破する試みは、MODYの様な今後レアな常染色体優性遺伝疾患の原因遺伝子同定のための戦略モデルになることも疑いない。インスリン分泌不全が日本人コモン2型糖尿病病態の本質であることも疑いなく、新規MODY遺伝子同定からインスリン分泌不全病態解明までの知見は、2型糖尿病の病態解明や治療法の開発に展開し貢献する事も疑いない。現在、インクレチン薬は糖尿病治療の多くの部分を変化させつつあるが、インクレチンホルモンやDPP-IVのコード遺伝子は一連のMODY蛋白で制御されることが判明している。糖尿病がインスリン起点からグルカゴン起点にパラダイムシフトしていることを鑑みると、MODY識別的診断だけでなく、治療選択の選別にも基準を発展させることが必要であるが、これは今後の課題である。
結論
1)臨床像に関する二次調査の結果、発症年齢、性別、肥満の有無、随伴所見等がMODY型によって非常に多様であることが明らかとなった。
2)MODY2では家系内に未発症例が多く、推定されてきた頻度よりも高いことが明らかになったので、従来基準では見逃されてきたことが判明した。
3)日本人MODY5に認められたCNV変異では膵形成不全が合併した。
4)欠失型CNV領域に特化して新規MODY遺伝子を探索して、ハプロ不全型5遺伝子を同定した。うち1遺伝子は糖尿病との関連が報告されているものであった。
5)二次調査で募集した未診断MODY遺伝子の解析を行い、12名の新たな確定診断に繋がった。
6)HNF標的分子であるトランスサイレチン(TTR)の機能解析を行った結果、グルカゴンのMODY病態に関する理解が深まった。
2)MODY2では家系内に未発症例が多く、推定されてきた頻度よりも高いことが明らかになったので、従来基準では見逃されてきたことが判明した。
3)日本人MODY5に認められたCNV変異では膵形成不全が合併した。
4)欠失型CNV領域に特化して新規MODY遺伝子を探索して、ハプロ不全型5遺伝子を同定した。うち1遺伝子は糖尿病との関連が報告されているものであった。
5)二次調査で募集した未診断MODY遺伝子の解析を行い、12名の新たな確定診断に繋がった。
6)HNF標的分子であるトランスサイレチン(TTR)の機能解析を行った結果、グルカゴンのMODY病態に関する理解が深まった。
公開日・更新日
公開日
2013-06-17
更新日
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