アミロイドーシスに関する調査研究

文献情報

文献番号
201231028A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロイドーシスに関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
安東 由喜雄(国立大学法人熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 正仁(金沢大学医薬保健研究域医学系・脳老化・神経病態学、神経内科学)
  • 池田 修一(信州大学医学部内科・リウマチ・膠原病内科、神経内科)
  • 樋口 京一(信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系加齢生物学講座、病態遺伝学)
  • 玉岡 晃(筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻神経病態学分野、神経病態医学)
  • 高市 憲明(虎の門病院腎センター、内科学・腎臓病学)
  • 山田 俊幸(自治医科大学臨床検査医学、臨床検査医学)
  • 内木 宏延(福井大学医学部医学科病因病態医学講座分子病理学領域、病理学)
  • 本宮 善恢(医療法人翠悠会(社団))
  • 今井 裕一(愛知医科大学医学部内科学講座、腎臓・リウマチ膠原病内科)
  • 吉崎 和幸(大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻免疫医科学、臨床免疫)
  • 東海林 幹夫(弘前大学大学院医学研究科附属脳神経血管病態研究施設脳神経内科学講座、臨床神経学・アルツハイマー病)
  • 麻奥 英毅(広島赤十字・原爆病院検査部、血液学(リンパ系腫瘍の診断治療))
  • 奥田 恭章(道後温泉病院リウマチセンター リウマチ内科、関節リウマチ・膠原病)
  • 水口 峰之(富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)構造生物学研究室)
  • 工藤 幸司(東北大学病院臨床試験推進センターニューロ・イメージング研究寄附研究部門・前臨床応用部門、コンフォメーション病診断プローブ開発)
  • 水澤 英洋(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野、神経内科学)
  • 西 慎一(神戸大学大学院医学研究科腎臓内科 腎・血液浄化センター、内科学・腎臓病学)
  • 畑 裕之(熊本大学大学院生命科学研究部医療技術科学講座血液検査学教室、血液内科学)
  • 宇根 有美(麻布大学獣医学部病理学研究室、獣医 病理学)
  • 岩坪 威(東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野、神経病理学)
  • 小池 春樹(名古屋大学医学部附属病院神経内科、神経内科学)
  • 島崎 千尋(社団法人全国社会保険協会連合会社会保険京都病院、血液内科)
  • 山下 太郎(熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学、神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アミロイドーシスの分子病態に基づいた早期診断・治療法の開発・改善を行い、本疾患群に共通した臨床的な課題に取り組むと共に、本症の発症動向を調査・把握し、各医療機関と病診連携を構築・改善することを目的に実施した。
研究方法
1) 家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP):肝移植後の病態に関する検討、若年発症と高齢発症FAPの症候に関する研究、ドミノ肝移植患者の病態に関する研究、TTR安定化剤の効果に関する研究、新規の動物モデルに関する研究を行った。
2) ALアミロイドーシス:新規化学療法に関する検討、症候や併発疾患に関する検討を行った。
3) AAアミロイドーシス:抗サイトカイン療法に関する検討、JAK阻害剤の抗炎症効果およびSAA抑制効果の検討、新規抗AA抗体による病理診断法の開発、アイソフォーム別SAA由来ペプチドのアミロイド形成性の検討を行った。
4) 脳アミロイドーシス:フェノール化合物やスタチンなどの治療法に関する研究、毒性を示すAβ分子種の解析、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の病態解析、α-シヌクレイン(α-Syn)分解機構の解析、動物モデルとしてのネコ科動物の脳病理解析を実施した。
5) 透析アミロイドーシス:透析アミロイドーシスの実態調査、β2mのC末端特異的抗体を用いた診断法の開発、骨・関節破壊が生じる機構の解析を行った。
6) アミロイドーシスに共通する発症・伝搬機構の解析および診断・治療法の開発など:アミロイドイメージングに関する研究、質量分析法を用いたアミロイドーシスの病型診断、アミロイド原因蛋白質の伝搬機構の解析を行った。
結果と考察
1)FAP:肝移植後の病態変化は臓器によって異なることが判明した。高齢FAP患者では移植後も末梢神経障害が進行する傾向があり移植適応を慎重に判断する必要がある。FAP肝を用いたドミノ肝移植後に無症候性にアミロイド沈着が生じており定期的な組織学的精査が必要である。TTR安定化剤であるジフルニサルは、肝移植の効果が乏しい高齢FAP患者の末梢神経障害の進行を抑制する可能性がある。2) ALアミロイドーシス:各種の薬剤や自家末梢血幹細胞移植療法は、適格症例を厳密に選択し、慎重な全身管理を行うことで、有効性の高い治療法となる。また、完全寛解が得られなくとも追加の化学療法が効果を示す可能性がある。新規治療法としてメルファランとデキサメタゾン併用療法に、プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブを併用したBMD療法を考案し臨床試験を継続している。3) AAアミロイドーシス:IL-6を標的としたトシリズマブはAAアミロイドーシスに対して優れた治療効果を示すことが、多施設共同研究で明らかになった。腎アミロイドは治療後も除去されにくく、臓器により治療反応性が異なっていた。JAK阻害剤であるトファシチニブはアミロイド前駆蛋白質である血清アミロイドAの産生を抑制し新規治療法の候補として考えられた。新規の抗AA76抗体は、AAアミロイドーシス診断の優れたツールになりうる。4) 脳アミロイドーシス:Aβ凝集に対する、Sortilin、ApoE、フェノール化合物、スタチンの影響、及び可溶性Aβにおける毒性Aβコンフォマーの存在を報告した。また、家族性アルツハイマー病、老齢ネコ科動物におけるAβ沈着機構及を明らかにし、さらに、アルツハイマー病における微小脳出血の影響、脳アミロイド血管症に対する副腎皮質ステロイドのよるアミロイド退縮メカニズムを明らかにした。5) 透析アミロイドーシス:日本透析医学医会の統計資料を用いて代表的症状である手根管症候群の発症頻度を精査した。透析アミロイド症診断基準の各臨床項目が患者QOLに与える影響が明らかになった。本疾患のアミロイド線維は細胞表面に付着し、壊死及びアポトーシスの両者を引き起こすことで毒性を発揮すると考えられた。6) アミロイドーシスに共通する発症・伝搬機構の解析および診断・治療法の開発など:新たなアミロイドイメージング技術や質量分析による原因蛋白質の同定は、本症の早期診断に役立つと考えられた。マウスApoAIIアミロイドーシス伝搬機構の詳細な解析結果から、線維阻害作用を持つ合成ペプチドによるアミロイドーシスの新たな治療法の開発が期待できる。
結論
本年度の研究に成果より、アミロイドーシスの実態を評価できたことに加え、今後の課題も明らかになった。また、早期診断および新たな治療法の開発・確立に与える影響は極めて大きいと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231028Z