全ての臓器と組織移植症例の一元的な登録と追跡制度の確立ならびにドナーとレシピエントの安全性確保とQOL向上に関する研究

文献情報

文献番号
201229031A
報告書区分
総括
研究課題名
全ての臓器と組織移植症例の一元的な登録と追跡制度の確立ならびにドナーとレシピエントの安全性確保とQOL向上に関する研究
課題番号
H23-免疫-指定-019
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高原 史郎(大阪大学大学院 医学系研究科先端移植基盤医療学)
研究分担者(所属機関)
  • 湯沢 賢治(国立病院水戸医療センター 臨床研究部・移植医療研究室)
  • 剣持 敬(藤田保健衛生大学医学部 臓器移植科)
  • 篠崎 尚史(東京歯科大学市川総合病院 角膜センター)
  • 高橋 公太(新潟大学大学院医歯学総合研究科 腎泌尿器病態学分野)
  • 八木澤 隆(自治医科大学医学部  腎泌尿器外科学講座 腎臓外科学部門)
  • 三重野 牧子(自治医科大学情報センター 医学情報学)
  • 北田 秀久(九州大学病院 臨床・腫瘍外科)
  • 渡井 至彦(名古屋第二日赤病院 第一移植外科)
  • 市丸 直嗣(大阪大学大学院 医学系研究科 先端移植基盤医療学)
  • 矢澤 浩治(大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学(泌尿器科))
  • 木内 哲也(名古屋大学 大学院医学系研究科 移植・内分泌外科学)
  • 梅下 浩司(大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻看護実践開発科学)
  • 近藤 丘(東北大学加齢医学研究所 外科系臨床医学・胸部外科学)
  • 後藤 満一(福島県立医科大学 外科)
  • 福嶌 教偉(大阪大学大学院医学系研究科 重症臓器不全治療学)
  • 小野 稔(東京大学大学院医学系研究科 心臓外科)
  • 上野 豪久(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座小児成育外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
21,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、3年計画で、この登録・追跡システムを全臓器・組織に拡大し、全ての臓器と組織移植症例の一元的なWebでの登録・追跡制度を確立することによって、詳細な移植データを収集することができ、詳細で迅速なデータを解析が可能とする。これを通して、ドナー及びレシピエントの安全性確保とQOL向上をはかり、臓器・組織移植医療の成績向上を目指し、臓器・組織移植医療を発展、普及させることを目的とする。
研究方法
1年目の昨年度は、先行する平成20~22年度本補助金「腎臓移植の成績向上をめざした臨床データ解析を目的とした症例登録と追跡制度の確立並びにドナー及びレシピエントの安全性確保とQOL向上に関する研究」で構築されたUSBメモリーを用いた腎移植登録システムJARTREを完全にWeb化し、システムとしてのJARTRE-Wを完成させた。2年目の今年度は、このシステムに従来の紙ベース登録され、追跡されてきた約15,000人の腎移植患者のデータを移行し、JARTRE-Wで追跡データの入力を可能にする。従来の登録データは、数年毎に登録項目とデータ内容が変わってきたため、データの形式に不統一があり、そのままではWebでのシステムに移行できなかったが、これを完成させた。また、このWeb登録・追跡システムのデータを統計解析できることを確認する。Web登録システムとして平成22年度より稼働した肝移植登録システムLITRE-Jは、新規登録を開始したものの、腎と同様、過去のデータの移行ができなかったため過去の追跡データの入力できなかった。過去のデータを移行し、追跡データの入力を可能にする。他の臓器移植登録システムは、これまで登録用紙で行われていたが、昨年度、Web登録への移行を行うための調査を行った。2年目の今年度は、従来の登録・追跡項目の見直し、ドナー登録、追跡項目を検討し、Web登録システムを完成させた。本稼働は次年度を予定している。
結果と考察
臓器と組織の移植医療はドナーがあって成り立つ医療で、他の医療と大きく異なる。さらに、臓器移植では大部分が健康生体からの提供であるが、亡くなったドナーからの臓器と組織の移植は第三者からの提供となる。これまで、臓器移植では各臓器の研究会で登録・追跡調査されてきた。組織移植では、各アイバンク・スキンバンクが個別に登録してきたのみで、全国的な登録、追跡調査はされてこなかった。一方で、日本臓器移植ネットワークでは、亡くなったドナーから提供され移植されたレシピエントについては完全に登録し、追跡調査してきた。しかし、生体ドナーについては何も行われていなかった。第三者を含んだドナーから提供された臓器や組織で成り立つ移植医療であるからこそ、完全なトレーサビリティーが求められ、レシピエントのみならずドナーの完全な登録と追跡システムが必要と考えられる。
2008年春のイスタンブールサミット宣言で、生体ドナーについては、ドナー保護の観点から生涯にわたって追跡しなければならないとされたが、世界的にこれを完全に遂行出来ている国はない。我が国が世界に先駆けて、レシピエントのみならず、全ドナーの生涯にわたった追跡調査を行うことは、世界的に注目されることであり、世界に発信される大きな成果と期待される。全臓器・組織移植の一元的Web登録・追跡システムを構築することにより、安全で信頼性の高いシステムを維持していくことができる。これらを通して、ドナー及びレシピエントの安全性確保とQOL向上をもって、臓器・組織移植医療の成績向上並びに発展、普及を期待することができる。
結論
腎移植登録システムJARTRE-W、肝移植登録システムLITRE-Jについて、過去の登録、追跡データを移行を完了し、追跡データのWeb入力を可能にした。心臓以外の他の臓器移植登録システムは、Web登録システムを完成させ、次年度の本稼働が可能となった。組織移植については、角膜移植の登録システムが完成し、次年度の本稼働が可能となり、他の組織移植登録システムの検討に入った。最後に、全臓器と組織移植症例の一元的な登録と追跡をおこなうサーバーの問題は未解決なまま、最終年度の検討課題として残した。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229031Z