B型肝炎ウイルスの完全排除等、完治を目指した新規治療法の開発に関する包括的研究

文献情報

文献番号
201228011A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルスの完全排除等、完治を目指した新規治療法の開発に関する包括的研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森屋 恭爾(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 泉(東京大学医科学研究所)
  • 小池和彦(東京大学医学部附属病院・内科学)
  • 國土典宏(東京大学医学研究科外科学専攻臓器病態外科学講座・肝胆膵外科)
  • 鈴木哲朗(浜松医科大学・医学部感染症学講座・ウイルス学)
  • 北川雅敏(浜松医科大学・医学部分子生物学講座・分子生物学)
  • 朝比奈靖浩(東京医科歯科大学・医歯学総合研究科分子肝炎制御学講座)
  • 森石恆司(山梨大学大学院医学工学研究部医学学域・微生物学講座・ウイルス学)
  • 田川陽一(東京工業大学大学院生命理工学研究科・発生工学、再生医学)
  • 福原崇介(大阪大学微生物病研究所・分子ウイルス学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
80,835,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎ウイルス(HBV)持続感染者数は世界中に約3億5千万人、日本に約140 万人にものぼると推定されている。この多くの持続感染者の発癌阻止は日本のみならず世界においても極めて重要な課題である。また日本においても1000万人以上にも上ると推定されている既感染者においてもウイルス増殖が再燃(HBVの再活性化)し,肝炎を発症する(de novo肝炎)事例が化学療法、免疫療法の進歩とともに日常診療で数多く報告されるようになってきている。de novo肝炎は重症症例が多く,緊急に対策を行う必要があるがHBVウイルス遺伝子が肝細胞の核に組み込まれ、cccDNAが存在していることに起因しccDNA排除は現在開発されている抗ウイルス剤では行えないことも判明している。
今回cccDNA排除可能な薬剤開発を目的としてHBV複製機構のなかでcccDNA細胞内結合蛋白同定、miRNAの変化を検討し薬剤screeningを行うとともに、既存の化合物の中から発癌抑制作用の検討、ならびに今回HBV完全排除へ繋がる創薬、再活性化・発がん阻止、特異的遺伝子治療ベクター、術後化学療法といった完治を目指した治療法開発に資する研究を、基礎、臨床両面から短時間のうちに推進する。
研究方法
1)HBV発癌マウスモデルであるHBx遺伝子発現マウスモデルを使用し発癌メカニズムと肝臓代謝の関連に的を絞りHBVにより変化する代謝変化を治療の標的とし新規治療薬の候補化合物を取得する。
2)今回cccDNA排除可能な薬剤開発を目的としてHBV複製機構のなかでcccDNA細胞内結合蛋白同定、microRNAの変化を検討し、これらを阻害する薬剤screeningを行う。
3)HBV複製機構解析をめざしHBV生活環のうち、capsidの核移行、核内HBV DNAの構造変換及びミニクロモゾームのエピジェネティクス制御の分子機構を解明する。HBV発現細胞における宿主及びウイルスゲノムのメチル化解析、ミニクロモゾームのヒストン修飾解析をおこなうとともにnon-coding RNAによるHBV複製制御、HBV複製における肝細胞分化レベルの関与を明らかにする。
3)高機能肝組織培養系を駆使し新たなHBV増殖モデルを作出、研究に活用する。
またiPS細胞を使用し肝分化度の異なる細胞系を作製、HBV増殖との関係を解析する。これらの培養系の確立とともに我々がHCV研究ですでに得ている肝炎ウイルス特異的にapoptosis誘導作用および抗ウイルス作用を持つ物質ライブラリーを検討する
4)HBV複製細胞選択的な遺伝子治療用アデノウイルスベクターを開発する。
5)初発で前治療歴のない肝細胞癌切除症例682例を解析しHBs抗原陰性HBc抗体陽性患者における肝切除・肝移植術後の補助化学療法を確立する。
結果と考察
HBx遺伝子発現トランスジェニックマウスにおいて脂質代謝を中心に代謝経路の変化を見出し代謝変化抑制化合物投与実験を開始した。またこの化合物によるSTAT3遺伝子発現抑制などの知見を取得した。HBVコアプロモーター活性阻害剤スクリーニングを行い、海洋抽出ライブラリーから抑制画分を見出した。質量分析によりHBV感染によるトリアシルグリセリド変動を明らかにした.癌抑制機能を持つmicroRNAの機能が、HBV-RNA存在下において減弱することを見出した。核内の各HBV DNAフォームを含む密度分画の分離技術を確立した。エンハンサーII内にHBV遺伝子型Cに特徴的な遺伝子発現制御エレメントが存在することが示唆された。HBx発現によって発現が抑制される4種の機能未知long-noncoding(X-lnc)RNAを同定した。(5)SILAC法により、HBV複製に伴って発現変動する核タンパク質、膜タンパク質を解析した。ヒトiPS細胞から肝細胞系細胞への分化誘導と肝幹細胞様細胞の分離、成熟化肝細胞への誘導培養系を構築した。種々のHBx変異体発現系を作製した。HBV複製肝がん細胞と内皮細胞、星細胞株を共培養しネットワーク構造が形成されることを見出した。HBV感染新規検出系としてレポーター遺伝子挿入HBVゲノムを作製、発現を確認した。治療用遺伝子の選択的な切り出し、環状増幅を可能にする新規アデノウイルスベクター(AdV)の基盤となる各HBV遺伝子発現AdVを作製した。初発で前治療歴のない肝細胞癌切除症例682例の予後を検討、肝炎ウイルス別の生存率を解析した。
結論
HBV増殖抑制効果を①既存薬剤について検討②HBV複製機構データから創薬標的を探索③創薬に貢献する技術開発を目指す。ほぼ計画予定で研究は進捗している。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201228011Z