がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス再活性化予防対策法の確立を目指したウイルス要因と宿主要因の包括的研究

文献情報

文献番号
201227030A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス再活性化予防対策法の確立を目指したウイルス要因と宿主要因の包括的研究
課題番号
H24-肝炎-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 持田 智(埼玉医科大学消化器内科)
  • 楠本 茂(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 池田 公史(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 梅村 武司(信州大学医学部)
  • 村田 一素(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 宮寺 浩子(東京大学大学院医学研究科)
  • 是永 匡紹(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化は、がん化学療法および自己免疫疾患治療など幅広い分野で問題となっており、昨今の分子標的治療では特に注目されている。再活性化時の対処の遅れは患者の死に繋がるため、その診断と治療法の確立が求められている。
平成20年8月より、リツキシマブ+ステロイド併用悪性リンパ腫を対象とした多施設共同臨床試験を開始し、最終登録数は275症例(全国68施設、平成24年12月8日現在)で、世界的にもエビデンスレベルの高いプロスペクティブ研究を進めている。他に固形がん領域、自己免疫疾患領域の多施設共同前方視的研究が進行中であり、収集した検体を用いて、リスク因子の解析および再活性化予測モデルの構築を行い、また新規に研究計画書を作成し、文書による同意を得た後に、登録例のヒト遺伝子研究用の追加採血を行い、次世代シーケンサー、SNPs、HLA解析によりウイルス要因・宿主要因の検索を網羅的に行うことで、がん化学療法及び免疫抑制療法中のHBV再活性化予防対策法の確立を目的とする。
研究方法
3つのプロスペクティブ研究を継続するとともに、再活性例の検体について劇症肝炎と関連があると報告されている9カ所のウイルス変異(T1753V, T1754V, T1762A, G1764A, G1896A, G1899A, T1961A, C1962D, A2339G)の測定、超高感度HBVDNA測定系による再活性化例の予測を行った。
また、再活性化宿主因子としてB型肝炎慢性化に対する感受性・抵抗性と有意に関連を示すHLA-DPアリルの安定発現株の作成を行った。
結果と考察
多施設共同前方視的臨床研究(UMIN000001299)の実施し、275例中21例(7.6%)でHBV再活性化(シグナル陽性を含まず)を認めた。自己免疫疾患のHBV既往感染症289例では4.8%(14/289)、固形癌では347例中3例(0.9%)の再活性化を確認した。de novo B型肝炎とB型急性肝炎症例との比較では、de novo肝炎でG1896A変異が57%と高率であったが、有意な差は認めなかった。高感度測定系で8copy/mLまで100%HBVDNAを検出可能であった血清(24検体)で、従来法では16copy/mLまでしか100%検出できなかった。再活性化が確認された5例中3例で、再活性化の1-3ヶ月前に高感度系が陽性であった。
結論
3つの多施設共同前方視的研究よりそれぞれの再活性化率を明らかにした。また、新たに新規計画書を作成し、検体(血清・DNA)を回収する準備を終了した。また、HBV超高感度測定系によるウイルス変異とHLADPB1アレルを用いた宿主因子解析の準備もほぼ完了し、来年度は以下の検討を行う。
多施設共同前方視的研究に登録され、文書による同意を得た症例において保存血清(一部血漿)を得る。連結可能匿名化された検体として名古屋市立大学で一括保管している。必要に応じて、名古屋市立大学あるいは国立国際医療研究センター(NCGM)にて以下の解析を行う。
1)HBV再活性化の有無で2群に分けて、HBV関連マーカーや治療法による違いなど再活性化のリスク因子を検討し、ハイリスク群の細分類を行う。
2)再活性化症例におけるウイルスのin house超高感度HBVDNA検出を実施し、従来のHBVDNA検査よりも測定頻度を減らしつつも早期に予測できるか検討をすすめる。
3)HBV抗原抗体検査法は各メーカーでその検出力が異なっていることが明らかとなっている(大隈未発表データ)。再活性化を予測する上で最適な検査法と検査値のとり方について検討を進める。
4)HBV遺伝子型、遺伝子変異の解析を行うことで、再活性化に関連するウイルス変異を検討する。
5)新規研究計画書を作成し、HBV再活性化に関連する網羅的なヒト遺伝子解析を行う。上記4つのがん化学療法及び免疫抑制療法の登録症例を対象とした追加採血により、次世代シーケンサー・SNPsによる検討を実施する。
6)これまでの検討で明らかとなっているHLA型とウイルス抗原のそれぞれの多型を組み合わせることで、再活性化発症例と非発症例の違いについて検討する。また、それが予測因子として利用可能か検討する。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201227030Z