肝炎ウイルス感染複製増殖過程の解明と新規治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201227007A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染複製増殖過程の解明と新規治療法開発に関する研究
課題番号
H22-肝炎-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 土方 誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 森石 恆司(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 坂本 直哉(北海道大学 医学研究科)
  • 武部 豊(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 池田 正徳(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 上田 啓次(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 加藤 孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 萩原 正敏(京都大学 大学院医学研究科)
  • 三浦 直行(浜松医科大学 医学部)
  • 八木 清仁(大阪大学大学院 薬学研究科)
  • 水口 裕之(大阪大学大学院 薬学研究科)
  • 清原 知子(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
51,383,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎ウイルス感染症は我が国における最も重要な疾患のひとつであり、その対策は迅速に進める必要がある。HCV感染に対する現在の治療は不十分であり、新たな抗ウイルス薬による治療効果の改善が望まれる。HBV感染では、核酸アナログ剤の長期投与によりHBVキャリアの肝癌発生率は低下するが、薬剤耐性ウイルスの出現とコントロールが問題である。E型肝炎ウイルス感染症は輸入感染症および人獣共通感染症として問題である。特に老人の感染では重症化・劇症化する場合がある。これらの問題を解決するために、新たな治療薬の開発が必要である。
研究方法
HCV感染増殖機構の解析と新規治療法の開発HCV培養系による抗ウイルス薬スクリーニングHBV感染増殖機構の解析と新規治療法の開発HBV増殖系による抗ウイルス薬スクリーニングHEV感染増殖機構の解析と抗ウイルス薬スクリーニングHCV感染動物モデル開発ヒトiPS細胞由来肝細胞を用いた肝炎ウイルス感染・複製機構の解析
結果と考察
・遺伝子型2aのJFH-2株により新たなレプリコンおよび感染性クローンを樹立した・TXAS阻害薬Ozagrelの感染性HCV粒子産生阻害効果は細胞内における感染性粒子形成あるいは成熟を阻害することによる・ウイルス増殖に重要な宿主蛋白質性因子FKBP6を同定した・化合物スクリーニングで同定された化合物は、現在HCV治療薬として臨床研究に進んでいるレチノイン酸と最終作用機序は同一であるが、細胞での抗HCV能は本化合物がレチノイン酸を凌駕している・HuH-7細胞とは異なるLi23細胞をサブクローン化した・微生物由来の低分子化合物ライブラリーからHCVcc assayにおいてEC50がsub nMレベルにある強力な抗HCV活性を示す化合物を同定した・ビタミンDにより誘導される抗菌ペプチドにも抗HCV作用を認めた・ヒト肝細胞キメラマウスの肝細胞による3次元培養系は長期間の培養が可能であり、患者血清からのHBV感染・複製の可能性が示された・トランスジェニックマウスでは十分な4因子の発現が得られなかったので、大量の4因子を発現させるにはノックインマウスを作成させる必要があることが明らかになった・Ad ベクターを用いた機能遺伝子の導入およびナノピラープレートを用いた三次元培養技術の導入によりヒト ES/iPS 細胞から分化誘導した肝細胞は、HCV研究に使用可能であることが示唆された・ヒトiPS細胞由来肝細胞分化誘導系を用いてHCV感染・複製を解析した
結論
本研究を推進し、肝炎ウイルスに対する新たな治療法の開発は患者の予後を改善し、肝硬変および肝臓癌という高度な医療が必要な疾患の患者数を減らし、結果的に医療費の低減に寄与し、社会の福祉に寄与する。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201227007B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎ウイルス感染複製増殖過程の解明と新規治療法開発に関する研究
課題番号
H22-肝炎-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 土方 誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 森石 恆司(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 坂本直哉(北海道大学 医学研究科)
  • 武部 豊(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 池田 正徳(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 上田 啓次(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 加藤 孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 萩原 正敏(京都大学 大学院医学研究科)
  • 三浦 直行(浜松医科大学 医学部)
  • 八木 清仁(大阪大学大学院 薬学研究科)
  • 水口 裕之(大阪大学大学院 薬学研究科)
  • 清原 知子(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCV感染に対する治療はインターフェロンとリバビリンの併用により改善してきたが、未だに不十分である。新たな抗ウイルス薬の開発による治療効果の改善が望まれている。HBV感染では、核酸アナログ剤の長期投与によりHBVキャリアの肝癌発生率は低下する。しかし、HBV排除は容易に達成できないため、生涯の服用も必要と考えられる。さらに薬剤耐性ウイルスの出現およびそのコントロールが問題である。また、近年我が国土着の人獣共通感染症としてE型肝炎ウイルス(HEV)感染症が問題となってきた。これらの肝炎ウイルスに関する問題点を解決するためには、新たな治療薬の開発が必要である。
研究方法
HCV感染増殖機構の解析と新規治療法の開発HCV培養系による抗ウイルス薬スクリーニングHBV感染増殖機構の解析と新規治療法の開発HBV増殖系による抗ウイルス薬スクリーニングHEV感染増殖機構の解析と抗ウイルス薬スクリーニングHCV感染動物モデル開発ヒトiPS細胞由来肝細胞を用いた肝炎ウイルス感染・複製機構の解析
結果と考察
・新規HCV感染性クローンによるウイルス培養系の開発に成功した。
・メバロン酸経路に関わる宿主因子においてゲラニルゲラニルトランスフェラーゼII(GGTII)がHCVの複製に必要である。
・TXAS阻害剤とIPアゴニストがHCVの感染伝播に抑制的に作用することを見出した。この薬理作用の解析から感染性HCV産生はTXASによって産生されるTXA2がTPを介して制御しているものではないことがわかった。
・インターフェロン効果を増強する化合物の大規模スクリーニングを行い、3種の化合物とその誘導体にインターフェロン応答増強効果、及び抗ウイルス効果の増強を認めた。
・HCV感染粒子産生に必須の宿主蛋白質PA28γを標的として、化合物ライブラリーによるスクリーニングをおこなった。また、新規宿主蛋白質FKBP6はHCV複製に必須であることを明らかにした。
・HCVレプリコン細胞を用いた抗ウイルス化合物の大規模スクリーニングによりウイルス増殖を抑制する化合物4種類を同定した。比活性の高かったMCNAについて構造活性相関解析(SAR)を行ったところ、morpholine環構造が抗ウイルス効果に重要な構造であることがわかった。
・ビタミンDの代謝産物である25(OH)VDがHCVのウイルス粒子形成を阻害した。そこでビタミンDとの関与が報告されている抗菌ペプチドがHCV粒子の感染を押さえることを明らかにした。
・抗HIV活性をもつグリフィスシン (高マンノース型糖鎖結合蛋白質)がHCVエントリーを特異的に阻害した。
・キナーゼ阻害剤の中から、HCVを含む広範なフラビウイルスに効果のある化合物SFV785を同定した。また、SRPK阻害剤SRPIN340がC型肝炎ウイルスの増殖を抑制する作用を有することを見出した。
・HBV pseudotype(HBVp)はヒト肝癌由来培養細胞株HepG2をある処理をすることにより感染性が上昇することが示唆された。HepG2細胞から付着因子(感染受容体)の分離・同定を試み、幾つかの特異的な結合因子の存在を確認した。
・HBVの3次元培養系の確立のために不死化ヒト肝細胞および肝癌細胞株を用い、中空糸ならびにスフェロイドによる培養系を比較検討し、HBV感染を確認した。キメラマウス由来のヒト肝細胞が有用であることを確認した。
・HepG2 2.2.15細胞のリクローニングを行い、HBs抗原産生能が高いクローンを得た。これを用いて薬剤スクリーニングをおこなった。様々な作用点にヒットする化合物を得た
・HEVの感染性cDNAクローンを樹立し、HEV粒子形成機構を解析した。
・ケミカルライブラリーによる抗HEV薬スクリーニングの至適化をおこなった。
・HCV感染に重要な4因子を発現するマウスを作製した。HCV陽性血清をこのマウスに注射したが、マウス血液中にHCVは検出できなかった。CD81とCLDN1発現がHuh7.5.1肝癌細胞の10%と低値であることが判明した。
・HCV感染研究のためのヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞の分化誘導法の開発・最適化を行い、アルブミンや薬物代謝酵素を高発現する肝細胞の作製に成功した。
・iPS細胞はCD81、Occludinを発現し、肝細胞への分化誘導処理により他の2種(Cauudin-1、SR-BI)を発現することを明らかとした。
・ヒトiPS細胞にはHCVpvの感染能およびサブゲノム複製能を、肝細胞への分化誘導時に獲得することを明らかとした
結論
本研究を推進し、肝炎ウイルスに対する新たな治療法の開発は患者の予後を改善し、肝硬変および肝臓癌という高度な医療が必要な疾患の患者数を減らし、結果的に医療費の低減に寄与し、社会の福祉に寄与する。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201227007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新たな実験系を確立し、すでに臨床に使用されている薬剤の抗HCV活性を同定した。また、新たな化合物もスクリーニングされており、標的因子の同定など今後の研究の進展が期待される。また、HBV受容体の同定、HCVレセプタートランスジェニックマウスの開発も進んでいる。また、特筆すべきはiPS細胞から誘導した肝細胞でHCV感染や複製が可能なことである。この実験系によりさらにHCVの生活環の理解が進むと期待できる
臨床的観点からの成果
肝炎ウイルスに対する新たな治療法の開発は患者の予後を改善するのみならず、肝硬変および肝臓癌という高度な医療が必要な疾患の患者数を減らすことにより、結果的に医療費の低減に寄与し、社会の福祉に寄与することが可能である。さらに最近ウイルス性肝炎患者を広く検診で拾い上げ、治療が必要な患者に対して適切な治療を行うことが社会的な要請であり期待である。この要請に応えるためにはより効果の高い治療法を低コストで実施できるよう開発していく必要がある。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
141件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
127件
学会発表(国際学会等)
144件
その他成果(特許の出願)
8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
2018-03-20

収支報告書

文献番号
201227007Z