性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201225054A
報告書区分
総括
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 創一(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 松本 哲朗(産業医科医学)
  • 谷畑 健生(国立保健医療科学院)
  • 白井 千香(神戸市保健福祉局)
  • 小森 貴(日本医師会)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 余田 敬子(東京女子医科大学)
  • 三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科)
  • 川名 敬(東京大学医学部産科婦人科学)
  • 田中 一志(神戸大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,971,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.2006年から厚生労働科研の一環として6年間続けられてきた全国のモデル県における
性感染症受診者の全数調査を見直し、さらに精緻な分析により、国民の対人口10万人当たりの主要性感染症の罹患率を推計。
2.コンドームのみならずHPVワクチンによる尖圭コンジローマの予防や、咽頭の淋菌等保菌者をスクリーニングし、除菌による感染蔓延効果を検討。
3.若者における無症候性の性感染症を含めた受診へのアクセスをシステム化。④原因微生物の迅速検査の開発と薬剤耐性化を防止できる効率的治療法を推進。
これら研究により正確な実態把握のもと、性感染症の予防・治療の総合的対策に大きく貢献する。
4.淋菌の多剤耐性機構、マイコプラズマ検査、クラミジア型別等、基礎研究の成果を、適正治療に結び付ける。
研究方法
ア.性感染症患者の実数・実態把握調査のための研究
モデル県における性感染症の全数調査を、日本医師会等の協力を得て、継続して行う。それに際して、配偶者有無を含め、どのような年代にいかなる性感染症が分布しているかを解析し、対人口10万人当たりの罹患数等を推計する。性感染症発生動向調査との比較も行う。本調査は、3年間の推移に関しても検討する。
イ.性感染症予防のための具体的調査と対応
若者を中心とした性行動アンケート調査から性感染症予防手段の現状を調査する。中学校・高等学校等に、HPVワクチンに関する知識についてアンケート調査を実し、性感染症への理解を。深める。
ウ.無症候性感染も含めた、主に若者が医療機関を受診しやすいシステムの構築
上記の調査の延長上で、医療機関を紹介するシステム構築のあり方を検討する。若者への性感染症予防教育を通じて受診動機を高める。
エ.病原体の検査法の確立と耐性菌の微生物学的解析に関する研究
Mycoplasma genitalium検査の実用化に向けての基礎的検討。淋菌の薬剤感受性について、分子タイピング分析との関連を検討する。Chlamydia trachomatisの変異株検索と確実な治療法確立を推進する。
結果と考察
1)性感染症全数把握調査から見た動向
男性は配偶者なしの方が配偶者ありよりも性感染症が多い。全般に男は配偶者なしの20代前半から40代前半までに感染者が多い。女性でも配偶者なしに多く、10代後半から30代後半までに感染者が多く、男性よりも全般に5歳若い。疾患別に人口10万人年対罹患者数を見ると、男性では20代前半のクラミジアが最も多く、次いで、20代後半の非淋菌非クラミジア性尿道炎、同じくクラミジア性尿道炎、同じく淋菌性尿道炎と続く。女性では若年者では圧倒的にクラミジア性子宮頸管炎が多い。女性で尖圭コンジローマが20代前半で多く、性器ヘルペスが全般に比較的多い。
2)若年者の口腔内性器クラミジア(および淋菌)感染に関する研究
 若年者の口腔内感染について、140件のうがい液検体と90件の初尿検体から得られた性器クラミジアおよび淋菌の核酸増幅検査の結果と、138人の性行動アンケートから現状や課題を考察した。TMAとSDAの何れかで性器クラミジアと淋菌の何れかに陽性となった者は計11人であった。性行動アンケートから検査協力者の性行動は陽性例に限らず、口腔を介した何らかの性行為を経験した割合は90%以上であった。
3)性感染症予防啓発に資する、若者への教育用標準スライドの策定と効果
 青年前期(思春期)の生徒を対象に、性感染症の予防啓発教育用標準スライドを作成した。デリバリ授業の結果として、アンケート上多くの生徒が授業の内容は理解していた。その理解が、実際に行動に反映されるか否かは今後の検討課題であり、本研究班の命題のひとつである。
結論
i)性感染症の発生状況は精度が高い全数把握調査を目標に2012年度のデータ解析を行い、一定の成果を得たが、定点把握調査と比較するという作業が必要である。
ii)淋菌の多剤耐性化は治療上の大きな課題であり、引き続き柱のテーマのひとつとしたい。
iii)若者への性感染症予防教育と、その性行動調査、さらに受診に結び付ける体制構築などの課題について2012年度にはその基礎的な検討が行えた。この基盤の上に2013年度には実効が上がるよう研究を進める。
iv)HPV感染症は、HPVワクチンの登場と普及によって、一段と研究の重要性が増大している。ワクチン副作用の問題とも並行して引き続き研究を加速させる。
v)マイコプラズマ・ジェニタリウム診断法の確立と普及に向けて着実な成果が得られており、2013年度には実用化を目指したい。クラミジア・トラコマティスについてもタイピングと薬剤感受性の関係など、検討を続ける。

公開日・更新日

公開日
2016-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225054Z