培養細胞感染系の確立されていない病原体の実験技術の開発と予防診断法に関する研究

文献情報

文献番号
201225017A
報告書区分
総括
研究課題名
培養細胞感染系の確立されていない病原体の実験技術の開発と予防診断法に関する研究
課題番号
H22-新興-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(浜松医科大学 医学部医学科感染症学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 片山 和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 本村 和嗣(国立精神・神経研究センター)
  • 恒光 裕(動物衛生研究所)
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 中西 章(国立長寿医療研究センター)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 勝二 郁夫(神戸大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,263,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
培養細胞での感染増殖系が確立されていないためにウイルス学的研究に制約があり、その感染症対策が十分でないウイルスについて、1)ウイルス様粒子(VLP)を利用した抗原抗体診断法の開発と血清疫学解析、2)実験モデルの開発とウイルス生活環の解析、3)宿主免疫応答の解析とワクチン開発の基盤研究を包括的に行う。
研究方法
各ウイルス材料よりcDNAを単離、組換え抗原発現系を構築し、ウイルス様粒子(VLP)等の作製を行った。
結果と考察
ノロウイルス:マウスノロウイルス(MuNoV)、ネコカリシウイルスのリバースジェネティックスシステムを構築、MuNoV はヒト細胞株でも感染性粒子作出に成功。MuNoVの増殖馴化に関与する遺伝子変異を同定。食中毒事例等由来の新鮮糞便検体を用いて各種培養細胞株へのHuNoV感染感受性を解析。次世代シークエンサーを用いて、HuNoVの混合感染の実態を解明。
ロタウイルス:ノトバイオートブタ感染系によるB型ロタウイルス病態モデルにおいて、遺伝学的、抗原性の異なるウイルス株間での病原性の違いを実証。
ポリオーマウイルス:KIPyV, WUPyVのpsudovirionを作製し中和抗体測定系を樹立。JCV、BKV、MCPyVと糖脂質糖鎖との相互作用を詳細に解析。MCV psudovirionを用いて、糖脂質糖鎖依存的な感染機構を実証。
E型肝炎ウイルス:各種レポーターを有するレプリコンの構築に成功。レプリコンをウイルス様粒子に包埋させる方法を樹立。ラットE型肝炎ウイルスのウイルス様粒子作製に成功、粒子形成に必要なアミノ酸領域を同定。
パピローマウイルス:子宮頸癌特異的治療薬の開発を目指し、E6/E6APと結合し、p53のユビキチン化を阻害する環状N-メチルペプチドを取得。
結論
培養細胞での感染増殖系が確立されていない病原ウイルス群について、VLP、psudovirion、近縁動物ウイルスモデルなど種々の新規技術、実験ツールを開発、取得した。これらを駆使して、ウイルス生活環、病態発現の分子機構解析、血清疫学的解析、更に、診断・予防・治療法の開発研究の進展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201225017B
報告書区分
総合
研究課題名
培養細胞感染系の確立されていない病原体の実験技術の開発と予防診断法に関する研究
課題番号
H22-新興-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(浜松医科大学 医学部医学科感染症学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 片山 和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 本村 和嗣(国立精神・神経研究センター)
  • 恒光 裕(動物衛生研究所)
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 中西 章(国立長寿医療研究センター)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 勝二 郁夫(神戸大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
培養細胞での感染増殖系が確立されていないためにウイルス学的研究に制約があり、その感染症対策が十分でないウイルスについて、1)ウイルス様粒子(VLP)を利用した抗原抗体診断法の開発と血清疫学解析、2)実験モデルの開発とウイルス生活環の解析、3)宿主免疫応答の解析とワクチン開発の基盤研究を包括的に行う。
研究方法
各ウイルス材料よりcDNAを単離、組換え抗原発現系を構築し、VLP等を作製した。
結果と考察
ノロウイルス:ヒトノロウイルス(HuNoV)に加え、より産生効率の高いマウスノロウイルス(MuNoV)、ネコカリシウイルスのリバースジェネティックスシステムを構築。MuNoV はヒト細胞株でも感染性粒子作出に成功。MuNoVの増殖馴化に関与する遺伝子変異を同定。食中毒事例等由来の新鮮糞便検体を用いて各種培養細胞株へのHuNoV感染感受性を解析。次世代シークエンサーにより、HuNoVの混合感染の実態、ヒト-ヒト間伝播に伴うNoV株の淘汰選択を解明。
ロタウイルス:B群ロタウイルス(RoV)の遺伝子型分類基準を確立。ノトバイオートブタによるB型RoV感染病態モデルを樹立、遺伝学的、抗原性の異なるウイルス株間での病原性の違いを見出。
ポリオーマウイルス:KIPyV, WUPyVのVLPを作製し、抗体検出系を確立、 我が国健常人における抗体保有率を解析。KIPyV, WUPyVのpsudovirionを作製し中和抗体測定系を樹立。JCV、BKV、MCPyVと糖脂質糖鎖との相互作用を詳細解析。MCPyVの糖脂質糖鎖依存的な感染機構を解明。
ボカウイルス:ボカウイルス3種類のVLPを作製し、抗体検出用ELISA法を樹立。
E型肝炎ウイルス:新規HEV感染性クローンを取得。HEV吸着侵入感受性の異なる細胞クローン種を単離。各種レポーターを有するレプリコンの構築に成功、レプリコンをVLPに包埋させる方法を樹立。ラットHEVのVLP作製に成功、粒子形成に必要なアミノ酸領域を同定。
B型肝炎ウイルス:HBV S粒子の分泌効率決定基がPreS2翻訳開始域に点在することを証明。
パピローマウイルス:子宮頸癌特異的治療薬の開発を目指し、E6/E6APと結合、p53のユビキチン化を阻害する環状N-メチルペプチドを取得。
結論
急性胃腸炎、小児呼吸器感染症、肝疾患等の原因因子でありながら、培養細胞での感染増殖系が確立されていない病原ウイルス群について、VLP、psudovirion、近縁動物ウイルスモデルなど種々の新規技術、実験ツールを開発、取得した。今後、これらを駆使して、ウイルス生活環、病態発現の分子機構解析、血清疫学的解析、更に、診断・予防・治療法の開発研究の進展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201225017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
次世代シークエンサーを駆使した網羅的なウイルス遺伝子解析によって感染伝播様式に多くの新知見を得た(次項参照)。ノトバイオートブタを利用したB群ロタウイルスの感染増殖、病態モデルを世界に先駆けて確立した。近年発見された種々のポリオーマウイルス、ボカウイルスなどについて、組換え技術によってウイルス様粒子を作製し、血清疫学的解析を行った。ポリオーマウイルスのシュードビリオンの作製に成功、同ウイルスの感染機構解析が可能となった。阻害剤探索に有用なE型肝炎ウイルスのレプリコンシステムを確立した。
臨床的観点からの成果
網羅的な遺伝子解析から、ノロウイルスの家族内伝播において、感染増殖するウイルス株が患者間で異なる場合があり、微少の準種が伝播に寄与する場合があること、IgA抗体が、多様なウイルス準種において感染優勢度を決定する要因になりうることを示した。同一患者が年に複数回、同じ遺伝子型のノロウイルスに感染しうることを初めて明らかにし、ノロウイルスの感染予防において、獲得免疫が有効に作用しない場合があることを提言した。
ガイドライン等の開発
一般向けに「ノロウイルス感染症と予防指針」を策定し、更に改定第二版で予防方策をさらに充実させ、広く普及に務めた(堺市ホームページより)。「B型肝炎ワクチンに関するファクトシート」を作成し、厚生科学審議会・感染症分科会・予防接種部会(平成22年)の審議資料とした。
その他行政的観点からの成果
国立感染症研究所のホームページで、ノロウイルス感染症に関して、ウイルス学的、疫学的情報から臨床症状、病原診断、治療予防法、さらに感染症法、食品衛生法における取り扱いまで詳細な情報の提供を行った。同ホームページから、関連する食中毒統計、感染症発生動向調査、病原微生物検出情報のデータも閲覧でき、ノロウイルスとその疾患に関する情報が網羅的に提供されている。
農研機構の研究所広報誌において、B群ロタウイルスの疫学、ウイルス学研究の成果を紹介し、広くロタウイルス感染症に関する情報提供を行った。
その他のインパクト
日本臨床ウイルス学会において、ノロウイルス研究の世界的第一人者を招聘し、ノロウイルスワクチンに関する特別講演会を企画、実施した(平成24年6月、大阪)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
80件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
90件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
「ノロウイルス感染症と予防指針」など

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hansman GS et al.
Structural basis for norovirus inhibition and fucose mimicry by citrate.
J Virol , 86 , 284-292  (2012)
原著論文2
Hansman GS et al.
Structural basis for broad detection of genogroup II norovirus by a monoclonal antibody that binds to a site occluded in the viral particle
J Virol , 86 , 3635-3646  (2012)
原著論文3
Watanabe M et al.
Formation of covalentry modified folding intermediates of simian virus 40 Vpl in large T antigen-expressing cells
J Virol , 87 , 5053-5064  (2013)
原著論文4
Soma J et al.
Whole-genome analysis of two bovine rotavirus C strains: Shintoku and Toyama.
J Gen Virol , 94 , 128-135  (2013)
原著論文5
Marthaler D et al.
Detection of substantial porcine group B rotavirus genetic diversity in the United States, resulting in a modified classification proposal for G genotypes.
Virology , 433 , 85-96  (2012)
原著論文6
Ando T et al.
Visualization and measurement of ATP levels in living cells replicating hepatitis C virus genome RNA
PLoS Pathogens , 8 , e1002561-  (2012)
原著論文7
Suzuki T et al.
Genetic divergence and classification of non-structural protein 1 among porcine rotaviruses of species B
J Gen Virol , 92 , 2922-2929  (2011)
原著論文8
Motomura K et al.
Divergent evolution of norovirus GII/4 by genome recombination over 2006-2009 in Japan
J Virol , 84 , 8085-8097  (2010)
原著論文9
Li TC et al.
Characterization of self-assembled virus-like particles of rat hepatitis E virus generated by recombinant baculoviruses
J Gen Virol , 92 , 2830-2837  (2011)
原著論文10
Mizutani T et al.
Novel DNA virus isolated from samples showing endothelial cell necrosis in the Japanese eel, Anguilla japonica
Virology , 157 , 116-120  (2011)
原著論文11
Tange S et al.
An SV40 mutant defective in Vp4 expression exhibit a temperature sensitive growth defect
Virus Res , 412 , 179-187  (2011)
原著論文12
Yamagishi Y et al.
Natural product-like macrocyclic N-methyl-peptide inhibitors against a ubiquitin ligase uncovered from a ribosome-expressed de novo library
Chemistry & Biology , 18 , 1562-1570  (2011)
原著論文13
Hansman GS et al.
Crystal structures of GII.10 and GII.12 norovirus protruding domains in complex with his to-blood group antigens reveal details for a potential site of vulnerability
J Virol , 85 , 6687-6701  (2011)
原著論文14
Deng L et al.
Hepatitis C virus infection promotes hepatic gluconeogenesis through an NS5A-mediated, Foxo1-dependent pathway
J Virol , 85 , 8556-8568  (2011)
原著論文15
Oka T et al.
Bioluminescence technologies to detect calicivirus protease activity in cell-free system and in infected cells
Antiviral Res , 90 , 9-16  (2011)
原著論文16
Masaki T et al.
Production of infectious hepatitis C virus by using RNA polymerase I-mediated transcription
J Virol , 84 , 5824-5835  (2010)
原著論文17
Saeed M et al.
Role of the ERAD pathway in degradation of heptitis C virus envelope proteins and production of the viral particles
J Biol Chem , 286 , 37264-37273  (2011)
原著論文18
Murayama A et al.
RNA polymerase activity and specific RNA structure are required for efficient HCV replication in cultured cells
PLoS Pathogens , 6 , e1000885-  (2010)
原著論文19
Li X et al.
Structure of hepatitis E vision-sized particle reveals an RNA-dependent viral assembly pathway
J Biol Chem , 285 , 33175-33183  (2010)
原著論文20
Li X et al.
Spatial configuration of hepatitis E virus antigen domain
J Virol , 85 , 1117-1124  (2011)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201225017Z