下部神経管閉鎖障害の病態・制御研究

文献情報

文献番号
201224117A
報告書区分
総括
研究課題名
下部神経管閉鎖障害の病態・制御研究
課題番号
H24-神経・筋-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大野 欽司(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 東 雄二郎(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所・神経発生生物学、分子生物学)
  • 芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院・リハビリテーション医学)
  • 柳田 晴久(福岡市立こども病院・整形外科)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学医学部附属病院・整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胎生初期における下部神経管閉鎖障害は二分脊椎とともに下肢運動感覚障害、膀胱・直腸機能障害を惹きおこす。本症における脊髄神経細胞障害の発症機構は十分に解明されておらず治療法も存在しない。妊娠初期における400 µg以上の葉酸摂取が本症の発症率を低下させることが知られている (N Eng J Med 350:101, 2004)。しかし、葉酸欠乏は本症の唯一の原因ではない。一部遺伝性症例がみられるが、多くは孤発例である。我々はホメオボックス遺伝子Zeb1, Zeb2欠損マウスが神経管閉鎖障害を起こすことを以前に報告した(Am J Hum Genet 72: 465, 2003; Dev Dyna 235: 1941, 2006)。モデル動物において神経管閉鎖に関わる遺伝子が他に80種類同定をされているが(Nat Rev Genet 4: 784, 2003)、ヒトにおいてはVANGL1 (New Engl J Med 356: 1432, 2007)と VANGL2 (New Engl J Med 362: 2232, 2010)の遺伝子変異が報告をされているのみである。本研究では下部神経管閉鎖障害の臨床・疫学調査を行なうとともに、下部神経管閉鎖障害の一部にはZEB1, ZEB2遺伝子を含む神経管形成遺伝子群のde novo変異が存在する可能性を考え網羅的なエキソームシークエンス解析を行う。また、SIP1を含めて脊髄運動神経細胞の維持・分化に関わる分子群の基盤的研究を行うとともに、脊髄運動神経細胞の軸索延長を増強する既認可薬スクリーニングを行い本症に対する治療戦略を探る。
研究方法
下肢運動・感覚神経障害、膀胱・直腸機能障害を主徴とする下部神経管閉鎖障害(嚢胞性ならびに潜在性二分脊椎症)を対象として、発端者ならびに家族より血液を採取し、トータル22名のDNA抽出を行った。一部のDNAをAgilent社SureSelect Human All Exon V4によりwhole exome captureを行い、x 50 coverage pair-end sequencing解析をおこなった。
 脊髄前角細胞のレーザーキャプチャーマイクロダイセクションサンプルのマイクロアレイ解析とRNA-seq解析にて脊髄前角細胞特異的に発現する遺伝子群を同定した。
 SIP1(Smad interacting protein 1)遺伝子のノックアウトマウスの解析を行った。
結果と考察
Whole exome captureの出力結果をBowtieによりヒトゲノムへのmappingを行った。GATKならびにStrand社Avadis NGSにてsingle nucleotide variants (SNV)解析を行った。高信頼度から低信頼度までパラメータを変動させながら、神経管形成遺伝子群を候補としてde novo遺伝子変異解析を行った。本報告書作成段階において原因に関与すると想定をされるSNVsはみつかっていない。
 脊髄前角細胞のレーザーキャプチャーマイクロダイセクションサンプルのマイクロアレイ解析とRNA-seq解析にて脊髄前角細胞特異的にRSPO2が発現をすることを同定した。その受容体がLGR5である可能性を見出した。
 SIP1(Smad interacting protein 1)遺伝子のノックアウトマウスにおいては、胎生8.5日から9日にかけて起きる神経管閉鎖が起こらないことを見出し、SIP1 KOマウスはヒトにおける二分脊椎症のモデルとなり得ることを確認した。
結論
 Exome capture resequencing解析による下部神経管閉鎖障害に関わる遺伝学的背景の研究は少数例の解析では結論を得ることができなかった。RSPO2の神経突起延長促進効果ならびに神経筋接合部形成促進作用を見出した。SIP1が神経管閉鎖に関わる重要な因子であることを同定した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224117Z