脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201224106A
報告書区分
総括
研究課題名
脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究
課題番号
H22-神経・筋-一般-018
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 三國 信啓(札幌医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 吉峰 俊樹(大阪大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 高安 正和(愛知医科大学病院 脳神経外科)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学附属病院 神経内科)
  • 馬場 久敏(福井大学医学部附属病院 整形外科)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部附属病院 救急医学講座)
  • 喜多村 孝幸(日本医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 深尾 彰(山形大学大学院医学系研究科 公衆衛生・予防医学講座)
  • 細矢 貴亮(山形大学医学部附属病院 放射線診断科)
  • 畑澤 順(大阪大学医学部 生体情報医学講座)
  • 篠永 正道(国際医療福祉大学熱海病院 脳神経外科)
  • 佐藤 慎哉(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 西尾 実(名古屋)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、脳脊髄液減少症の科学的根拠に基づく診断基準を作成、新たな診断基準による本症の原因疾患別患者割合の把握、不確実な診断・治療による合併症発生の回避を目的とし、最終的には誰が見ても納得できる診療指針の作成を目指す。
研究方法
 (1)本症に関する文献レビューを行い、臨床像を検討し、診断プロトコールを作成、作成した診断プロトコールによる前方視的解析を行い、診断基準を確立する。(2)その後、新たな診断基準による原因疾患別患者割合と治療法の検討をおこない、診療ガイドラインを作成する。このうち平成24年度は、平成23年度に公表した「脳脊髄漏出症の画像判定基準・画像診断基準」の検証と本症の治療法の1つである「ブラッドパッチ療法」の有効性・安全性の評価を、新たな臨床試験で行う。
結果と考察
 新たな臨床試験のため、研究班の参加施設である日本医科大学が、本症の治療法の一つであるが保険適応外の治療法である「ブラッドパッチ療法」を、先進医療として申請し平成24年6月に承認された。これに続いて漸次申請し、現時点で研究班の7施設が承認されている。先進医療が承認されたことを受けて、さらにブラッドパッチ療法を含めた治療法の検討と公表した基準では「髄液漏あり」と診断することが困難な周辺病態の研究を目的とした新たな臨床試験を平成24年6月から開始、平成25年3月末の時点で23例が登録され、現在も研究継続中である。現在まで登録された症例の概要は、冊子体を参照されたい。
結論
 今年度は、研究班が策定した基準により「脳脊髄液漏出症」と診断された患者を対象にブラッドパッチ療法が先進医療として認められた。現在、診断基準の検証と治療法の安全性有効性を評価するための臨床試験を継続中であり、本症の治療法確立に向け確実に一歩前進したものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201224106B
報告書区分
総合
研究課題名
脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究
課題番号
H22-神経・筋-一般-018
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 三國 信啓(札幌医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 吉峰 俊樹(大阪大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 高安 正和(愛知医科大学病院 脳神経外科)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学附属病院 神経内科)
  • 馬場 久敏(福井大学医学部附属病院 整形外科)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部附属病院 救急医学講座)
  • 喜多村 孝幸(日本医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 深尾 彰(山形大学大学院医学系研究科 公衆衛生・予防医学講座)
  • 細矢 貴亮(山形大学医学部附属病院 放射線診断科)
  • 畑澤 順(大阪大学医学部 生体情報医学講座)
  • 篠永 正道(国際医療福祉大学熱海病院 脳神経外科)
  • 佐藤 慎哉(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 西尾 実(名古屋市立大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、脳脊髄液減少症の科学的根拠に基づく診断基準を作成、新たな診断基準による本症の原因疾患別患者割合の把握、不確実な診断・治療による合併症発生の回避を目的とし、最終的には誰が見ても納得できる診療指針の作成を目指す。
研究方法
 (1)本症に関する文献レビューを行い、臨床像を検討し、診断プロトコールを作成する。(2)作成した診断プロトコールによる前方視的臨床試験を行い、診断基準を確立する。(3)作成した診断基準の検証と治療法を検討するため新たな前方視的臨床試験を行う。(4)臨床試験の結果をもとに、診療ガイドラインを作成する。
結果と考察
 (1)平成19年度に臨床研究のためのプロトコールを作成した。(2)各研究者所属施設の倫理委員会の審議を経て登録を開始、第1例が平成20年5月に登録された。その後、平成22年8月、登録症例100例で解析を行った。その結果、100例中16例が”髄液漏あり”と判定され。その結果に基づき、「脳脊髄液漏出症の画像判定基準(案)・画像診断基準(案)」(平成22年度総括研究報告書(冊子版)参照)を作成した。本基準案は、関連学会の承認・了承を得て平成23年10月に正式な基準として公表した。(3)平成24年6月、本基準にて脳脊髄漏出症と診断された患者に対してブラッドパッチ療法が先進医療として承認された。先進医療が認められたことを受けて、現在ブラッドパッチ療法を含めた治療法の検討と本基準では「髄液漏あり」と診断することが困難な周辺病態の研究を目的とした新たな臨床試験を平成24年6月から継続中である。(4)前述の臨床試験終了後、その結果をもとに診療ガイドライン作成する予定である。
結論
 研究期間中に、当初目的とした診療ガイドラインの完成には至らず、現在も診断基準の検証と治療法の安全性・有効性を評価するための臨床試験を継続中であるが、平成23年度には「脳脊髄液漏出症の画像判定基準・画像診断基準」を公表することができ、平成24年度にはその基準により「脳脊髄液漏出症」と診断された患者を対象にブラッドパッチ療法が先進医療として認められた。このことから、本研究により「脳脊髄液減少症の診断と治療法の確立」に向け確実に一歩前進したものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201224106C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 過去に脳脊髄液減少症とされた臨床概念と診断の根拠とされていた画像診断所見を検証し、「脳脊髄液減少症」と診断されている中に「脳脊髄液漏出症」、「低髄液圧症」、「その他の病態」が混在していること。また、現時点で診断可能であるものは「脳脊髄液の漏出」と「低髄液圧」であることを明確にした。その上で、脳脊髄液減少症の科学的根拠に基づく診断と治療を行うためには、それぞれの病態に基づく診断基準の必要性を明確に示した。
臨床的観点からの成果
 今回の研究期間中に、本症に関連のある我が国の8学会の承認・了承を得た「脳脊髄液漏出症の画像判定基準・画像診断基準」を公表した。さらにその診断基準の臨床的妥当性が認知されたことにより、本基準を満たした患者を対象に、治療法の一つである「ブラッドパッチ療法」が平成24年6月に先進医療として認められた。さらに先進医療での治療成績を基に、平成28年4月より保険収載となった。
ガイドライン等の開発
 本研究班の臨床研究結果をもとに、本症に関係のある日本脳神経外科学会、日本整形外科学会、日本神経学会、日本頭痛学会、日本脳神経外傷学会、日本脊髄外科学会、日本脊椎脊髄病学会、日本脊髄障害医学会の承認を受けた「脳脊髄液漏出症の画像判定基準・画像診断基準」を平成23年10月に開催された日本脳神経外科学会第70回学術総会(横浜)にて公表した。
その他行政的観点からの成果
 近年、我が国では「脳脊髄液減少症」と交通外傷の因果関係をめぐり法廷で数多く争われるなど種々の社会問題を起こし、その臨床研究の必要性が国会でも取り上げられてきた。脳脊髄液減少症に関して、平成16年末には、患者やその支援者等が保険適用を求める約10万人の署名を厚生労働省に提出、また47都道府県全ての議会で病態解明・研究の推進を求める決議がなされ、本年度も国に対して研究の進捗状況に関する複数回の国会質問がなされている。研究班が公表した画像診断基準は、既に裁判の根拠としても採用されている。
その他のインパクト
 本研究班の研究内容に関しては、ガイドラインを公表した平成23年10月、ブラッドパッチ療法が先進医療として認められた平成24年6月、画像診断基準が裁判の根拠とされた平成25年4月を中心として、これまで複数回マスコミに取り上げられている。

発表件数

原著論文(和文)
22件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
41件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
画像判定基準・画像診断基準公表
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「ブラッドパッチ療法」先進医療申請・承認

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐藤慎哉,嘉山孝正
脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準.
脳神経外科速報 , 22 (2) , 200-206  (2012)
原著論文2
嘉山孝正,佐藤慎哉
脳脊髄液漏出症治療の考え方-ガイドライン策定を目指して-.
日本医事新報 , 4599 (6) , 71-77  (2012)
原著論文3
佐藤慎哉
脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準.
日本保険医学会誌 , 110 (3) , 193-201  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-06-12

収支報告書

文献番号
201224106Z