文献情報
文献番号
201224055A
報告書区分
総括
研究課題名
精神療法の有効性の確立と普及に関する研究
課題番号
H22-精神-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
研究分担者(所属機関)
- 岡本泰昌(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 岩田仲生(藤田保健衛生大学医学部)
- 仲本晴男(沖縄県立総合精神保健福祉センター)
- 古川壽亮(京都大学大学院医学研究科)
- 金吉晴(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター成人精神保健研究部)
- 元村直靖(大阪医科大学看護学部)
- 水島広子(水島広子こころの健康クリニック)
- 清水栄司(千葉大学大学院医学研究科)
- 藤澤大介(国立がんセンター東病院外来部)
- 中川敦夫(独立行政法人国立精神・神経医療研究センタートランスレーション・メディカルセンター)
- 渡辺範雄(名古屋市立大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,855,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
うつ病、不安障害等の精神疾患に対する認知療法・認知行動療法(以下、認知行動療法)の機序、有効性、治療可能性を予測する因子について検討し、効果が実証された精神療法を身につける方法論を開発し、効果的な研修組織のモデルを構築する。
研究方法
①精神療法の効果に関する研究:うつ病の認知行動療法に関しては、わが国最初の電子システムを利用したシングルブラインド無作為対照比較試験を継続した。対象は、通常治療を2カ月以上受けても、中等度以上のうつ症状を認めているうつ病患者である(目標症例数=80)。平成25年2月末日時点で76例(95.0%)が参加している。コクラン共同計画の枠内で、うつ病に対する種々の精神療法のネットワークメタアナリシスを行った。行動活性化の有用性の確認、認知行動療法の効果の生物学的評価の可能性、復職支援における認知行動療法の活用可能性について研究を進めた。不安障害に関してもマニュアルを作成して、その効果について検証した。摂食障害への対人関係療法の効果を検証した。
②科学的根拠に基づく精神療法を行える医師の養成するためのシステムの構築:海外の研修も参考に、ワークショップ(初回2日間+ブラッシュアップ1日間)と16週間からなるスーパービジョンからなる研修を継続し、研修効果を評価した。
②科学的根拠に基づく精神療法を行える医師の養成するためのシステムの構築:海外の研修も参考に、ワークショップ(初回2日間+ブラッシュアップ1日間)と16週間からなるスーパービジョンからなる研修を継続し、研修効果を評価した。
結果と考察
①精神療法の効果に関する研究:
うつ病の認知行動療法に関する電子システムを利用したシングルブラインド無作為対照比較試験では、ベースライン時の、認知行動療法施行群の平均年齢は39.2歳、平均HAMD 20.9、平均BDI 27.0に対して、通常治療群では、平均年齢41.5歳、平均HAMD 20.8、平均BDI 25.6であり、両群に差はなかった。現在目標症例数の92.5%に達し、残り6例のエントリーを目指し症例を蓄積中である。研究者参加者全体では16週間においてQIDSの改善が認められ、安全に試験が遂行されている。また職種別の認知療法の効果量の違いに関する検討を行い、16週評価時において医師群と十分なトレーニングを受けたコメディカル群の間に統計的な有意差は認められなかった(t=0.26,d=34 p=0.42)。ネットワークメタアナリシスの結果では、反応及び治療の受容性に関して、第3世代認知療法、認知行動療法、対人関係療法がトップ3に入ったが、上記の推奨は暫定的なものであると考えられた。また、本邦で利用可能な行動活性化の治療者マニュアルおよび患者さん向け資料の試案を作成した。脳活動の経時的変化を機能的MRIを用いて検討した研究では、CBT開始後一貫して症状が改善するパターンが最も多かったが、一部症状が改善仕切らないパターンや症状改善が遅れて見られるパターンも存在していた。薬理遺伝学の研究を行った研究からは大規模サンプルを用いた解析が不可欠であることが示された。復職支援に関しては、時代の変化に対応できる慢性うつ病の回復システムの構築の必要性と効果が示された。
社交不安障害に対する認知行動療法の有用性が非ランダム化比較試験によって示唆された。児童青年の不安障害に対する認知行動療法プログラムには11名が割り付けられた。
②科学的根拠に基づく精神療法を行える医師の養成するためのシステムの構築:
うつ病の認知行動療法について、ワークショップ→ITを利用したスーパービジョン→ブラッシュアップ・ワークショップという形式の研修体制を構築し、教材・評価資材を整備した。電話やITを活用することによって、治療者が職場を離れることなく全国レベルでスーパービジョンを受けることが可能になった。このシステムは、受講者の満足度、自信、知識、技術において効果が認められた。
うつ病の認知行動療法に関する電子システムを利用したシングルブラインド無作為対照比較試験では、ベースライン時の、認知行動療法施行群の平均年齢は39.2歳、平均HAMD 20.9、平均BDI 27.0に対して、通常治療群では、平均年齢41.5歳、平均HAMD 20.8、平均BDI 25.6であり、両群に差はなかった。現在目標症例数の92.5%に達し、残り6例のエントリーを目指し症例を蓄積中である。研究者参加者全体では16週間においてQIDSの改善が認められ、安全に試験が遂行されている。また職種別の認知療法の効果量の違いに関する検討を行い、16週評価時において医師群と十分なトレーニングを受けたコメディカル群の間に統計的な有意差は認められなかった(t=0.26,d=34 p=0.42)。ネットワークメタアナリシスの結果では、反応及び治療の受容性に関して、第3世代認知療法、認知行動療法、対人関係療法がトップ3に入ったが、上記の推奨は暫定的なものであると考えられた。また、本邦で利用可能な行動活性化の治療者マニュアルおよび患者さん向け資料の試案を作成した。脳活動の経時的変化を機能的MRIを用いて検討した研究では、CBT開始後一貫して症状が改善するパターンが最も多かったが、一部症状が改善仕切らないパターンや症状改善が遅れて見られるパターンも存在していた。薬理遺伝学の研究を行った研究からは大規模サンプルを用いた解析が不可欠であることが示された。復職支援に関しては、時代の変化に対応できる慢性うつ病の回復システムの構築の必要性と効果が示された。
社交不安障害に対する認知行動療法の有用性が非ランダム化比較試験によって示唆された。児童青年の不安障害に対する認知行動療法プログラムには11名が割り付けられた。
②科学的根拠に基づく精神療法を行える医師の養成するためのシステムの構築:
うつ病の認知行動療法について、ワークショップ→ITを利用したスーパービジョン→ブラッシュアップ・ワークショップという形式の研修体制を構築し、教材・評価資材を整備した。電話やITを活用することによって、治療者が職場を離れることなく全国レベルでスーパービジョンを受けることが可能になった。このシステムは、受講者の満足度、自信、知識、技術において効果が認められた。
結論
うつ病の認知行動療法の効果検証の研究体制のモデルを構築し、シングルブラインド無作為対照比較試験を行った。不安障害に関しても、社交不安障害の認知行動療法のマニュアル作成を行い、非ランダム化比較試験による効果検証を行った。研修に関しては、治療者が職場を離れることなく全国レベルでスーパービジョンを受けることが可能な仕組みを構築した。
公開日・更新日
公開日
2015-05-21
更新日
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