文献情報
文献番号
201224051A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患の生物学的病態解明研究-最新の神経科学・分子遺伝学との融合-
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-精神-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院 医学系研究科情報統合医学講座(精神医学))
研究分担者(所属機関)
- 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学)
- 岩田 仲生(藤田保健衛生大学医学部精神医学)
- 野田 隆政(国立精神・神経医療研究センター病院精神医学)
- 橋本 亮太(大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
18,095,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
精神疾患の診断は医師が症状を診ることによりなされており、客観的な検査等による診断法は未だ確立しておらず、客観的・科学的診断法の開発が必要とされている。抗精神病薬や抗うつ薬は約半数については治療効果が不十分であり様々な副作用が起こる。よって有効性が高く副作用の少ない治療薬の開発が待ち望まれている。本研究では新たな診断法・治療法への応用を目指して、最新の神経科学と分子遺伝学融合させた手法を用いて統合失調症とうつ病の病態を解明することを第一の目的とする。その成果の普及啓発のための提言を行い、国民の精神疾患への神経科学的な理解を深めて精神疾患に対する誤解や偏見を打破することを第二の目的とする。
研究方法
世界で最大規模となる三千以上のゲノムサンプルとそれに付随する数百以上の中間表現型データを最新の神経科学・遺伝学・分子生物学の手法を用いて解析する。サンプル収集を続けつつ、収集済みのサンプルにて神経科学的な中間表現型と関連する多型を見出し、統合失調症やうつ病のリスク遺伝子を同定する。
結果と考察
大阪大学では、中間表現型付きのゲノムサンプルの全ゲノムタイピングを行い、統合失調症の認知機能障害に関与する遺伝子を見出し、この手法が非常に有用であることを示唆するデータを得た。最も強い関連が認められたDEGS2遺伝子のミスセンス変異は機能解析が比較的容易であり、この分子に基づいた創薬に期待が持てる知見である。
藤田保健衛生大学では、「覚醒剤により精神病となるリスクSNP」は、統合失調症の患者に多く見られ、抗精神病薬の反応性に関連するSNPは統合失調症に多く存在することを見出した。
名古屋大学では、PTPRA 遺伝子が統合失調症のリスクとなり、そのノックアウトマウスが統合失調症の新たなモデル動物となることを提案した。
国立精神・神経医療研究センターでは、NIRSの有用性および、限界、今後の課題について検討した。NIRSにおいて大うつ病性障害、統合失調症パターンは6~7割の確率で診断と一致したが、双極性障害パターンにおいては40%の一致率に留まっており、双極性障害の発症前診断の可能性が示唆された。
藤田保健衛生大学では、「覚醒剤により精神病となるリスクSNP」は、統合失調症の患者に多く見られ、抗精神病薬の反応性に関連するSNPは統合失調症に多く存在することを見出した。
名古屋大学では、PTPRA 遺伝子が統合失調症のリスクとなり、そのノックアウトマウスが統合失調症の新たなモデル動物となることを提案した。
国立精神・神経医療研究センターでは、NIRSの有用性および、限界、今後の課題について検討した。NIRSにおいて大うつ病性障害、統合失調症パターンは6~7割の確率で診断と一致したが、双極性障害パターンにおいては40%の一致率に留まっており、双極性障害の発症前診断の可能性が示唆された。
結論
これらの研究成果は、統合失調症やうつ病をはじめとする精神疾患の新たな診断法・治療法の開発に役立つものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2013-05-02
更新日
-