加齢黄斑変性に対する個別化医療実現のための前向き臨床研究にもとづくゲノムワイド関連解析

文献情報

文献番号
201224039A
報告書区分
総括
研究課題名
加齢黄斑変性に対する個別化医療実現のための前向き臨床研究にもとづくゲノムワイド関連解析
課題番号
H23-感覚-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 長久(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山城 健児(京都大学 医学研究科 )
  • 根木 昭(神戸大学 医学研究科 )
  • 米谷 新(埼玉医科大学 医学研究科 )
  • 岩田 岳(東京医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,964,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内約15施設でこれまでに光線力学療法を施行されてきた患者の治療経過を参考に、血液サンプルを用いてゲノムワイド関連解析を行うことによって、光線力学療法の治療結果に相関する遺伝子多型を解明し、また抗VEGF薬による治療結果に相関する遺伝子多型を検出するための前向き研究を開始した。平成24年度には前向き研究の治療結果を参考にゲノムワイド関連解析を行って、抗VEGF薬による治療結果に相関する遺伝子多型を明らかにした。平成25年度には治療方針を決定するために有用な遺伝子多型について検証を行った後にそれらの迅速検出キットを作成し、個別化医療の精度を確認していく。
研究方法
【後ろ向き研究;光線力学療法】
各施設で光線力学療法を施行し、1年以上の経過観察が可能であった患者に対して、本研究の説明を行い、協力が得られた患者から同意のうえで血液サンプルを採取し、連結可能匿名化を行ったあとにAMD個別化医療研究会参加施設(京大、神戸大、埼玉医大、東京医療センター)に血液サンプルを送付し、DNA抽出を行い、抽出されたDNAを京大眼科に送付した。イルミナ社の2.5Mチップを用いてゲノムワイド関連解析を開始した。各施設から得られた治療結果(有効性、視力予後、再発の有無)を参考に、治療結果に影響を与えうる遺伝子多型を検出していく予定である。
 また、本研究に用いることができたDNAチップには限りがあり、低いオッズ比を示す遺伝子多型は検出できない可能性が高いため、後述の抗VEGF治療に関するゲノムワイド関連解析から得られた治療結果に相関する候補遺伝子多型について、光線力学療法を施行された症例についてもその遺伝子多型と治療反応性の相関についても検証を行うことにより、遺伝子多型―治療反応性の関係を明らかにしていく予定である。

【前向き研究;抗VEGF治療】
すべての施設での倫理委員会の承認を得た。各施設で20-30例程度のエントリーを行い、通常の抗VEGF治療を順次行っている。平成24年度内には、1年以上の経過が追えた患者が256例を超えたため、その256例のDNAサンプルと臨床経過(治療の有効性、視力予後、再発の有無)を用いてゲノムワイド関連解析を行った。有力な候補遺伝子が発見できたため、平成25年度には残りの登録済みサンプルを用いてその関連を検証し、光線力学療法および抗VEGF治療を行った際の反応・予後を予測できることが判明した遺伝子多型を検出するための診断キットを作成し、各施設で上記キットを用いて、治療開始前に遺伝子診断を行うことによって、各患者に最適な治療方針を決定して治療を行い、その効果を検証していく。
結果と考察
【後ろ向き研究;光線力学療法】
光線力学療法を施行済みの96例からDNAを抽出し、イルミナ社の2.5Mチップを用いた一塩基多型の検出が可能であった。現在、治療反応性・治療予後との相関を認める遺伝子を解明するために、ゲノムワイド関連解析を行っているが症例数が少なく、有意な遺伝子多型が発見出来ていない。抗VEGF治療の研究から得られた候補遺伝子についても研究を進めていく。

【前向き研究;抗VEGF治療】
すべての施設での倫理委員会の承認を得た後、web上に作成した症例登録用ページに登録を開始し、登録を続けている。256例を用いた研究で有力な候補遺伝子が発見できた。さらにこの検証に用いるために必要な症例も既に登録済みである。

光線力学療法の治療反応性・治療予後との相関を認める遺伝子の候補がみつかりつつあると考えている。抗VEGF抗体治療の治療反応性・治療予後との相関を認める遺伝子についても有力が候補遺伝子が発見されており、さらに追試をおこなうためにも十分な症例数が確保できており、有用な結果が得られると考えられる。
結論
光線力学療法および抗VEGF抗体治療の治療反応性・治療予後との相関を認める遺伝子が解明され、加齢黄斑変性の個別化医療が実現できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224039Z