障害者の防災対策とまちづくりに関する研究

文献情報

文献番号
201224032A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の防災対策とまちづくりに関する研究
課題番号
H24-身体・知的-一般(復興)-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
北村 弥生(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 前川 あさ美(東京女子大)
  • 筒井 澄栄(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 河村 宏(NPO 支援技術開発機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、災害時要援護者のうち対策が遅れている知的・発達障害(児)者を中心に、身体障害者(肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、盲ろう)に対する災害準備と急性期・復旧期・復興期における情報提供と心理的支援を含めた福祉的避難支援のあり方を5つの側面から明らかにすることを目的とする。以下、特別に指定しない場合は全障害を指す。
 3年間の成果としては、5つのガイドライン(あるいはマニュアル)を作成することを目標とする。すなわち、1)「被災地における障害(児)者に対する経時的支援ガイドライン」,2)「障害に関する災害時情報支援ガイドライン」,3)障害(児)者自身が理解できる「防災マニュアル」,4)障害(児)者の個別避難計画の事例集,5)「避難所における障害(児)者への配慮ガイドライン」である。
研究方法
 第一課題は、東日本大震災における発達障害(児)者のニーズと有効な支援のあり方に関する研究で、東日本大震災被災地(特に宮城県)における障害(児)者とその家族及び支援者に対する支援を介して、災害時ならびに経過にそって浮かび上がったニーズを抽出した。
 第二課題は、知的・発達障害者に対する災害時の情報支援に関する研究で、発達障害情報・支援センターおよび全国の発達障害者支援センターの役割が、東日本大震災において果たせたのか、課題と対処方法は何かを明らかにすることを目的として、全国の発達障害者支援センターを対象とする調査と震災ビッグデータの解析を行った。
 第三課題は、被災地における障害(児)者の個人避難計画と避難所における配慮ガイドラインの作成で、全国における要援護者の個人避難計画の先行事例を調査した。
 第四課題は、障害(児)者を対象とした災害事前訓練の開発で、日本自閉症協会に研究代表者が協力して作成した「自閉症のひとのための防災ハンドブック」のマルチメディアデイジー版を作成し、障害学生に予備的な評価を依頼した。
 第五課題は、災害要援護者支援研究に関する国際比較研究で、国連防災会議に災害時要援護者支援を提言することも視野に入れて、地震と津波への脅威を共有する環太平洋諸国間で研究成果を共有することを目的とする。平成24年度には、米国緊急事態管理庁FEMAの災害時要援護者支援部門を訪問し、連邦政府関係機関と災害ワークショップを行った。
結果と考察
 第一課題では、発災から平成24年度末までを4段階に分け、それぞれの課題と対処方法を整理した。たとえば、発災日の月違いの日に不安を高めるアニバーサリー反応があること、この反応へのケアで大事なことは、異常な反応ではなく、立ち直ってきた経過が無意味にならないことの理解であり、イベントに参加したり、共感できる人と過ごしたり、一人で静かに過ごすなど受容を急がせないことであること等を指摘した。
 第二課題では、全国の発達障害者支援センターへの災害に関する相談は平成24年度にも継続していることを明らかにするとともに、発災時にツイッターは発達障害情報・支援センターに関する情報は仲介したが個別の支援には活用されにくかったことを示した。
 第三課題では、町内会、当事者組織、行政、当事者個人による災害事前準備の先進例を紹介した。たとえば、消防OBにより町内会が独自の要援護者要領を作成した事例でも、地域で把握されている障害者は少数で、具体的な避難支援の方法がわからないことが課題であった。当事者組織による自主的な避難訓練が、町役場と町内会の自然な協力体制を導いた事例では、東日本大震災でも迅速な避難を実現したこと、しかし、避難所での町民との共生など課題は残っていた。自立生活をする重複障害者の例では、周到な用意を自助でしても、避難に近隣の支援が必要なこと、災害時の介助者の確保などの課題が残っており、共助と公助による解決が期待された。また、モデル地域における障害者を対象にした災害準備の調査を介して、個別避難計画を次年度に作成するモニター50名を得た。
 第四課題では、作成した教材の操作性は高く評価されたが、内容への動機づけを対象者が欠いており、災害に対する準備と災害時に何が起こるかの情報提供が、まず必要なことを明らかにした。
第五課題では、災害時要援護者支援では事前準備が重要なこと、避難行動の方法は国際的に未解決の課題であることを共有した。
結論
5つの研究課題のいずれにおいても、災害前の準備が重要であることが指摘され、避難行動の方法は国際的に未解決の課題であることが確認された。平成25年度には、個人避難計画を中心とした事前準備の事例蓄積を各分野において整備することを目的とする計画である。また、特に、緊急性が高く、孤立が指摘された訪問学級児童・生徒・教員への対策を追加する。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224032Z