糖尿病の重症化・合併症予防に資する地域連携の多角的評価の研究

文献情報

文献番号
201222018A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病の重症化・合併症予防に資する地域連携の多角的評価の研究
課題番号
H22-循環器等(生習)-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
春日 雅人(独立行政法人国立国際医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 磯 博康(大阪大学大学院 医学系研究科 )
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療研究センター )
  • 松久 宗英(徳島大学 糖尿病臨床・研究開発センター)
  • 武田 倬(鳥取県立中央病院)
  • 上村 伯人(社団法人 上村医院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省が行った糖尿病実態調査によると、糖尿病が強く疑われる人は平成19年度に890万人で、この10年間で約30~50%増加している。このような背景をうけ、様々な糖尿病対策が試みられているが、糖尿病対策において最も遅れており、かつ最も難しい課題のひとつは日本全国の各地域で地域医療連携体制を構築し、それを実効性のあるものとして各地域で機能させることである。そこで本研究では、「町」(島根県隠岐郡、海士町)・「市」(島根県、安来市)・「二次医療圏」(新潟県魚沼二次医療圏)・「県」(徳島県)という4つの規模の異なる地域を取上げ、3年間の研究期間の最初と最後に、血糖コントロール、合併症有病数、糖尿病に係わる医療費、糖尿病に対する理解度、糖尿病患者を支える取り組みの質等の観点からアンケート等の調査を行い、各地域で実施された地域医療連携施策について評価する。
研究方法
血糖コントロールの指標としては特定健診で得られたHbA1c(JDS)値を用いた、糖尿病合併症の有病数については診療録、日本透析学会のデータ等によった。糖尿病に係る医療費は平成24年度5月分の国民健康保険のレセプトから算出した。
結果と考察
1.HbA1c(JDS)値の分布
(ⅰ)海士町:糖尿病登録者のうち糖尿病健診又は診療所を受診した者のHbA1c(JDS)値(%)の分布は、35%(6.0以下),16%(6.1-6.4),37%(6.5-7.9),12%(8.0以上)
(ⅱ)安来市:糖尿病健診受診者のうち糖尿病治療中の者のHbA1c(JDS)値(%)の分布は、33%(6.0以下),21%(6.1-6.4),39%(6.5-7.9),7%(8.0以上)
(ⅲ)魚沼二次医療圏:継続して県内の医療機関を受診していた糖尿病者のHbA1c(JDS)値(%)の分布は、25%(6.0以下),40%(6.1-6.4),29%(6.5-7.9),6%(8.0以上)
(ⅳ)徳島県:継続して県内の医療機関を受診していた糖尿病者のHbA1c(JDS)値(%)の分布は、33%(6.0以下),28%(6.1-6.4),30%(6.5-7.9),9%(8.0以上)
2.合併症:平成24年度における合併症(糖尿病網膜症, 糖尿病腎症)の有病数については現時点ではいまだ集計が終了していないため、データが取れなかった。
3.医療費
 平成24年5月の国民健康保険のレセプトより算出した医療費は海士町:26人, 48万円(1.9万円/人),安来市:180人,679万円(3.8万円/人),徳島県:7,480人,2.23億円(3.0万円/人)であった。魚沼二次医療圏に関しては現時点ではデータが得られていない。
4.アンケート調査
 患者向けアンケートでは海士町 79名(回収率64%), 安来市 498名(回収率69%), 魚沼二次医療圏 706名(回収率47%),徳島県 1921名(回収率42%)から回答を得た。医師向けアンケートでは、海士町 2名(回収率100%), 安来市 32名(回収率64%), 魚沼二次医療圏 29名(回収率50%), 徳島県 173名(回収率41%)から回答を得た。
以下にアンケート調査から得られた各地域の特徴について記載する。
海士町:多くの項目について、他の地域と同等の結果であったが、糖尿病に関する理解度が他の地域より低かった。
安来市:他の地域に比べて、患者が病状をよく把握しており、食事・運動療法の実施率が高く、内服忘れ・インスリン注射忘れが少なかった。また、糖尿病手帳の使用目的として、「他科への説明」が最も多く、地域連携が推進されている表れと考えられた。
魚沼二次医療圏:他の地域と比べて、健診をきっかけとした糖尿病診断の割合が多く、合併症を有する患者の割合が少なかった。
徳島県:他の地域と比べて、健診をきっかけとした糖尿病診断の割合が小さく、他疾患に伴う診断の割合が大きかった。また、他の地域と比べて、糖尿病手帳の使用状況が低く糖尿病予備軍に対して低介入の医師が多かった。
結論
平成24年度にわが国の4つの地域で糖尿病の実態調査を行った。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201222018B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病の重症化・合併症予防に資する地域連携の多角的評価の研究
課題番号
H22-循環器等(生習)-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
春日 雅人(独立行政法人国立国際医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 磯 博康(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療研究センター)
  • 松久 宗英(徳島大学 糖尿病臨床・研究センター)
  • 武田 倬(鳥取県立中央病院)
  • 上村 伯人(社団法人 上村医院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省が行った糖尿病実態調査によると、糖尿病が強く疑われる人は平成19年度に890万人で、この10年間で約30%増加している。このような背景をうけ、様々な糖尿病対策が試みられているが、糖尿病対策において最も遅れており、かつ最も難しい課題のひとつは日本全国の各地域で地域医療連携体制を構築し、それを実効性のあるものとして各地域で機能させることである。そこで本研究では、「町」(島根県隠岐郡、海士町)・「市」(島根県、安来市)・「二次医療圏」(新潟県魚沼二次医療圏)・「県」(徳島県)という4つの規模の異なる地域を取上げ、3年間の研究期間の最初と最後に、血糖コントロール、合併症有病数、糖尿病に係わる医療費、糖尿病に対する理解度、糖尿病患者を支える取り組みの質等の観点からアンケート調査し、各地域で実施された地域医療連携施策について評価する。
研究方法
1.血糖のコントロール:平成22年度と24年度との比較のみならず、できるだけ多くの年度での比較を可能とするため、当初の予定と異なり基本的には特定健診のデータを用いて評価することとした。
2.糖尿病合併症の有病数:診療録,国民健康保険のレセプト,各地域の代表的基幹病院での成績あるいは日本透析学会のデータ等によった。
3.糖尿病に係る医療費 :当該年度の5月分の国民健康保険のレセプトに(40~74歳)において、疾病コード1が糖尿病であるレセプトの請求点数を基に算出した。但し、魚沼二次医療圏については5月という月単位でなく年単位の数値を基に算出した。
4.糖尿病に対する理解度ならびに糖尿病患者を支える取り組みの質に関するアンケート調査 :患者向けのアンケートと医師向けのアンケートを作成し、各地域においてアンケート調査を行った。
結果と考察
糖尿病患者のHbA1c値に関しては魚沼二次医療圏と徳島県で改善傾向が認められた。合併症に関しては平成24年度の成績は現在集計中であり最終的な数字は得られていない。糖尿病に係る医療費については各地域において大きな変化は認められない。アンケート調査では経時的に変化が認められたのは、徳島県における食事療法の実施率にやや改善を認めた点であり。その他の地域では明らかな経時的変化は認められなかった。
本研究を実際に開始してみると、いろいろな問題点があることが明らかとなった。まずは糖尿病の実態を調査すること自体に困難があることが明らかとなった。HbA1c値を調査するだけでも魚沼二次医療圏や徳島県という比較的広い地域では非常に大変な作業になることが判明した。また、糖尿病網膜症・光凝固術実施数についても同様であった。各地域における代表的基幹病院に協力を頂いて、そこだけの成績を持って代用するという方式が平成22年度にはとられたが、結局、徳島県では、前者に関しては特定健診のデータを使用することで、後者に関しては眼科医会の協力を得てデータを収集することで解決が図られた。
また、平成22年度と平成24年度の2回にわたって実態調査を行ったが、実質1年間という年月は各種の施策の効果が認められるにはあまりにも短期間である可能性があった。この短期間に最も効果が期待できるのはHbA1c値であるが、統計学的に有意かは不明であるが、魚沼二次医療圏ならびに徳島県における糖尿病者のHbA1c値がこの短期間内に低下している印象をうける。両地域における関係者の皆様の努力が結実したものではないかと考えられる。此の結果が今後も持続し、5~10年後に糖尿病合併症の有病数として結実することが切に望まれる。実際にはこの1年間に、両地域ではひとつの地域医療連携施策だけではなく、地域をあげて各種の連携施策が実施されており、ひとつの連携施策にこの成果を結びつけるのは難しい印象をうけた。従って、5~10年後に今回取りあげた各地域において、もう一度、今回と同様の糖尿病の実態調査を行うことにより、地域連携施策についての最終的な評価が可能になると考えられる。
結論
合計3年間という研究期間では、糖尿病地域連携施策についてその有効性を評価するには短すぎると考えられる。この期間においてもHbA1c値が魚沼二次医療圏と徳島県の2つの地域で改善されていると考えられるが、これは希望を与える結果であり5~10年後の再調査が待たれる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201222018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)研究目的の成果
わが国における4地域において糖尿病地域医療連携施策の有効性について評価した。血糖コントロール(HbA1c値)を指標とした場合、魚沼二次医療圏と徳島県でその改善傾向が認められた。前者ではProject 8が有効であった可能性があるが後者では各種の施策が行われており単一の施策にその有効性が起因するとは考えがたい。
(2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義
“Project 8”は各地域における糖尿病医療連携施策として有効である可能性がある。
臨床的観点からの成果
「専門的・学術的観点からの成果」に同じ
ガイドライン等の開発
ガイドラインの開発に資する成果ではない。
その他行政的観点からの成果
糖尿病の実態を知る上では、有効な情報となっているが、厚生行政に対する直接的な貢献度は低いと考えられる。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201222018Z