文献情報
文献番号
201221049A
報告書区分
総括
研究課題名
ポリープ切除の大腸がん予防に及ぼす効果の評価と内視鏡検査間隔の適正化に関する前向き臨床試験
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-がん臨床-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松田 尚久(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院消化管内視鏡科)
研究分担者(所属機関)
- 尾田 恭(尾田胃腸内科・内科)
- 金子 和弘(独立行政法人国立がん研究センター 東病院内視鏡科)
- 工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)
- 佐野 寧(佐野病院 消化器センター)
- 谷口 浩和(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院病理科)
- 藤井 隆広(藤井隆広クリニック)
- 堀田 欣一(静岡がんセンター 内視鏡科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
大腸がん罹患の超高危険群(家族性大腸腺腫症・遺伝性非ポリポージス性大腸がん)を除く,全ての腫瘍性ポリープを摘除した対象者に対する全大腸内視鏡(TCS)の至適検査間隔期間について,1年と3年後に行う2回検査群と3年後のみに行う1回検査群とのランダム化比較試験によって評価する. ・Primary endpoint: クリーンコロン後のIndex lesion(10 mm以上の上皮性腫瘍・高度異型腺腫・がん腫)の発生割合.・Secondary endpoint: クリーンコロン後の全大腸腫瘍,陥凹型腫瘍,有害事象の発生割合.尚,3年後のランダム化比較試験評価後は, 浸潤がんの発生頻度,予後に関する長期経過観察から探索的検討を行う.
研究方法
【対象】40歳~69歳の健常者
【サンプルサイズ】当初,登録期間3年・目標登録者数3,000人と設定したが,1次・2次TCSにて腺腫性ポリープを有さない群が約20%認められたためサンプルサイズの再算出を行い,3,700名を最終目標登録者数に修正するプロトコール変更申請手続きを行った.
【方法】1) 文書による同意取得,2) 1次TCSにより腫瘍性ポリープ全てを内視鏡摘除,データセンターに登録, 3)全例1年後に再検査(2次TCS)を行い,初回検査での見逃しを含めた全ての腺腫性ポリープの摘除を行いクリーンコロンとする.その後,データセンターから2回検査群(1年と3年後の検査)と,1回検査群(3年後に検査)の割り付け情報を入手,4) 経過観察中にみられるIndex lesion: IL(10 mm以上の上皮性腫瘍,高度異型腺腫,がん腫)の発見割合を1回検査群と2回検査群間で比較し,クリーンコロン施行後3年間で2回検査が必要か,3年後の1回検査で十分かどうかを検証する.
尚,本研究のPrimary endpointは,ILの発見割合とし,1回検査群の3年後に発見されるIL発生割合と, 1年と3年後の合計したIL発生割合の両群間の比較試験を行ない, 2%以内を許容範囲とした非劣性試験である.
【サンプルサイズ】当初,登録期間3年・目標登録者数3,000人と設定したが,1次・2次TCSにて腺腫性ポリープを有さない群が約20%認められたためサンプルサイズの再算出を行い,3,700名を最終目標登録者数に修正するプロトコール変更申請手続きを行った.
【方法】1) 文書による同意取得,2) 1次TCSにより腫瘍性ポリープ全てを内視鏡摘除,データセンターに登録, 3)全例1年後に再検査(2次TCS)を行い,初回検査での見逃しを含めた全ての腺腫性ポリープの摘除を行いクリーンコロンとする.その後,データセンターから2回検査群(1年と3年後の検査)と,1回検査群(3年後に検査)の割り付け情報を入手,4) 経過観察中にみられるIndex lesion: IL(10 mm以上の上皮性腫瘍,高度異型腺腫,がん腫)の発見割合を1回検査群と2回検査群間で比較し,クリーンコロン施行後3年間で2回検査が必要か,3年後の1回検査で十分かどうかを検証する.
尚,本研究のPrimary endpointは,ILの発見割合とし,1回検査群の3年後に発見されるIL発生割合と, 1年と3年後の合計したIL発生割合の両群間の比較試験を行ない, 2%以内を許容範囲とした非劣性試験である.
結果と考察
平成18年12月末までに3,926名の登録が,また平成21年末までに2,757名の割り付け作業が完了した.割り付け状況は,2回検査群(1.3年後検査群):1,087名,1回検査群(3年後検査群):1,079名,腫瘍性ポリープ(-)群:591名である.平成24年8月時点で,割り付け後の最終フォローアップ全大腸内視鏡検査(TCS)が全て終了し,割り付け前後のデータクリーニングと集計・解析作業を進めている.
本年度は,割り付け後の最終フォローアップTCSの完遂と、内視鏡的ポリープ摘除が「大腸がん罹患率・死亡率減少に及ぼす効果」を明らかにするための追跡調査(コホート研究)への再同意取得を中心に研究を進めた.本研究により,不必要な大腸内視鏡検査を減少させることが可能となり, 医療経済学的に大きなメリットがあるものと考えられ,「がん対策基本法」の基本的施策に合致するものと思われる.
本年度は,割り付け後の最終フォローアップTCSの完遂と、内視鏡的ポリープ摘除が「大腸がん罹患率・死亡率減少に及ぼす効果」を明らかにするための追跡調査(コホート研究)への再同意取得を中心に研究を進めた.本研究により,不必要な大腸内視鏡検査を減少させることが可能となり, 医療経済学的に大きなメリットがあるものと考えられ,「がん対策基本法」の基本的施策に合致するものと思われる.
結論
【JPS第1期】平成12年~平成14年:遡及的検討およびJPSプロトコール作成.【JPS第2期】平成15年~平成18年:試験参加登録者数(3,700名)の達成.【JPS第3期】平成19年~平成21年: 1次・2次TCSの遂行と割り付け作業の完了.【JPS第4期】割り付け後検査・病理中央判定の遂行と全データのクリーニングと集計・統計解析の実施.
以上の達成目標を設定し,本研究を進めてきた.平成21年末時点で割り付け作業が完了し,フォローアップTCSをいかに脱落なく遂行していけるかが本研究成功の最大の課題であった.米国のNational Polyp Study (NPS)では,最終的に約750名程度のサンプルサイズをもって,クリーンコロン後3年後のフォローアップの妥当性を論じている.しかし,長年,我が国から報告してきた表面・陥凹型大腸腫瘍の重要性が,ここ数年欧米でも更に注目されるに至り,本研究の臨床的意義が高まっている.一般に内視鏡的に発見することが難しいと言われている表面・陥凹型腫瘍に対しても十分注意を払った本研究結果は,海外研究者からもその結果が期待されている.最終的に本研究では,2回検査群(1.3年後検査群):1,087名,1回検査群(3年後検査群):1,079名を対象としたIntention-to-treat(ITT)解析と,プロトコール通りに全てのTCSが施行された者(2回検査群:701名,1回検査群:763名の計1,464名)を対象としたPer-protocol(PP)解析を行い,クリーンコロン施行後3年間で2回検査が必要か,3年後の1回検査で十分かどうかを検証し報告する予定である.
以上の達成目標を設定し,本研究を進めてきた.平成21年末時点で割り付け作業が完了し,フォローアップTCSをいかに脱落なく遂行していけるかが本研究成功の最大の課題であった.米国のNational Polyp Study (NPS)では,最終的に約750名程度のサンプルサイズをもって,クリーンコロン後3年後のフォローアップの妥当性を論じている.しかし,長年,我が国から報告してきた表面・陥凹型大腸腫瘍の重要性が,ここ数年欧米でも更に注目されるに至り,本研究の臨床的意義が高まっている.一般に内視鏡的に発見することが難しいと言われている表面・陥凹型腫瘍に対しても十分注意を払った本研究結果は,海外研究者からもその結果が期待されている.最終的に本研究では,2回検査群(1.3年後検査群):1,087名,1回検査群(3年後検査群):1,079名を対象としたIntention-to-treat(ITT)解析と,プロトコール通りに全てのTCSが施行された者(2回検査群:701名,1回検査群:763名の計1,464名)を対象としたPer-protocol(PP)解析を行い,クリーンコロン施行後3年間で2回検査が必要か,3年後の1回検査で十分かどうかを検証し報告する予定である.
公開日・更新日
公開日
2013-07-25
更新日
-