離島をモデルとした新しい対策型大腸がん検診システムの構築とその実現に向けた研究-新島STUDY

文献情報

文献番号
201221037A
報告書区分
総括
研究課題名
離島をモデルとした新しい対策型大腸がん検診システムの構築とその実現に向けた研究-新島STUDY
課題番号
H22-がん臨床-一般-038
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松田 尚久(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院消化管内視鏡科)
研究分担者(所属機関)
  • 池松 弘朗(独立行政法人国立がん研究センター 東病院内視鏡科)
  • 角川 康夫(独立行政法人国立がん研究センター がん予防検診研究センター)
  • 九嶋 亮治(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院病理科)
  • 小林 望(栃木県立がんセンター 画像診断部)
  • 寳澤 篤(東北大学東北メディカルメガバンク機構予防医学・疫学部門)
  • 堀田 欣一(静岡がんセンター 内視鏡科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本における258の指定有人離島における理想的な地域大腸がん検診モデルの確立を目指し,科学的根拠に基づいた検診体制を構築するための臨床研究を策定することが主目的である.東京都新島村をモデルに「内視鏡検査による大腸がん検診受診率50%以上」の目標達成として計画する啓発活動の有効性評価と,検診非受検者に対して行う1年後のリコールによる受診率向上効果を明らかにする.
研究方法
新島村住民で,平成23年度大腸がん検診の対象者中40~79歳の男女約1,600名に対して,検診としての全大腸内視鏡検査(TCS)の案内状を送付する.この時点で,文書による本研究参加の応諾が得られた者に対して,全例TCSを計画する(参加同意が得られない住民及び80歳以上の方については,例年通りの免疫学的便潜血検査:FOBTを推奨).上記いずれの検査も受検しなかった対象者に対しては,6か月間を利用して大腸がん検診の重要性とTCS及びFOBTのメリット・デメリット等について,パンフレット送付を通じて普及啓発活動を行った後に案内状を再送付(リコール)し,検診受診を再度呼びかける.
結果と考察
<第2期(H24)検診結果>第1期検診(H23)に加え,新たに317名が本研究に参加し大腸がん検診を受検した [第1-2期合計:783名(うち,全大腸内視鏡検査:TCS受検者614名;一部,重複あり);全検診対象者の約47%].今年度の検査種別内訳は,TCS+FOBT:167名,TCS単独:101名,FOBT単独:49名であった.今年度新たに86名に要治療病変(5mm以上の腫瘍性病変)を,さらにその中には29名のIndex lesion(10mm以上の腫瘍あるいは内視鏡的に癌が疑われる病変)保有者を認めた.第1-2期合わせると,延べ571名がFOBT,614名がTCS検診を受検し,182名(TCS受検者の約30%)に治療対象となる5mm以上の腺腫性ポリープを,83名(約13%)に10mm以上の腺腫あるいは癌が疑われる病変を認めたことになる.現在,これらの対象者については,当院を中心に保険診療下に内視鏡治療が進行中である.研究期間内の目標として掲げた検診受診率50%にはわずかに及ばなかったものの,現時点ですでに3例のSM(粘膜下層)浸潤癌と18例のM(粘膜内)癌が発見され,その治療が完了している.   
また,全島民を対象としたアンケート調査(受検・非受検理由等)が完了し,検診対象者の約7割にあたる約1,100名からの回答が得られた.現在,その最終集計・解析作業が進行中である.
結論
離島という人口動態の把握が比較的容易なコミュニティを対象とするため,研究データの信憑性は高く,今後長期的な検討(予後調査等)を行う上でも質の高い研究となるものと確信する.また,地域における患者支援という視点で考えた場合,島を離れず一度の内視鏡検査で大腸がん検診を完遂できることは,受検者のみならず関係市町村にとっても将来的に非常に大きなメリットとなると考えられる.本研究のモデルとなる新島村での研究成果に基づき,将来的にはその他の離島関係市町村における内視鏡介入型の新しい対策型大腸がん検診システムの構築が期待できる.

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221037B
報告書区分
総合
研究課題名
離島をモデルとした新しい対策型大腸がん検診システムの構築とその実現に向けた研究-新島STUDY
課題番号
H22-がん臨床-一般-038
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松田 尚久(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院消化管内視鏡科)
研究分担者(所属機関)
  • 池松 弘朗(独立行政法人国立がん研究センター 東病院内視鏡科)
  • 角川 康夫(独立行政法人国立がん研究センター がん予防検診研究センター)
  • 九嶋 亮治(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院病理科)
  • 小林 望(栃木県立がんセンター 画像診断部)
  • 寶澤 篤(東北大学東北メディカルメガバンク機構予防医学・疫学部門)
  • 堀田 欣一(静岡がんセンター 内視鏡科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本における258の指定有人離島における理想的な地域大腸がん検診モデルの確立を目指し,科学的根拠に基づいた検診体制を構築するための臨床研究を策定することが主目的である.東京都新島村をモデルに「内視鏡検査による大腸がん検診受診率50%以上」の目標達成として計画する啓発活動の有効性評価と,検診非受検者に対して行う1年後のリコールによる受診率向上効果を明らかにする.
研究方法
新島村住民で,平成23年度大腸がん検診の対象者中40~79歳の男女約1,600名に対して,検診としての全大腸内視鏡検査(TCS)の案内状を送付する.この時点で,文書による本研究参加の応諾が得られた者に対して,全例TCSを計画する(参加同意が得られない住民及び80歳以上の方については,例年通りの免疫学的便潜血検査:FOBTを推奨).上記いずれの検査も受検しなかった対象者に対しては,6か月間を利用して大腸がん検診の重要性とTCS及びFOBTのメリット・デメリット等について,パンフレット送付を通じて普及啓発活動を行った後に案内状を再送付(リコール)し,検診受診を再度呼びかける.
結果と考察
第1期検診(H23)に加え第2期(H24)では,新たに317名が本研究に参加し大腸がん検診を受検した [第1-2期合計:783名(うち,全大腸内視鏡検査:TCS受検者614名;一部,重複あり);全検診対象者の約47%].今年度の検査種別内訳は,TCS+FOBT:167名,TCS単独:101名,FOBT単独:49名であった.今年度新たに86名に要治療病変(5mm以上の腫瘍性病変)を,さらにその中には29名のIndex lesion(10mm以上の腫瘍あるいは内視鏡的に癌が疑われる病変)保有者を認めた.第1-2期合わせると,延べ571名がFOBT,614名がTCS検診を受検し,182名(TCS受検者の約30%)に治療対象となる5mm以上の腺腫性ポリープを,83名(約13%)に10mm以上の腺腫あるいは癌が疑われる病変を認めたことになる.現在,これらの対象者については,当院を中心に保険診療下に内視鏡治療が進行中である.研究期間内の目標として掲げた検診受診率50%にはわずかに及ばなかったものの,現時点ですでに3例のSM(粘膜下層)浸潤癌と18例のM(粘膜内)癌が発見され,その治療が完了している.   
また,全島民を対象としたアンケート調査(受検・非受検理由等)が完了し,検診対象者の約7割にあたる約1,100名からの回答が得られた.現在,その最終集計・解析作業が進行中である.
結論
離島という人口動態の把握が比較的容易なコミュニティを対象とするため,研究データの信憑性は高く,今後長期的な検討(予後調査等)を行う上でも質の高い研究となるものと確信する.また,地域における患者支援という視点で考えた場合,島を離れず一度の内視鏡検査で大腸がん検診を完遂できることは,受検者のみならず関係市町村にとっても将来的に非常に大きなメリットとなると考えられる.本研究のモデルとなる新島村での研究成果に基づき,将来的にはその他の離島関係市町村における内視鏡介入型の新しい対策型大腸がん検診システムの構築が期待できる.

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201221037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
内視鏡検査の受検機会が乏しい地域(離島)に対して,内視鏡専門医が直接出向き,検診の重要性に関する啓発活動と検診としての大腸内視鏡検査の機会を提供することにより,どの程度の検診受診率向上と大腸がん罹患率の抑制が得られるか,また非受検者に対するリコールによる受診率向上が得られるか否かについての本検討は意義深いものである.
臨床的観点からの成果
本研究により,新島村における過去の大腸癌検診受診率を12%から47%(介入期間:2年)まで向上させた.さらに,大腸内視鏡検診受検者:614名中21名の大腸癌(全て早期癌)を発見し治療出来たことは大きな成果である.
ガイドライン等の開発
今回の研究成果は,現時点ではガイドライン作成には寄与していないものの,来年以降計画している「大島STUDY:40歳から79歳約4800人を対象にした大腸内視鏡介入型の大腸がん検診をベースにした疫学研究」のベースとなった.
その他行政的観点からの成果
本邦における258の指定有人離島における理想的な地域大腸がん検診モデルの確立を目指し,科学的根拠に基づいた検診体制を構築するための基礎研究の一つとなった.
その他のインパクト
「伊豆七島新聞」に本研究が取り上げられ,大腸癌検診の重要性が伝えられた.また,日本消化器内視鏡学会シンポジウム,市民公開講座にて研究代表者が本研究結果につき発表し,大きな反響を得た.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201221037Z