アジア諸国でのがん予防、がん検診、がん治療向上のための調査研究

文献情報

文献番号
201220044A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア諸国でのがん予防、がん検診、がん治療向上のための調査研究
課題番号
H23-3次がん-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田中 英夫(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上真奈美(東京大学大学院 医学系研究科・健康と人間の安全保障(AXA) 寄附講座)
  • 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所・疫学・予防部)
  • 松田 智大(国立がん研究センター・がん対策情報センターがん統計研究部)
  • 西野 善一(宮城県立がんセンター研究所・がん疫学・予防研究部)
  • 椙村 春彦(浜松医科大学・医学部・腫瘍病理学講座)
  • 河原ノリエ(東京大学先端科学技術研究センター・「総合癌研究国際戦略推進」寄付研究部門)
  • 戸塚 ゆ加里(国立がん研究センター研究所発がんシステム研究分野)
  • 片野田耕太(国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部)
  • 林 櫻松(愛知医科大学医学部公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
19,167,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今年度は1東アジアで深刻化する85歳以上の“超高齢”がん罹患の実態を、高齢化の進む日本と台湾で明らかにする、2分子標的薬ゲフィチニブが肺がん治療に導入された日本と台湾で、同剤が特に有効とされる女性肺腺がんの生存率をどれだけ改善させたかを評価する、3日本が相対的に低かった子宮頸癌生存率について、台湾と詳細に比較し、その原因を推定する、4アジア人に特化したがん予防のための知見を得るため、アジアの大規模コーホートデータの統合解析をさらに進める、5日中ともに部位別がん罹患数で最も多い胃がんについて、発症の環境要因の違いを分析する、6日中韓三ヶ国のタバコ対策の現状と課題を明らかにする、7中国黒龍江省で小学生を介した家庭内のがん予防介入を実践し、その効果評価を試みる、以上を主な目的とした。
研究方法
1~3については、日本の21県のがん罹患データおよび6県の生存率データ、それに協同研究機関である国立台湾大学が算出する台湾全土のデータを比較検討した。4についてはAsia Cohort Consorciumが管理する110万人分のコーホートデータを解析した。5については中国の下部食道がんおよび噴門部胃がん多発地域での生体試料を用いた症例対照研究を行った。6については各国の政府関係資料等を入手した。
結果と考察
東アジアの地域がん登録資料を活用した記述疫学協同研究では、超高齢化を向える東アジアにおいて、日本の85歳以上のがん患者(有病者)の激増と、台湾などの日本に続く経済発展を遂げた国における“日本化”が、がん対策上の大きな課題になることが示唆され、分子標的薬ゲフィチニブの導入により、日本では2002年の後半に女性肺腺がん生存率に改善の兆しが見られ、子宮頸がん(浸潤がん)5年相対生存率は、日本は台湾に比べて、進行度が進んだ症例ほど相対的に低くなることがわかった。次に、アジアの既存コホートの統合解析により、膵がん、小腸がんのリスク要因を明らかにし、また、東アジアにおける感染症のがん発症寄与度を定量した。また、中国から生体試料を日本に持ち込み、アダクトーム解析を実施する体制を実現した。また、成人男性喫煙率は中国、韓国、日本の順に高かったこと、成人の受動喫煙は家庭、職場とも中国で曝露割合が最多であること、喫煙者の禁煙施行率は日本が最低であることがわかった。
結論
東アジア地域で85歳以上の超高齢がん罹患者・がん有病者数の激増が確実となり、それに対応した総合的ながん対策の立案が必要である。日本の子宮頸癌のstageⅡ~Ⅳの治療成績に、改善の余地の可能性。H.pylori菌などの感染症対策が東アジア諸国のがん一次予防対策のの中で最も重要である。韓国および中国政府に対して、受動喫煙防止対策の推進の必要性を示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220044Z