がん治療の副作用軽減ならびにがん患者のQOL向上のための漢方薬の臨床応用とその作用機構の解明

文献情報

文献番号
201220033A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療の副作用軽減ならびにがん患者のQOL向上のための漢方薬の臨床応用とその作用機構の解明
課題番号
H22-3次がん-一般-035
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
上園 保仁(独立行政法人国立がん研究センター 研究所がん患者病態生理研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 塚田 俊彦(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 家族性腫瘍研究分野)
  • 大西 俊介(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 乾 明夫(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 上田 陽一(産業医科大学 医学部)
  • 藤宮 峯子(札幌医科大学 医学部)
  • 樋上 賀一(東京理科大学 薬学部)
  • 河野 透(旭川医科大学)
  • 櫻木 範明(北海道大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
23,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 がん患者の抗がん剤治療による副作用改善、ならびにがん悪液質の症状改善に漢方薬である六君子湯、大建中湯が有効であるかを明らかにするために、それらの作用メカニズムを基礎レベルで解明し、さらに臨床における六君子湯の有効性を検証するための臨床研究プロトコールを作成し、患者登録を行った。
研究方法
 新規に樹立したがん悪液質モデルラットやさまざまながん悪液質モデル動物を用いて六君子湯の効果についての基礎研究を行い、六君子湯ががん悪液質による体重減少および食思不振を、さらにシスプラチンによる食思不振作用を改善することを明らかにした。また六君子湯のどの成分が作用しているかについても細胞系を用いて解析を行い、悪液質症状を改善する成分の同定を行った。加えて、子宮がん患者の抗がん剤投与時ならびに膵がん患者のがん悪液質で起こる食思不振に対する六君子湯の改善効果を検証するための臨床研究プロトコールを作成し、膵がん患者については患者登録を開始した。さらに大建中湯のがんでみられる消化器の痛みや炎症の改善効果についての解析を分子レベルで行った。
結果と考察
 六君子湯は、昨年樹立の新規ヒトがん細胞接種がん悪液質モデルラットを始めとする悪液質モデル動物において食思改善作用・体重低下抑制作用ならびに生存延長作用を有することを明らかにした。これらの作用は、悪液質により減弱しているグレリンシグナルを六君子湯が増強することによるもので、特に六君子湯成分陳皮に含まれるヘスペリジンならびに蒼朮に含まれるアトラクチロジンが重要であることを明らかにした。また動物を用いた実験で、シスプラチンによる嘔気嘔吐および食思不振を六君子湯が中枢ならびに末梢レベルで作用し、改善効果を示すこと、その機序には消化管EC細胞からのセロトニン分泌を六君子湯が抑制すること、ならびに血中グレリンの増加を介して視床下部摂食関連ペプチドが変動するためであることを明らかにした。さらに大建中湯の成分は、臨床で用いられる血中レベルと同等の濃度で、培養細胞のアラキドン酸代謝酵素をさまざまなステップで抑制し、プロスタグランジンE2を特異的に抑制することで、がんでおこるさまざまな体内の炎症を抑制する可能性を明らかにした。
 臨床研究においては、膵がんによる悪液質症状の改善ならびにシスプラチン投与による消化器症状に六君子湯が有効であるかを明らかにするため、北海道大学を含む道内14病院において、臨床試験プロトコールを作成し、患者登録を開始した。さらに子宮がん患者のシスプラチンによる嘔気嘔吐の改善に及ぼす六君子湯の効果についての臨床プロトコールも完成させ、次年度患者登録開始予定の運びである。
結論
 漢方薬の作用メカニズムの解明ならびに臨床効果のエビデンス確立に向けて、基礎ならびに臨床面からのアプローチで研究を行い、そのメカニズムを明らかにした。さらに本研究を継続し、作用メカニズムの詳細な解明と、特に質の高い臨床試験の患者登録を着実に進めていくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201220033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
31,000,000円
(2)補助金確定額
31,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,848,001円
人件費・謝金 3,494,323円
旅費 1,926,799円
その他 7,588,391円
間接経費 7,153,000円
合計 31,010,514円

備考

備考
自己資金10,514円を含むため。

公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
-