重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病を対象としたドネペジルの予後改善効果に関する研究

文献情報

文献番号
201216008A
報告書区分
総括
研究課題名
重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病を対象としたドネペジルの予後改善効果に関する研究
課題番号
H24-被災地域-一般(復興)-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武田 篤(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森 悦朗(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 久永欣哉(国立病院機構 宮城病院)
  • 宇川義一(福島県立医科大学 医学部医学科)
  • 服部信孝(順天堂大学医学部 老人性疾患病態治療研究センター)
  • 村田美穂(国立精神・神経医療研究センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は重度嗅覚障害を示すPD群で脳代謝が低下していること、さらに3年間の縦断研究でPD認知症に移行したのは重度嗅覚障害群のみであったことを報告し、世界で初めてPDの嗅覚障害が認知症発症の最も的確な予測因子である事が明らかとなった。興味深いことに脳画像解析から、重度嗅覚障害群では当初から辺縁系を中心とする脳萎縮がみられるものの、その後の萎縮進行は目立たず、前頭葉と後頭葉を中心とする大脳皮質の代謝が徐々に低下することが示された。PD認知症では前脳基底核のコリン系が比較的選択的に障害されていること、また嗅覚障害は辺縁系のコリン低下と関連することが先行研究で示されているが、我々の結果から重度嗅覚障害が深刻なコリン低下の開始を示す指標となることが示唆される。
 PD認知症や類縁疾患のレビー小体型認知症に対して抗ChE薬が有効であることは既に複数の臨床試験結果から示されている。しかしながら、運動障害がより重度で同時に強力なドパミン補充療法を要するPD認知症では、認知症の発症後に抗ChE薬による治療を行っても早期の治療効果が得られ難く、その有効性には限界があった。一方で早期~発症前にPD認知症を的確に診断する方法は未だ確立しておらず、治療介入のタイミングは遅れる事が多いのが現状である。そこで本研究では重度嗅覚障害をバイオマーカーとし,認知症発症前のPD患者にドネペジルを投与、認知症へ移行するリスクの軽減が期待できるかどうか検証することを目的とした。
研究方法
研究は全国21施設で実施する
重度嗅覚障害を示すPD患者を無作為に投与群,非投与群の2群に割り付け,3年後のPD認知症の発症率を比較する。投与群にはドパミン補充療法を含む標準治療にドネペジルを追加し,非投与群には標準治療にプラセボを追加する。嗅覚障害の程度は,OSIT-Jにより判定する。PD認知症の診断はACE-RとCDRを組み合わせて,Movement Diorder Societyが提唱するアルゴリズムに従い実施する。エンドポイントはPD認知症発症までの期間とし,委員会評価を主要エンドポイント,医師評価を副次エンドポイントとする。
結果と考察
平成25年度は以下の成果を得た。
1. 割付システムの構築:
できるだけ偏りのない臨床研究を進めるために、パーキンソン病認知症の発症に最も大きく影響を与えると想定される患者年齢、罹病期間を割付因子とすることとした。その上で一施設あたり10例のエントリーで20施設の多施設共同研究とすることを決定し、研究参加施設毎に自動的に動的割付をするオンラインシステムを構築した。
2.データ収集システムの構築:
データ収集はElectric Data Capturing(ETC)にて実施することとした。本研究が厚生労働科学研究費により実施されることを考慮してサーバーは国内に保有し、データマネージメントおよびデータ品質管理を安全かつ適切に実施できる様にした。これにより症例報告書の作成支援、実施医療機関でのデータ収集からデータ固定、並びにデータベース構築までの一連の手順をスムースに進め、かつ研究全体の管理が適切に実施できる体制を確立した。
3. 試験薬の準備と供給体制の確立:
試験薬であるドネペジルの研究用実薬およびプラセボの製造については、一般競争入札により選定された株式会社エーザイと契約し、平成25年3月に前期分が納品された。さらにその後の試験薬の割付・管理と各研究実施施設への供給体制を構築した。
4. 研究事務局の設置とモニタリング体制の確立:
 研究事務局を設置し、専用のデスク・フリーダイヤル・TEL/FAX機を設置した。これにより各研究参加施設から送付される登録票に従って症例登録を行い、各種の問い合わせに対応、さらに研究進捗管理表および被験者管理表を作成し、研究全体および被験者の進捗を管理する体制を確立した。
5. 研究実施体制の確立:
研究代表者および分担者の所属5施設に加えて、次年度から研究分担者として3施設を加えることとなった。さらに13施設を研究協力施設として選定し、次年度からの21施設による共同研究体制を構築した。また研究プロトコルの実施詳細を確定した。
6. 症例エントリーの開始:
平成24年度中にまず研究代表者の施設での症例エントリーを開始した。
結論
以上の様に初年度は多施設共同研究体制の構築に研究資源が費やされたが、概ね予定通り進めることができた。
本臨床研究への参加を全国の医療機関に呼びかけたところ、研究の意義が良く理解され20施設を超える神経内科医療施設から協力の申し出があり、本研究体制をスムースに構築することができた。改めて本研究の関心高さ、医療現場でのニーズの高さが確認できたものと解釈している。

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201216008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
58,500,000円
(2)補助金確定額
58,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 17,207,023円
人件費・謝金 1,033,289円
旅費 380,720円
その他 26,379,021円
間接経費 13,500,000円
合計 58,500,053円

備考

備考
利息53円が発生したため、支出が53円多くなっている。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-