文献情報
文献番号
201215008A
報告書区分
総括
研究課題名
漢方の特性を利用したエビデンス創出と適正使用支援システムの構築
課題番号
H22-臨研推-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 賢治(慶應義塾大学 環境情報学部)
研究分担者(所属機関)
- 嶋田 豊(富山大学 大学院医学薬学研究部)
- 関 隆志(東北大学 医学部)
- 村松 慎一(自治医科大学)
- 並木 隆雄(千葉大学 大学院医学研究院)
- 宮野 悟(東京大学 医科学研究所)
- 美馬 秀樹(東京大学 大学院工学系)
- 木村 容子(東京女子医科大学 東洋医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は1)個別化治療、2)患者の主観的愁訴を重視した医療、3)全人医療、といった漢方の特性を生かした臨床研究手法により、漢方のエビデンスを創出するとともに、漢方薬適正使用のための診療支援システムを構築することである。
研究方法
本研究においては、患者主観情報を取り入れた診療情報プラットフォームを基盤として日本を代表する漢方診療施設で症例集積することを計画した。
平成22年度は客観的に問診項目見直しの土台作りを行った。平成23年度は協議して変更した問診項目を情報プラットフォームに反映させるとともに、ブラウザ上での問診システムを開始した。分担研究者の診療施設においても倫理委員会承認を経て順次患者情報の集積が開始された。症例集積は初診患者6,179人、再診を含めた総レコード数は35,291件となった。これらデータを用い、適正な漢方診療のための診療支援ツール開発のために、医師の証診断をコンピューター上で予測するシステムの開発を行った。証の診断についてはWHOのICD改訂作業とリンクして行われているWHO 国際伝統医学分類(ICTM)日本版を参照にして進めた。
平成22年度は客観的に問診項目見直しの土台作りを行った。平成23年度は協議して変更した問診項目を情報プラットフォームに反映させるとともに、ブラウザ上での問診システムを開始した。分担研究者の診療施設においても倫理委員会承認を経て順次患者情報の集積が開始された。症例集積は初診患者6,179人、再診を含めた総レコード数は35,291件となった。これらデータを用い、適正な漢方診療のための診療支援ツール開発のために、医師の証診断をコンピューター上で予測するシステムの開発を行った。証の診断についてはWHOのICD改訂作業とリンクして行われているWHO 国際伝統医学分類(ICTM)日本版を参照にして進めた。
結果と考察
その結果、虚実、寒熱に関しては80%を超える精度で証の診断予測が可能となった。特に虚実においては慶應内でのデータでは91%の診断予測であったが、それを他の施設に当てはめた場合、60-80%に過ぎず、施設間での差も明らかとなった。虚実判別に対する問診項目の重要性についての解析ではBMIが一番重要視されていることは共通であったが、それぞれの診療施設で異なる問診項目が重要視されることがあり、こうした解析を重ねることで標準化に向けた準備ができるものと期待される。気血水については精度が悪く、問診だけでは高い精度が得られなかった。この結果から、気血水の診断には問診情報だけではなく、診察情報も必要なことが推測された。
本研究の最終産物として、漢方専門医でない一般診療医師が適正な漢方薬を選択できる診療支援システムを構築することを目標とした。分担研究者の美馬らの開発によりある程度の形ができた。症例が重なるに従い精度が上昇する機械学習の仕組みができ、今後は汎用化することにより、より精度の高い診療支援ができると期待される。
しかしながら今回作成した診療支援システムは、漢方専門医の初診時の処方選択を示しただけであり、処方結果として、症状の改善を予測したものではない。症例数が増えることによって、症状改善の期待される処方が推薦される仕組みができることが理想と考えている。
本研究の最終産物として、漢方専門医でない一般診療医師が適正な漢方薬を選択できる診療支援システムを構築することを目標とした。分担研究者の美馬らの開発によりある程度の形ができた。症例が重なるに従い精度が上昇する機械学習の仕組みができ、今後は汎用化することにより、より精度の高い診療支援ができると期待される。
しかしながら今回作成した診療支援システムは、漢方専門医の初診時の処方選択を示しただけであり、処方結果として、症状の改善を予測したものではない。症例数が増えることによって、症状改善の期待される処方が推薦される仕組みができることが理想と考えている。
結論
本研究は漢方の特性を生かした個別化診療のエビデンスの創生とその結果を基にした診断および漢方の処方の診療支援を行う計画で推進した。予定された計画はほぼ終了することができた。同時に次なるステップに向けての課題が明らかとなった。また、漢方医学教育の標準化に向けても課題が提起された。
公開日・更新日
公開日
2013-08-27
更新日
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