バイオマーカー可溶型LR11による病的未分化細胞疾患の新規診断と標的治療の開発

文献情報

文献番号
201215001A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオマーカー可溶型LR11による病的未分化細胞疾患の新規診断と標的治療の開発
課題番号
H22-臨研推-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武城 英明(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 白井厚治(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 代田浩之(順天堂大学医学部)
  • 三井田 孝(順天堂大学医学部)
  • 田丸淳一(埼玉医科大学総合医療センター)
  • 中世古知昭(千葉大学大学院医学研究院)
  • 池内 健(新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター)
  • 鈴木 博(新潟大学医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究目的は、研究申請者が病的未(脱)分化細胞遺伝子の血中バイオマーカーとして血中濃度測定系の樹立に至った可溶型受容体LR11を標的にした新規抗体療法を開発し、あわせて、血管病、血液疾患、神経疾患を対象疾患とする臨床試験計画のためのエビデンス構築を行い、世界初の未(脱)分化細胞マーカー診断に基づく病的未(脱)分化細胞疾患に対する新規治療法を提示することである。
研究方法
基礎研究 1)可溶性LR11 ELISA測定キットの樹立と市場化:産学共同研究。2)網羅的可溶型LR11抗体の調整と病態および細胞モデルを用いた用量反応性試験:産学共同研究。臨床研究 血中および髄液中LR11値と病的未(脱)分化細胞に関わる臨床エビデンスの構築:多施設共同研究。
結果と考察
主要な結果を示す。 1)白血病病態および細胞モデルでLR11欠損および中和抗体が病態発症ならびに細胞機能を抑制的に作用した。2)糖尿病冠動脈疾患における可溶型LR11濃度は長期予後と関連した。3)糖尿病患者の可溶型LR11は網膜症の寄与因子であり血糖及び脂質コントロールを反映した。4)睡眠時無呼吸症候群の可溶型LR11濃度は皮下脂肪蓄積および心筋拡張障害と関連した。5)可溶型LR11濃度は川崎病急性期の重症度を反映し遠隔期の血管障害も反映した。6)髄液中可溶型LR11はApoE rich-HDLに結合した。7)髄液中可溶型LR11は認知機能低下が出現する以前のアルツハイマー病の病態変化を反映した。8)可溶型LR11濃度はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫,ろ胞性リンパ腫で高値であり,初発時高値群では予後が有意に不良であり独立した予後因子だった.9)LR11発現はB細胞リンパ腫で高い発現率であり、LR11陽性群はCHOP療法の予後がよいこと、Rituximabを用いた抗体療法への反応性は悪かった。
結論
以上の研究成果から,可溶型受容体LR11を標的にした抗体療法の可能性が細胞および病態モデルで明らかとなった。一方,集積した臨床エビデンスから血管病、血液疾患、神経疾患を対象疾患とする臨床試験計画が可能であると考えられ、世界初の未(脱)分化細胞マーカー診断に基づく病的未(脱)分化細胞疾患に対する新規治療法を提示する。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201215001B
報告書区分
総合
研究課題名
バイオマーカー可溶型LR11による病的未分化細胞疾患の新規診断と標的治療の開発
課題番号
H22-臨研推-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武城 英明(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 白井厚治(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 代田浩之(順天堂大学医学部)
  • 三井田孝(順天堂大学医学部)
  • 田丸淳一(埼玉医科大学総合医療センター)
  • 中世古知昭(千葉大学大学院医学研究院)
  • 池内健(新潟大学脳研究所生命リソース研究センター)
  • 鈴木博(新潟大学医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究目的は、研究申請者が病的未(脱)分化細胞遺伝子の血中バイオマーカーとして血中濃度測定系の樹立に至った可溶型受容体LR11を標的にした新規抗体療法を開発し、あわせて、血管病、血液疾患、神経疾患を対象疾患とする臨床試験計画のためのエビデンス構築を行い、世界初の未(脱)分化細胞マーカー診断に基づく病的未(脱)分化細胞疾患に対する新規治療法を提示することである。
研究方法
基礎研究 1)可溶性LR11 ELISA測定キットの樹立と市場化:産学共同研究。2)網羅的可溶型LR11抗体の調整と病態および細胞モデルを用いた用量反応性試験:産学共同研究。臨床研究 血中および髄液中LR11値と病的未(脱)分化細胞に関わる臨床エビデンスの構築:多施設共同研究。
結果と考察
主要な結果を示す。 1) 可溶性LR11研究用試薬を産学協同で開発し定量的測定が可能になった。2) LR11機能修飾抗体を獲得し病態モデル解析から、LR11標的療法の骨髄血球細胞や機能細胞の変換調節における意義が明らかになった。 3)冠動脈疾患の血中可溶性LR11値は高値でありHbA1c値が寄与因子となる。4) 糖尿病合併冠動脈疾患の可溶型LR11濃度は経皮的冠動脈形成術後の長期予後と関連しベースライン値が高いほどイベント発生率が高い。5) アルツハイマー病(AD)患者の髄液中可溶性LR11は増加しアポE4保因者で高値となる。6) 髄液中可溶型LR11は認知機能低下が出現する前のADの病態変化を反映した。7) 急性骨髄性白血病(AML),急性リンパ性白血病(ALL)患者の診断時血清のsLR11値は高値となる。8) AML, ALLの寛解時血清では全てsLR11は正常域に低下する。AML症例のLR11高値群は低値群に比べて完全寛解率が低く5年全生存率も低値である。9) 可溶型LR11はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫,ろ胞性リンパ腫で高値で,初発時高値群は予後が不良であり独立した予後因子だった。
結論
以上の研究成果から『病的未分化細胞疾患の診断ならびに治療指針案』を作成した。今後、本研究で明らかにした病的未分化細胞疾患という新規治療概念を基盤に、バイオマーカー可溶性LR11による病的未分化細胞疾患の新規診断と標的治療臨床試験実施を計画する。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201215001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究目的である『病的未(脱)分化細胞』の血中バイオマーカー可溶性受容体LR11の定量測定試薬を産学協同で市販化し、その標的抗体療法を新たな産学協同体制で開発することに進展した。国内外の多施設の大学病院の共同研究により、血管病、血液病、神経病を対象疾患とする臨床試験計画のためのエビデンス構築を行い、国際誌でそれぞれ公表し、世界初の『未(脱)分化細胞マーカー診断に基づく病的未(脱)分化細胞疾患に対する新規治療法』を提示した。
臨床的観点からの成果
日常診療で診断の難しい病気がいまなお多く存在し診断されても治療の困難な病態が存在する。そのような病気に、心筋梗塞、白血病、アルツハイマー病が挙げられる。本研究は我が国で発見された動脈硬化の未分化細胞の遺伝子から細胞診断と細胞治療という新たな病気の概念と技術の確立することで、これまで診断や治療の難しかった国民の健康に深刻な影響を与える病気に我が国から発信する新規の診断治療法を提示した。
ガイドライン等の開発
日本と海外の約20施設による臨床試験の研究体制により実施された研究成果をまとめて、本研究の最終目的であった『バイオマーカー可溶性LR11による病的未分化細胞疾患の診断ならびに治療指針(案)』を作成し、血管病と血液疾患の診療における診断と治療からみた血中可溶性LR11値、アルツハイマー病の診療における診断と治療からみた髄液中可溶性LR11値を公表した。
その他行政的観点からの成果
バイオマーカー可溶性LR11の測定が、血管病のリスクや治療予後、進展判定に有用なこと、血液病の治療反応性や長期予後判定の診断補助となること、神経病の発症リスクの予知マーカーとなることが明らかになった。これらの疾患の早期診断と予防を可能にすることで、血管病、血液病、神経病の治療に関わる我が国の医療費を軽減することに結びつく『診断ならびに治療指針』を作成した。
その他のインパクト
病的未(脱)分化細胞の血中バイオマーカーLR11の測定技術に関わる4件の特許出願(2件公開)を行い、産学協同(積水メディカル)により研究試薬を国内外へ市場化し、診断試薬開発の共同研究が開始された。LR11標的治療の有用性が確実になったことで国内製薬企業と産学協同の生物製剤の開発研究へと進展した。研究成果は国際英文誌および国内外の専門学会で発表された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
4件
その他成果(特許の取得)
4件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
1. 新規な動脈硬化性疾患マーカー
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2008/001527
発明者名: 松尾正直, 海老沼宏幸, 深町 勇, 武城英明, 齋藤 康
出願年月日: 20080613
特許の名称
2. 可溶型LR11の定量方法
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2009/001176
発明者名: 松尾正直, 海老沼宏幸, 深町 勇, 武城英明, 齋藤 康
出願年月日: 20100219
特許の名称
3. 悪性腫瘍の診断方法
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2010/072521
発明者名: 松尾正直, 海老沼宏幸, 深町 勇, 中世古知昭, 武城英明, 齋藤 康
出願年月日: 20110623
特許の名称
4. 悪性腫瘍細胞の検出方法
詳細情報
分類:
特許番号: 2010-161037
発明者名: 海老沼宏幸, 深町 勇, 中世古知昭, 武城英明

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahashi M, Bujo H, Shiba T,et al
Enhanced circulating soluble LR11 in patients with diabetic retinopathy.
Am J Ophthalmol , 154 (1) , 187-192  (2012)
10.1016/j.ajo.2012.01.035.
原著論文2
Nishii K, Nakaseko C, Jiang M,et al
The soluble form of LR11 protein is a regulator of hypoxia-induced, urokinase-type plasminogen activator receptor (uPAR)-mediated adhesion of immature hematological cells.
J Biol Chem , 288 (17) , 11877-111886  (2013)
10.1074/jbc.M112.442491.
原著論文3
Naito S, Kamata M, Furuya M,et al
Amelioration of circulating lipoprotein profile and proteinuria in a patient with LCAT deficiency due to a novel mutation (Cys74Tyr) in the lid region of LCAT under a fat-restricted diet and ARB treatment.
Atherosclerosis , 228 (1) , 193-197  (2013)
10.1016/j.atherosclerosis.2013.02.034.
原著論文4
Shimizu N, Nakaseko C, Jiang M,et al
G-CSF induces the release of the soluble form of LR11, a regulator of myeloid cell mobilization in bone marrow.
Ann Hematol , 93 (7) , 1111-1122  (2014)
10.1007/s00277-014-2033-0.
原著論文5
Whittle AJ, Jiang M, Peirce V,et al
Soluble LR11/SorLA represses thermogenesis in adipose tissue and correlates with BMI in humans.
Nat Commun , 20 (6) , -8951  (2015)
10.1038/ncomms9951.
原著論文6
Murano T, Yamaguchi T, Tatsuno I,et al
Subfraction analysis of circulating lipoproteins in a patient with Tangier disease due to a novel ABCA1 mutation.
Clin Chim Acta , 452 , 167-172  (2016)
10.1016/j.cca.2015.11.021.
原著論文7
Terai K, Jiang M, Tokuyama W,et al
Levels of soluble LR11/SorLA are highly increased in the bile of patients with biliary tract and pancreatic cancers.
Clin Chim Acta , 457 , 130-136  (2016)
10.1016/j.cca.2016.04.010.
原著論文8
Jin W, Jiang M, Han X,et al
Circulating soluble form of LR11, a regulator of smooth muscle cell migration, is a novel marker for intima-media thickness of carotid arteries in type 2 diabetes.
Clin Chim Acta , 457 , 137-141  (2016)
10.1016/j.cca.2016.04.016.
原著論文9
Hashimoto R, Jiang M, Shiba T,et al
Soluble form of LR11 is highly increased in the vitreous fluids of patients with idiopathic epiretinal membrane.
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol , 255 (5) , 885-891  (2017)
10.1007/s00417-017-3585-1.

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-06

収支報告書

文献番号
201215001Z