研究開発を先導する治験・臨床研究中核拠点整備

文献情報

文献番号
201214005A
報告書区分
総括
研究課題名
研究開発を先導する治験・臨床研究中核拠点整備
課題番号
H22-臨研(機関)-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 雄治(北里大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 馬嶋 正隆(北里大学 医学部)
  • 小泉和三郎(北里大学 医学部)
  • 渡邊 昌彦(北里大学 医学部)
  • 早川 和重(北里大学 医学部)
  • 竹内 正弘(北里大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
81,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究目的は、研究者・医療機関が国際的な視野を持ち、医薬品・医療機器の開発力を強化し、自らが企画し、企業に提供するという一連のプロセスを先導する組織の確立と、それを支える人材の育成と持続的供給とし、以下の達成目標を設定した
1. 効率的な研究開発の枠組みづくり
2. 組織・業務処理能力の効率化
3.早期開発段階から研究開発全体に関わる人材の育成とそれによる研究開発力強化
4. 審査委員会システムの強化
5. 啓発事業
研究方法
北里大学臨床試験事業本部(KitARO)が臨床研究・治験の企画や渉外を、北里大学医学部附属臨床研究センター(KCRC)は研究相談・支援と人材育成を担当した。その他、法人内の早期治験施設、国際共同試験データセンター、臨床研究支援センター、臨床研究相談室等の治験・臨床研究にかかわる組織との連携の下、目的に挙げた事業を行った。
結果と考察
1. 効率的な研究開発の枠組みづくり
 フレーム構築については、早期段階の臨床試験ネットワーク「JANCLIPH」への参加、他施設共同臨床研究の事務局業務、海外連携機関とのネットワーク構築を行った。
 また、協力関係にある機関は北京協和大学、韓国ヨンセイ大学、全南国立大学、KoNECT、オランダユトレヒト大学、アメリカハーバード大学、韓国ソウル国立大学、インジェ大学におよび、海外連携機関とのシンポジウム開催、共同研究の施行、教育体制の検討など国際的な展開を行っている。
2. 組織・業務処理能力の効率化
 KCRCは研究者への臨床研究支援業務として臨床研究相談支援、無作為割付支援、データセンター支援、疫学・臨床研究に関する教育プログラムの提供を行ってきた。臨床研究支援の延べ件数は平成22年度789件、平成23年度828件、平成24年度757件であった。
 無作為割付支援業務に関しては、割付自動化システムを開発し、現在、試験運用中である。
平成24年度よりElectronic Data Capturing (EDC)を用いたデータセンター支援業務が本格稼働し、複数の臨床研究を支援しており、業務件数が増加している。
 疫学・臨床研究に関する教育プログラムとして平成24年度は、学内教職員・学生を対象としたセミナーを合わせて13セミナー開催した。
 IRBの効率的な運用を目的とし、新たな会議電子化システムを試作した。試験運用の結果、紙資料による審議同様、自然な形でIRBのペーパーレス化と会議自体の電子化が可能であった。また、共同IRBの中央管理にも着手した。
3.早期開発段階から研究開発全体に関わる人材の育成とそれによる研究開発力強化
 KCRCでは、研究者の教育を目的に「医学文献検索講座」「初学者のための臨床研究支援講座」「臨床研究支援講座アドバンスドコース」をシリーズとして定期的に開催した。また、「International Program for Clinical Research」コースも提供し、国際水準の英語教育プログラムを目指している。
4. 審査委員会システムの強化
 研究者が倫理委員会から求められる基本的な倫理的配慮事項をあらかじめ計画書へ記載できるように「臨床研究実施計画書の作成手引き」を改定した。また、倫理委員会委員の教育教材としてFERCAP (Forum for Ethical Review Committees in the Asia & Western Pacific Region)が2012年に出版したケーススタディテキストブックを訳出し、委員教育に提供することとした。
5. 啓発事業
 AROとしてのあり方、経験をシンポジウム等の機会に発信し、ARO設置を考慮中の大学・医療機関との交流を持った。今後、KitAROがアジアにおいてAROモデルの1つとして活動し、基盤を強固にしていく必要性が強く示唆された。
結論
今年度、KitARO、KCRCは臨床研究、治験の両輪として事業を展開し、初期の目的にかなった実績を上げることが出来た。KCRCの活発な支援活動により、臨床試験・研究に対する理解は深まっており、臨床研究を行う風土の醸成は確実に進んでいる。法人内各病院について、臨床試験の施行手順の統一が必要であるとのコンセンサスは形成されつつあり、近い将来に最終的な統合が可能であると考えられる。CRC等の昇任の道は他の医療機関に比し、恵まれた状況にあり、それに応じた教育ラダーも準備している。平成25年度にKitAROは臨床薬理研究所Clinical Trial Cordinating Centerと統合し、新たなAROとして自立の方向性を強め、KCRCとともに臨床研究を推進して行く。

公開日・更新日

公開日
2013-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201214005B
報告書区分
総合
研究課題名
研究開発を先導する治験・臨床研究中核拠点整備
課題番号
H22-臨研(機関)-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 雄治(北里大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤 好治(北里大学 医学部)
  • 馬嶋 正隆(北里大学 医学部)
  • 和泉  徹(北里大学 医学部)
  • 小泉和三郎(北里大学 医学部)
  • 渡邊 昌彦(北里大学 医学部)
  • 佐藤 敏彦(北里大学 医学部)
  • 早川 和重(北里大学 医学部)
  • 竹内 正弘(北里大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 研究者・医療機関が医薬品・医療機器の開発力を強化し、自らが企画し、企業に提供するという一連のプロセスを先導する組織の確立と、それを支える人材の育成と持続的供給を行うことを目的とした。
研究方法
国内随一の早期治験施設の他、国内初の本格的Academic Research Organization(ARO)、データセンター、臨床研究センター等、治験・臨床研究にかかわるあらゆる組織と豊富な人材を活かしながら、治験中核施設に求められる各要件を達成するために、それぞれの項目毎に評価・分析し、
1.オール北里治験組織運営によるさらなる治験効率化=患者集積とコスト削減
2.CRC、データマネジャー、研究医師のキャリアパス開発
3.早期開発段階から研究開発全体に関わる人材の育成とそれによる研究開発力強化
4.産官学連携による研究開発フレームの開発
5.IT利用と審査委員人材育成による共同審査委員会の効率よい適正な運営
を達成目標とし、それらの目標を達成するために、下記の事業を実施した。
Ⅰ.研究開発の枠組みづくり
Ⅱ.組織・業務処理能力の効率化
Ⅲ.研究支援(システム整備)
Ⅳ.研究支援(研究相談対応)
Ⅴ.人材育成・教育
結果と考察
Ⅰ.研究開発の枠組みづくり
 国内初の本格的AROである北里大学臨床試験事業本部(KitARO)が中心となり、法人内医療機関のとりまとめ、外部とのネットワークの構築を行った。また、KoNECT、ソウル大学、インジェ大学、北京精華大学と連携し、シンポジウムの開催、臨床研究の施行を行った。シード探索においては、2つの有望なシーズについて臨床試験計画立案の協力を行った。
Ⅱ.組織・業務処理能力の効率化
1.IRB関連業務の効率化に関する検討
 治験(臨床研究)審査委員会の資料を電子化してタブレット型携帯端末に安全に配信し,倫理審査を行うシステムを開発した。IT 化の内容については「①会議の電子化」「②審議資料の電子化」に分けて検討を行った。
2.治験施設データベース化
 「モニタリング2.0検討会」とともに治験実施施設の体制整備に関するデータベースを構築・運用し,治験効率化に向けての検討を行った。
3.治験・臨床研究データベース
 法人内の治験・臨床研究の情報把握と中央管理のために治験・臨床研究データベースを構築した。
Ⅲ.研究支援(システム整備)
1.ランダム化割付事務局の現況
 24時間対応のランダム割付が可能となるよう、ランダム化割付を自動的に行うシステムを構築した。
2.治験及び臨床研究を支援するためのデータベースの構築と運用に関する研究
 臨床研究支援のためのElectronic Data Capturing (EDC)ソフトウエアPromasysを導入し、平成24年度より治験及び臨床研究を支援するためのデータマネジメントサービスの提供を本格稼働させ、多施設共同研究を実施するための研究支援を行っている。
Ⅳ.研究支援(研究相談対応)
1.臨床研究支援の実績 
 北里大学医学部附属臨床研究センターにおいて、2008 年4 月から2013 年3 月までに行った研究支援サービス(臨床研究相談支援サービス、無作為割付支援サービス、データセンター支援サービス、疫学・臨床研究に関する教育プログラムの提供)延べ2700件を行った。
Ⅴ.人材育成・教育
 「初学者のための臨床研究支援講座」および、「医学文献検索講座」、更に深い知識とスキルを身につけられる「臨床研究支援講座アドバンスドコース」を開始した。平成22年度から平成24年度にかけ、33のセミナーを開催した。また、過去に実施した「初学者のための臨床研究支援講座」「医学文献検索講座」を題材として、北里大学高等教育開発センターが提供しているMoodle システムを用い試験運用版(β版)e-learning プログラムを構築した。
結論
 以上の研究実施により、学内において臨床研究の重要性とそれを適切に行うための方法論の重要性が認識されるようになり、臨床研究風土の醸成が進んできた。これにともない、人材開発・教育の方向性について明らかになってきており、これにあわせた教育機会の提供を行えるよう努力を継続している。ITを活用した、治験や臨床研究の効率化・推進についても当拠点が中心となり新たなアイデアと課題を国内外へ発信しつづけ、その意味で中核拠点としての存在意義を示すことができた。本拠点の最大の特徴であるアジアとのネットワーク活動を前提とした早期からの研究開発の枠組みづくりについても順調に経過し、東アジアにおける早期段階の国際共同研究体制の基盤は確立しており、実際の研究も開始されている。

公開日・更新日

公開日
2013-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201214005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
北里大学臨床研究機構が中心となり法人内医療機関のとりまとめ、外部とのフレーム構築として、早期段階の臨床試験ネットワークであるJANCLIPHへの参加、他施設共同臨床研究の事務局業務、海外連携機関とのネットワーク構築を行った。また、国外協力機関である北京協和大学、KoNECT、オランダユトレヒト大学、アメリカハーバード大学、韓国ソウル国立大学との連携をはかり、シンポジウムの開催、共同研究の施行、教育体制の検討など国際共同研究の基盤と作ると同時に実際の研究を開始した。
臨床的観点からの成果
北里大学医学部附属臨床研究センターでは、医師主導臨床試験や観察研究の事務局をはじめ、セミナー開催などの教育活動および学内を中心とした臨床研究支援業務を継続して行っている。臨床研究支援業務では、ランダム割付サポート業務として13件の臨床研究を支援し、EDC(Promasys)を用いたデータマネジメント業務では、北里大学主管の前向き多施設共同観察研究3件(内1件終了)、観察研究2件、医師主導臨床試験(RCT)2件を支援している。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
本学の国際協力に向けた活動は『産経新聞』2011年2月27日「飛躍 明日への処方箋」で紹介され、わが国における国際共同研究、なかでも韓国との協力の必要性を示した。また、ソウル大学との臨床研究・教育の協力体制を約した協定に基づく第1回国際シンポジウムを開催したが、これは『日刊薬業』2013年1月28日「北里大ソウル大 初のシンポ、日韓共同開発を推進」に報道され、国際協力体制の必要性を示した。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
22件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
37件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201214005Z