文献情報
文献番号
                      201210004A
                  報告書区分
                      総括
                  研究課題名
                      新規標的に対する小分子化合物を基盤とした抗HIV化学療法剤の開発
                  研究課題名(英字)
                      -
                  課題番号
                      H22-政策創薬-一般-005
                  研究年度
                      平成24(2012)年度
                  研究代表者(所属機関)
                      松岡 雅雄(京都大学 ウイルス研究所)
                  研究分担者(所属機関)
                      - 藤井 信孝(京都大学大学院 薬学研究科)
 - 大石 真也(京都大学大学院 薬学研究科)
 - 村上 努(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
 - 志村 和也(京都大学 ウイルス研究所)
 - 栗原 秀樹(富士フイルム株式会社 R&D統括本部医薬品・ヘルスケア研究所)
 - 松野 孝洋(富士フイルム株式会社 R&D統括本部医薬品・ヘルスケア研究所)
 
研究区分
                      厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬マッチング研究)
                  研究開始年度
                      平成22(2010)年度
                  研究終了予定年度
                      平成24(2012)年度
                  研究費
                      28,000,000円
                  研究者交替、所属機関変更
                      -
                  研究報告書(概要版)
研究目的
            当研究グループでは、新規抗HIV 活性化合物の探索を目的としたランダムスクリーニングを行い、ピラゾール骨格を有する化合物が高い抗HIV 活性を示すことを見出した。新規高活性誘導体の創製を目指して構造活性相関研究を展開した。また、PD 404182および高活性誘導体の作用機序を種々の評価法を用いて解析した。さらに、本化合物のマウスに対する毒性を評価した。
また、CXCR4阻害剤に対する研究では、耐性HIV-1を誘導し、その耐性変異のパターンや耐性機構を解析することによって、次世代の治療を考慮した耐性変異パターンの予測法の確立を目的とした。
      また、CXCR4阻害剤に対する研究では、耐性HIV-1を誘導し、その耐性変異のパターンや耐性機構を解析することによって、次世代の治療を考慮した耐性変異パターンの予測法の確立を目的とした。
研究方法
            ○高活性誘導体の創製
ピラゾール骨格を有する新規抗HIV化合物の様々な誘導体を作製し、構造活性相関研究を行った。
○Time of drug addition assay
レポーター細胞にHIV-1 IIIB株を感染させ、感染後経時的にPD 404182および高活性誘導体を添加した。作用点既知の各種抗HIV薬を対照として用いた。
○作用点の解析
化合物の前処理群として、高タイターのHIV-1 IIIB粒子と100 microMのPD 404182を混合し、37℃で静置した。90分後、本混合物を1000倍希釈し、レポーター細胞に感染させた。一方、後処理群では、PD 404182の代わりに最終濃度を揃えたDMSOと同タイターのウイルス粒子を混合した。本混合物を細胞に添加する際に100 nMのPD 404182を加えた。両群とも感染48時間後にウイルス粒子の感染性を評価した。
○マウス毒性試験
日本クレアより入手したJcl:ICRマウス(雌・6週齢)に対して、PD 404182の1日1回腹腔内投与を3日連続で行った。その後1週間にわたり、体重の増減を指標として評価した。
○CXCR4阻害剤耐性HIV-1株の中和抗体感受性試験
CXCR4阻害剤耐性HIV-1株由来のEnv組換えNL4-3の中和抗体感受性を、447-52D および2F5 について評価した。
      ピラゾール骨格を有する新規抗HIV化合物の様々な誘導体を作製し、構造活性相関研究を行った。
○Time of drug addition assay
レポーター細胞にHIV-1 IIIB株を感染させ、感染後経時的にPD 404182および高活性誘導体を添加した。作用点既知の各種抗HIV薬を対照として用いた。
○作用点の解析
化合物の前処理群として、高タイターのHIV-1 IIIB粒子と100 microMのPD 404182を混合し、37℃で静置した。90分後、本混合物を1000倍希釈し、レポーター細胞に感染させた。一方、後処理群では、PD 404182の代わりに最終濃度を揃えたDMSOと同タイターのウイルス粒子を混合した。本混合物を細胞に添加する際に100 nMのPD 404182を加えた。両群とも感染48時間後にウイルス粒子の感染性を評価した。
○マウス毒性試験
日本クレアより入手したJcl:ICRマウス(雌・6週齢)に対して、PD 404182の1日1回腹腔内投与を3日連続で行った。その後1週間にわたり、体重の増減を指標として評価した。
○CXCR4阻害剤耐性HIV-1株の中和抗体感受性試験
CXCR4阻害剤耐性HIV-1株由来のEnv組換えNL4-3の中和抗体感受性を、447-52D および2F5 について評価した。
結果と考察
            ○高活性誘導体の創製
5-アミノピラゾール構造を有する誘導体はリード化合物に匹敵する活性を示した。本誘導体を基盤として構造活性相関研究を展開した。ピラゾールN-1位のフェニル基上の置換基効果を検討した結果、ビフェニル体に高い活性が認められた。この誘導体を基に、m-フェニル基の置換基効果を精査した結果、メタ位、もしくはパラ位にメチル基を導入した化合物やジクロロ体で活性の向上が認められ、最終的に約6倍活性が向上した高活性誘導体を得た。
○Time of drug addition assayおよび作用点の解析
PD 404182および試験に用いた全ての高活性誘導体は、いずれも吸着阻害剤であるDS5000に類似のプロファイルを示した。また、PD 404182の高濃度溶液で予め処理したHIV-1(前処理群)は、溶媒コントロールの対照群と比較して、1%以下の感染性を示した。一方、細胞感染時にPD 404182を加えたHIV-1(後処理群)は、約80%程度の感染性を有していた。
これらの解析から、PD 404182の作用点は、ウイルスの細胞への吸着過程を含む感染最初期であることが確認された。さらには、本化合物をウイルス粒子に作用させると感染を阻害するという結果からも、本化合物が選択的にウイルス粒子に存在する分子に作用して抗ウイルス活性を示していることが推測された。
○マウス毒性試験
Jcl:ICRマウスにPD 404182を30 mg/kgの用量で1日1回、3日間連続投与した結果、死亡例は認められなかった。また、その後の体重の増減も溶媒コントロールとの間に大きな差は認められなかった。
○CXCR4阻害剤耐性HIV-1株の中和抗体感受性試験
いずれのCXCR4阻害剤耐性HIV-1株由来のEnv組換えNL4-3もgp120 V3ループをエピトープとする中和抗体である447-52Dおよびgp41の膜貫通領域近傍をエピトープとする中和抗体である2F5に対する感受性が上昇していた。この結果より、実際にHIV感染者体内で今回使用したCXCR4阻害剤を投与した場合は、出現しても淘汰される可能性が示唆された。
      5-アミノピラゾール構造を有する誘導体はリード化合物に匹敵する活性を示した。本誘導体を基盤として構造活性相関研究を展開した。ピラゾールN-1位のフェニル基上の置換基効果を検討した結果、ビフェニル体に高い活性が認められた。この誘導体を基に、m-フェニル基の置換基効果を精査した結果、メタ位、もしくはパラ位にメチル基を導入した化合物やジクロロ体で活性の向上が認められ、最終的に約6倍活性が向上した高活性誘導体を得た。
○Time of drug addition assayおよび作用点の解析
PD 404182および試験に用いた全ての高活性誘導体は、いずれも吸着阻害剤であるDS5000に類似のプロファイルを示した。また、PD 404182の高濃度溶液で予め処理したHIV-1(前処理群)は、溶媒コントロールの対照群と比較して、1%以下の感染性を示した。一方、細胞感染時にPD 404182を加えたHIV-1(後処理群)は、約80%程度の感染性を有していた。
これらの解析から、PD 404182の作用点は、ウイルスの細胞への吸着過程を含む感染最初期であることが確認された。さらには、本化合物をウイルス粒子に作用させると感染を阻害するという結果からも、本化合物が選択的にウイルス粒子に存在する分子に作用して抗ウイルス活性を示していることが推測された。
○マウス毒性試験
Jcl:ICRマウスにPD 404182を30 mg/kgの用量で1日1回、3日間連続投与した結果、死亡例は認められなかった。また、その後の体重の増減も溶媒コントロールとの間に大きな差は認められなかった。
○CXCR4阻害剤耐性HIV-1株の中和抗体感受性試験
いずれのCXCR4阻害剤耐性HIV-1株由来のEnv組換えNL4-3もgp120 V3ループをエピトープとする中和抗体である447-52Dおよびgp41の膜貫通領域近傍をエピトープとする中和抗体である2F5に対する感受性が上昇していた。この結果より、実際にHIV感染者体内で今回使用したCXCR4阻害剤を投与した場合は、出現しても淘汰される可能性が示唆された。
結論
            ランダムスクリーニングにより見出した抗HIV 活性を有するピラゾール誘導体の構造最適化を展開し、リード化合物に比較して約6倍強力な抗HIV活性示す誘導体を見出した。PD 404182はウイルス粒子に存在する分子に影響を与えることで、感染性を消失させていると推測された。さらには、CXCR4阻害剤耐性HIV-1株のEnv領域中のV3, V4領域に共通して認められた変異はEnvを標的とする中和抗体に対する感受性を高める変異でもあることが明らかになった。
      公開日・更新日
公開日
          2013-08-27
        更新日
          -