次世代インテリジェント型ナノカプセルによる診断・治療システム

文献情報

文献番号
201209010A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代インテリジェント型ナノカプセルによる診断・治療システム
課題番号
H23-政策探索-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
橋爪 誠(九州大学 先端医療イノベーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 正治(九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点)
  • 片山 佳樹(九州大学大学院工学研究院)
  • 富川 盛雅(九州大学病院先端医工学診療部)
  • 井原 敏博(熊本大学大学院自然科学研究科)
  • 大内田 研宙(先端医療イノベーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬探索研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
28,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はウイルスカプシドを模したタンパク質ナノカプセルを構築し、薬物送達システム(DDS)や分子イメージング材料としての応用を目指している。本年度は実施計画書にしたがって、①ナノカプセルの標的化(肝実質細胞、肝癌細胞、膵細胞)、②ナノカプセルへの抗癌剤の内包条件の検討、さらに③ナノカプセル型MRI造影剤の開発、の三つのテーマに重点をおいて研究を実施した。
研究方法
ナノカプセルの内孔は疎水性であるため、これまでの研究の結果、疎水性の薬剤を取り込むことが可能である。今回、我々はナノカプセル内孔に点変異をとしてシステイン残基を導入した変異体を作成し、そのチオール基と特異的に反応するマレイミド基を介して部位特異的に薬剤を導入した。さらにマレイミド基と薬剤の間にpH応答性の解離基であるヒドラゾンリンカーを導入し(図2)、酸性オルガネラでの薬剤放出について検討した。また、N末端ヘリックスをリピートした変異型ナノカプセルを設計し、それらの内孔にMRI造影剤を内包したナノカプセル型造影剤を開発した。
結果と考察
各種阻害実験の結果、ナノカプセルの細胞への形質転換がクラスリン依存型エンドサイトーシスによるものであり、その大部分は酸性オルガネラに存在していることが明らかとなった。そこで抗癌剤ドキソルビシンをpH応答性リンカーであるヒドラゾン基を介してマレイミド化したDOX-EMCHを合成し、ナノカプセル内孔に固定化した。この抗癌剤内包ナノカプセルを膵癌細胞株Suit-2に投与したところ、未処理のSuit-2が紡錘形であるのに対し、フリーのドキソルビシン、あるいはドキソルビシン内包ナノカプセルを投与したSuit-2はアポトーシスを示唆する球状・凝集構造に変化した。
 一方、造影剤の方も内孔のシステイン残基をつかってカプセル内部に固定化することが可能であった。MRI造影剤の感度の指標となる緩和度を測定したところ、カプセルに固定化することにより緩和度が最大で36倍と大きく向上することが示された。MRI造影剤を高分子量の担体とコンジュゲートさせることにより、緩和度が向上することはよく知られているが、これほど大幅に上昇することは単なる高分子量効果とは考えにくい。特に、N末端ヘリックスリピート変異体において、より安定度の高いNHelix 3を用いたナノカプセル型造影剤の緩和度が高いことから、カプセル構造の剛直性や内部の疎水性の向上が大きく寄与しているものと推察される。
結論
本年度はナノカプセルへの薬物内包を中心に実験を行った結果、カプセルの内孔側にシステイン残基を変異導入することで、部位特異的に薬剤を固定化することに成功した。また固定化に用いるマレイミド基と薬剤との間にpH応答性のリンカーを導入することにより、細胞内の酸性オルガネラのみで薬剤放出することが可能である。また同様な手法でMRI造影剤を導入したカプセル型造影剤は、未修飾の造影剤と比較して遙かに高感度であり、カプセルの剛直性と内孔の疎水場が感度向上に寄与していることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201209010Z