東アジア地域における新たな介護制度の創設過程とわが国の影響の評価等に関する研究

文献情報

文献番号
201201037A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア地域における新たな介護制度の創設過程とわが国の影響の評価等に関する研究
課題番号
H24-政策-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 周三(国立社会保障・人口問題研究所 所長)
  • 増田 雅暢(岡山県立大学 保健福祉学部)
  • 金 貞任(東京福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化は、わが国や欧米諸国だけでなく、東アジアでも進んでいる。特に韓国や台湾では急速な高齢化が見通されており、高齢者介護制度の構築が急務となっている。実際に、韓国では老人長期療養保険(介護保険)が実施され、台湾でも介護保険の実施が検討されている。これらの国や地域では、社会保障制度の創設過程でわが国を含む諸外国の経験を参考にすることが多い。そこで本研究は、東アジアの中で高齢化が急速に進む韓国、台湾の新たな介護制度の創設過程で、わが国の経験がどのように検討され、制度構築の参考にされたか否かを明らかにすることを目的に実施した。
研究方法
研究方法として、韓国と台湾の人口や社会経済の変化について、統計データを用いて把握することで、韓国、台湾とわが国の共通点や相違点を明らかにした。その一方で、韓国と台湾の介護制度創設過程、検討状況については、それぞれの国や地域の政策当局の資料(政策研究報告書など)、立法当局の資料(会議録)を収集し分析を行った。論点として、持続可能な制度、介護サービス(給付)、家族会議者支援の点に着目して分析を行った。これを補足するために、政策当局者や研究者へのヒアリングも行った。
結果と考察
韓国や台湾は大きな経済成長と遂げており、一人あたりGDPでみたわが国との差は以前よりも小さくなっている。しかし、高齢化が進み、介護制度の創設も急務となっている。
韓国では2008年から実施の老人長期療養保険の検討は、2006年から2007年の間に国会で行われた。主な論点は、対象者(障害者を含むか否か)、保険者、自己負担割合などであった。制度は韓国の社会や社会保障制度の現状(特に、財政的に持続可能な否か)を反映したものになったが、対象者の範囲や地方自治体の役割、自己負担割合では、わが国の制度が参考にされた面があった。医療と介護の連携の検討は行われずに制度が実施されたため、今後わが国の動きを参考にする可能性もある。
台湾では、2008年から税方式の高齢者福祉制度が実施されている。この制度の検討時には、わが国(特に、介護予防など)の他、イギリスやドイツを参考にしている。増大する介護ニーズに対応できるようにするため、介護保険が検討中である。そこでは、わが国やドイツを参考にしている。しかし、台湾では外籍監護工と呼ばれる外国人ケアワーカーが多く、彼らのあり方については、台湾独自の政策課題となっており、外国人看護師、介護士の受け入れを試験的に行っているわが国にとって参考になる面がある。
家族介護者支援の面では、韓国では家族療養保護士(家族ヘルパー)、現金給付が行われているが、入浴介護がわが国ほど実施されていないなどの課題もある。台湾でも家族介護手当が実施されているが、介護保険検討時には介護サービスのバランスが検討課題であろう。こうした課題への対応は、わが国の家族介護者支援に参考となる知見を示すものと思われる。
結論
このように、韓国と台湾の介護制度は、わが国などの諸外国の制度を参考にする一方で、高齢化の進み具合や社会保障制度の整備状況が異なる。また、家族関係や産業構造の違いも意外に大きいと考えられる。こうした違いも相まって、韓国や台湾でわが国と異なる内容を持つ介護制度が創設されるものと考えられる。こうした背景を理解することが、東アジアの介護制度の創設過程を相互に理解する上で重要であろう。

公開日・更新日

公開日
2013-12-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201037Z