男性の家事参加の促進プロセス:mixed アプローチによる分析

文献情報

文献番号
201201034A
報告書区分
総括
研究課題名
男性の家事参加の促進プロセス:mixed アプローチによる分析
課題番号
H24-政策-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 桂子(新潟大学 教育学部)
研究分担者(所属機関)
  • 黒川 衣代(鳴門教育大学大学院 学校教育研究科)
  • 倉元 綾子(鹿児島県立短期大学 生活科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
共働き世帯が増え、既婚女性の労働市場への継続的な参入が増えている今日、男性の家庭領域への参加を促進させることが急務の課題である。従来の男性の家事参加に関する研究は中範囲理論(相対的資源、時間的余裕、性別役割分業観)によって説明されることが多かった。しかし、今日必要な研究は、何が男性の家事参加を規定するのか、という規定要因を探ることではなく、どうすれば、男性が、より家事に参加するようになるのか、その行動プロセスを解明することである。本研究では、Theory of reasoned action理論(TRA)やその発展系であるTheory of planned behavior理論(TPB)を用いて、何が男性の家事参加をしようという行動意図(intention)に影響を与えるか、独自アンケート調査票により明らかにする。同時に、半構造化ヒアリング調査を実施して言説から明らかにする(mixed アプローチ)。
研究方法
【研究1】がアンケート調査、【研究2】がヒアリング調査である。
【研究1】 連合新潟、連合兵庫、連合徳島と連合鹿児島に所属する既婚男性を対象に2012年12月末、調査票を配布した(配布7100、回収3918、回収率55.2%)。検証仮説は以下のようである。
仮説1(本人):家事の知識・技術が高いと自己評価するほど、家事を分担しようと思うだろう。
仮説2(家族):妻が重要な仕事をしていると思うほど、家事を分担しようと思うだろう。
仮説3(家族):妻のgatekeeper度が高いほど、家事を分担しようと思わないだろう。
仮説4(企業):勤務先企業が男女均等を志向しているほど、家事を分担しようと思うだろう。
仮説5(社会=教育):中高時代の家庭科を通して家族や社会に対する理解が深まったと評価するほど、家事を分担しようと思うだろう。
【研究2】 半構造化ヒアリングによる分析は、申請者の個人的知り合い(2名)、友人による紹介(6名)、連合新潟の方(2名)と東京で実施したモニター(6名)の、計18名に実施した。質問は以下のようである。
・家事分担は、どのようになさっていますか
・家事を分担しようと思ったきっかけは、具体的にどのようなことでしたか
 夫婦・親子など家族との関係で、 仕事との関係で
 ご両親、ご近所や知人との関係で、 学校教育(家庭科、社会科など)との関係で
・あなたが家事を分担することで、何か、変わったことはありますか
・あなたにとって、「家事」とは何ですか
結果と考察
【研究1】 回帰分析からは、家事の知識・技術が高いとする自己評価(仮説1)、妻の仕事の重要さ(仮説2)、はβ=.303, p<.001)や家庭科教育の効果(仮説5)は、家事参加の行動意図に対してプラスの影響を、逆に妻のgatekeeper度(仮説3)は、マイナスの影響を与えた。しかしながら、勤務先企業の均等志向(仮説4)は、有意な影響は与えない結果を示した。TRA理論に基づくモデル構築によるパス解析でも、同様の結果を示した(GRI=.959, AGFI=.935, RMSEA=.071)。
【研究2 】ヒアリングから抽出できた仮説は、次の8つである。
仮説1:学生結婚仮説(疑似同棲仮説):高校・大学時代の恋人と結婚しているほど、夫の家事参加が高い。
仮説2:現代家長仮説:「家の大まかな方針は、自分が決めている」と思っているほど、夫の家事参加が高い。
仮説:3家計管理仮説(小遣い仮説):「小遣い制」ではなく、自分が家計を管理しているほど、夫の家事参加が高い(*共通の財布があっても、月末にレシートで家計分担を整理するなど、家計管理に携わっている)。
仮説4:妻のgatekeeper度仮説:妻のgatekeeperが低いほど、夫の家事参加が高い
仮説5:一人暮らし仮説:結婚前に一人暮らしの経験があるほど、夫の家事参加が高い。
仮説6:職場の影響:職場で頑張っている同僚女性がいるほど、夫の家事参加が高い。
仮説7:家庭科教育仮説:中高で、家庭科の時間に、調理実習で何を作ったか、「記憶が鮮明」であるほど、夫の家事参加が高い(※調理実習は材料買い出しから生徒に任せるなど、一連の行為を、ゲーム感覚で行わせた方が、男子学生にとっては、面白いものになる)。
仮説8:よりよい生活仮説:効率的な暮らしをしたい、夫婦のためにより時間を抽出したいなど、よりよい生活に対して明確なビジョンをもっているほど、夫の家事参加が高い。
結論
 1年目で得た質的・量的結果をもとにした調査票を作成し、平成25年度は全国規模の調査を行い、検証する。

公開日・更新日

公開日
2013-12-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201034Z